気候変動に備える 果物農家の挑戦【インスタ画像でわかりやすく解説】
ミカンやブドウなどの果樹の生育には気温が大きく関係しているため、農家や産地は気候変動の影響を強く受けるおそれがあります。
愛媛県のミカンはすでに温暖化の影響とされる現象が起きていて、加工品としてしか出荷できないという事態も…。
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ミカンやブドウなどの果樹の生育に温暖化が影響
チコちゃんが心配しているのが地球温暖化による食べ物の影響。ミカンやブドウなどの果樹の生育には気温が大きく関係しているため、農家や産地も強く影響を受けるおそれが…。
愛媛県のミカンはすでに温暖化の影響とされる現象が起きていて、加工品としてしか出荷できないという事態も…。
そうした気候変動に備えて、果物農家が始めた挑戦をチコちゃんと一緒にみていきます。
ねえねえ、安藤記者。おんだんかで、食べものにも いろいろな影響があるかもって聞いたんだけど、チコ、しんぱい…
そうよね、チコちゃん。食べ物のことは心配よね。
私も食べることが大好きだから、よくわかるよ。
実はかなり影響が出るかもしれないの。
例えば、ミカンやリンゴ、ブドウなどの果樹の生育には気温が大きく関係しているんだって。栽培する農家や産地は気候変動の影響を強く受けるとされているんだよ
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農研機構 果樹スマート生産グループ 杉浦俊彦さん
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「ウンシュウミカン栽培には、年間平均気温が15~17℃の地域が最適。 それより気温が高いと、傷みやすくなったり日焼けしたりして品質が下がるおそれも」
しかも、果樹は収穫が安定するまで時間がかかることなどから温暖化の進行にすぐに対応するのは難しいんだって。
いまね、ミカンを作っている農家ではアボカド栽培を始めているところもあるんだよ。ウンシュウミカンなどを栽培してきた愛媛県松山市の農家、中村一良さんのところでは、25年ほど前から温暖化による影響の1つとされるミカンの皮が実から離れる現象が起きるようになったんだって。
だから、加工品としてしか出荷できないことが増えてきたんだよ。
中村さん、今後の温暖化の影響のことを考えて、熱帯や亜熱帯地域が原産のアボカドの栽培にも挑戦することにしたんだって

アボカドは寒さに弱いから実がうまくつかないこともあったんだけど、ここ数年は農園の3割にあたる土地を使って出荷を続けているんだって。
松山市農業指導センターによると、ミカンなどとともにアボカド栽培に取り組む農家は180軒に上るということだよ
え、愛媛の農家さんたち、すごいすごい。がんばってほしいわ。
でも、チコ
冬はコタツにミカン派だから ミカン食べられなくなるかもしれないの悲しいな…
そうだね。
いま中村さんはウンシュウミカンのほかに、暑さに強いかんきつ類の栽培にも取り組んでいるんだって。
愛媛県では、宇和島市を中心に赤い果肉が特徴のブラッドオレンジの生産が盛んになっているみたいだよ。
ブラッドオレンジは寒さに弱いから日本での栽培に向かないとされてきたんだけど、JAえひめ南によると宇和島市の年間の平均気温はおよそ40年で1度以上上昇して、生産できるようになったんだって
農家さんたちがアボカドや新しいくだものを作っているっていう話を聞いてチコ、ちょっとだけホッとしたよ。
ふれーふれー、にっぽんの農家のみなさーーーん。
安藤記者、教えてくれてありがとう。
こんどは一緒にコタツでミカンたべよう
気候変動で広がる悪影響
チコちゃんがふと思ったのはー、大雨など災害がなぜ多いのか、という疑問。
気候変動による影響が強まっていることがわかってきていて、自然災害だけでなく、私たちの暮らしを支えている水や農業・漁業にも現れているといういう研究が…
気候変動によってどんな影響が出ているのかチコちゃんと一緒に考えます。
ねえねえ、岡本記者。
最近、おおあめとか災害が多いよね。なんでなの?
確かに多いよね。
実は、気候変動による影響が強まっていることが分かってきたんだ。
この前紹介した国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の中に気候変動による自然災害や人への影響を研究しているグループがあるんだけど、最新の報告書では気候変動が自然と人間に対して「損失と損害を引き起こしている」と結論づけたんだ。
具体的には水の供給、農業や漁業、健康、自然災害といった幅広い分野で影響が広がり、悪影響が増大していることを指摘しているんだよ

これは気候変動による影響を分野ごとにまとめた表なんだけど「青の丸」は気候変動の影響が原因である可能性が高い分野、そして丸の中に「-」の線があるのは「悪い影響が増えていること」を意味しているんだよ。
日本があるアジアでは、「暑熱」「メンタルヘルス」や「沿岸部における洪水や暴風雨による被害」などが悪化しているんだ
これって洪水がたくさんおきるってこと?
