環境先進都市オランダの環境に優しい対策
11月中旬まで開かれていた気候変動対策の国際会議「COP26」。
環境への負担が少ない暮らしのあり方に関心が高まりました。
今回、注目するのは「環境先進都市」とされるオランダ・アムステルダム。
循環型経済を掲げ、さまざまな取り組みが行われています。
チコちゃんと一緒に、4つのポイントから考えます。
環境に優しい仕組みって?
ねぇねぇ、田村記者、かんきょうのために
せかいの人たちはどんなくふうをしているの?
さすが、チコちゃん!
最前線の取り組みにも興味があるんだね。
それなら現地で取材した、オランダの首都・アムステルダムのことを紹介するよ。
アムステルダムは、「環境先進都市」とされて、2050年には資源の再利用によってごみをださないことを目指しているんだ。
「循環型経済」というんだよ。
廃棄される資材を循環させる動きが始まっていて、使われている建材や素材の多くが「リユース」だという施設を取材したんだけど、チコちゃんにクイズです!
これ、「カベの防音材」なんだけど、
何から作られたものか、わかるかな?
え?なにかしら?
チコ、ぜんぜんわからないわ…
実はこれ、古着のジーンズを熱で溶かして固めたものなんだ。
必要な資材を循環させるために、廃棄する側と利用する側をつなぐマッチングの仕組みもあるんだよ。
すごいわね!
こういうことが、あたりまえになってきているの?
建設資材などの再利用で生み出される新しい市場の大きさは、年間で300億円以上になると考えられていて、参入する企業も多いんだよ。
アムステルダム市は、8000もの民間事業者と一緒に、循環型社会を実現するためのアイデアを出したり、成功例を共有したりしているよ。
それに、オランダ以外の国でも実践が進んでいるんだ。
次は食べものの取り組みを紹介するね!
廃棄食材を救出するレストラン
「環境先進都市」とされるオランダ・アムステルダムには、農家やスーパーから捨てられる
予定だった食材を集めて料理を提供する「廃棄食材レストラン」があります。腕を振るうのは
一流ホテル出身のシェフで人気のお店に!
そして、ごみを減らすためには、リデュース、リユース、リサイクルの3Rのほかにも大切なRが…。
ねぇねぇ、田村記者。
今度は「たべもの」のとりくみを、おしえてくれるのよね?
チコちゃん、パイに包まれたこの料理おいしそうでしょう!
実は、農家やスーパーから捨てられる予定だった食材を使って作られたんだよ。
今からオランダ・アムステルダムの「廃棄食材レストラン」を紹介するよ!
このレストランに届く食材は、一部が腐っていたり、サイズがそろっていないものも多いんだけど、シェフが、食材を見極めてその日のメニューを決めているんだ。
取材のときに届いたカボチャやカリフラワーも、表面が少し腐っていたんだけど、シェフは、一部を切り落とせば使えると判断していたよ。
実は、シェフのデヨングさんは、前は一流ホテルで働いていたんだけど大量の食材が捨てられることに疑問を感じていたんだって。
そんなとき、このレストランを知って働き始めたんだ。
「廃棄食材と言うとお客さんにびっくりされることや、自由で、創造力や対応力が求められるのも楽しい」と話してくれたよ。
レストランは、前菜からメイン料理、デザートまであって、5000円ほどで一流シェフの料理が味わえると人気なんだ。
チコもたべてみたいわ!
こういうレストランもふえているの?
レストランの運営会社は、農家から捨てられる食材を集めて保管する貯蔵センターの運営も始めたんだ。
インターネットで食材を公開して、ほかの飲食店も使えるようにしたんだよ。
利用先は増え続けていて、今は200店にもなるんだ。
チコちゃんは、ゴミを減らすための3Rって知っているかな?
"Reduce・Reuse・Recycle(リデュース・リユース・リサイクル)"なんだけど、循環型経済を進めるには、ほかにも大切なRがあると聞いたよ。
それは、「発想の転換」や「新しいものを生み出す」意味のRethink(再考)やRegenerative(再生)。
捨てられるものから価値を生み出す新しいアイデアが重要なんだ。
あたまをやわらかくするのが、だいじなのね!
気候変動を見据えた街作り
COP26で重要なテーマとなったのが気候変動への「適応」です。
気候変動により、世界でも大雨による洪水被害が増えています。
水害対策の先進地オランダでは、水があふれることも前提にした対策が進んでいます。
どんな取り組みなのでしょうか?
チコちゃん、オランダで見てきたことで、もうひとつ紹介したいことがあるんだ。
それは、オランダが先進地だと言われる水害対策について。
気候変動によって、世界でも大雨による被害が出ているけど、例えば、川があふれる洪水に備えて、どんな対策が考えられるかな?
とってもがんじょうな、ていぼうをつくるとかかしら…?
それも必要だよね。でもオランダでは今、堤防などで洪水を抑え込むという考え方ではなく「水があふれること」も前提とした対策が進んでいるんだよ。
え…?
どういうことなの?
洪水が起こっても、あふれた水を受け止める場所をたくさん確保しておいて、被害を減らそうという考え方なんだ。
例えば、こちらの川のそばに作られた遊水地。
川からあふれた水や周囲に降った雨水を受け止める場所だよ。
オランダ南部のファルケンブルグに流れる川の周辺には、こういう遊水地が50か所整備されていて、7月に大雨が降った際も被害を減らすのに役立ったそうだよ。
「水を受け止める」という考え方は、まちなかでも同じだよ。
ロッテルダム市では、新たに建物を建てるときには、雨水をためる設備を作るように義務づけたんだ。
バスケットボールコートが大雨のときに雨水をためることができるようになっていたり、
建物の屋上のあちこちに雨水を給水する緑地や、貯水槽が設けられているよ。
ふだんつかうものも、うまくかつようするのね。
そうなんだ。さらに、オランダでは、浸水の危険がある場所に住んでいる人に、安全な場所に移住してもらうことも進めているんだよ。
これまでに30か所で川の整備が行われていて、250世帯が移住しているんだ。
移住に応じたこちらの家族は最初は、家も経営する工場もあるから、それはできないと考えていたんだって。
でも、国と話し合いを重ねて水害対策の重要性を理解して、移住を決断したんだ。
国に納得のいくお金で家を買い取ってもらい、工場用の土地探しも手伝ってもらえたことで、新しい家と工場を建てられたんだよ。
みんな、きょうりょくしているのね。
えらいわー!
気候変動対策を 声をあげる日本の若者たち
イギリス北部のグラスゴーで開かれた国連の気候変動対策の会議「COP26」。
現地で声を上げた人たちの中に日本から参加した若者の姿もありました。
そのうちの1人、高校生2年生の原有穂さん。Fridays for future のメンバーとして日本で活動を続けるなか限界も感じることもありましたが、COP26に行くことで気候変動対策に改めて関わっていきたいと思いを強くしました。
ねぇねぇ、岡本記者。
さっきは田村記者が世界のお兄さんお姉さんのがんばりを教えてくれたけど、
にほんのお兄さんお姉さんはどうなのかな?
チコちゃん!
実は、COP26には日本からも若い人が参加しているんだよ