た、大変!
チコちゃん、そうなんだ。
日本での影響を調べた環境省の2020年の報告書では、海面の上昇や極端な大雨によって洪水被害が増えるおそれがあるんだよ。
世界の平均気温が2度程度上昇した場合、国内で洪水が起きる確率は約2倍になり、被害額は年間1兆4000億円を超えると予測されているんだ。
表にもあったように健康への影響も指摘されているんだ。
日本では、気温の上昇に伴って2090年代には東京や大阪で日中に屋外で労働できる時間が3~4割短くなると予測されているんだ。
そのほかにも水温の上昇によって水中の細菌類が増加し、感染症のリスクが高まることも懸念されているんだよ。
水産庁の検討会の報告書(2021年)では、サンマやスルメイカ、サケなどの不漁が深刻化しているんだけど、地球温暖化による潮流や水温の変化などが要因の1つにあげられているんだ。
さらに、環境省の報告書(2020年)では、北日本で海水温の上昇によって一部の昆布が消えてしまうおそれがあると指摘されているし、お米はすでに気温上昇による品質の低下などが確認されているんだよ。
2040年代には影響が広がり、経済損失も増加するおそれがあると指摘しているんだ
食べられるものが どんどんなくなっちゃう···
私たちの暮らしは大丈夫なの?
うーん...このままで大丈夫だとは僕は言えないと思うな。
IPCCは「1.5度の温暖化によって、世界は今後20年間、さまざまな危機に直面する。一時的にでも1.5度を超えると、さらに深刻な影響が広がって、一部は不可逆的なものとなる」と警鐘を鳴らしているんだ。
まずは温室効果ガスの排出を減らすことが大事なんだけど、仕事や生活を気候変動に対応して被害を減らす取り組みも必要なんだ。
今度、食料生産での適応に励む日本の農家を僕の同僚が紹介するね。
世界の研究者が警告 IPCCの報告書って?
環境省担当の岡本記者と再会したチコちゃん。今回、岡本記者が教えてくれたのは、気候変動について世界の科学者たちが出したIPCCの最新の報告書について。
報告書がどんな意味を持つのか、IPCCがどんな組織なのか、チコちゃんにもわかるようにお伝えします。
岡本記者!この前はCOPについて教えてくれてありがとう。
チコっと難しかったけど勉強になったわ
チコちゃん、久しぶり。
今回は、また少し難しいんだけど IPCCの報告書について教えるよ
あいぴーしーしー?
これまたアルファベットでくるのね
ぴーしーあーるなら聞いたことあるけど…
IPCCは、1988年につくられた国連の組織なんだけど195の国と地域(2022年2月現在)から世界の研究者たちが参加して気候変動に関する最新の科学的でわかったことを報告書にまとめているんだ。
2021年にイギリスのグラスゴーで開かれたCOP26についてチコちゃんと一緒に考えてきたけど(11/1~17の投稿みてね!)、この報告書は各国の「共通の認識」になる役割を担っていて、政策への影響はとても大きいんだよ。
「現代の気候の研究の基礎となった」としてノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎さんの研究も以前の報告書に生かされていたんだよ
そのIPCCがなんで
報告書をわざわざ出したの?
実は、かなり気候変動についてまずい状況になっていることがわかったんだ
なんとなくCOPで話し合ったり、若い人たちがみんなSDGsって気にしたり、うまくいってる気がするけど…
今回の報告書ではかなり厳しい見通しが出たんだよ。
「人類が引き起こした気候変動は、自然と人間に対して広範囲にわたる悪影響と、それに関連した損失と損害を引き起こしている」と結論づけているんだ。
これは8年前に出された報告書よりもかなり踏み込んだ表現で、気候変動への対応が待ったなしであることを意味しているんだ
なるほど、このままじゃだめだなって思ったから報告書を出したのね。責任重大ね。
チコにもどれくらい影響があるか ますます知りたくなったわ!
岡本記者、また教えてね
もちろん!
さらに4月には、気候変動を抑えるための方法について研究しているグループが報告書を出すから、またチコちゃんに詳しく伝えるね
インスタグラムでも画像を公開中
インスタグラム「地球のミライ」では、環境問題や気候変動のほかSDGsの達成に向け、いま課題になっていることを写真やグラフィックで紹介しています。こちらも合わせてご覧ください。
インスタグラム「地球のミライ」※NHKサイトを離れます
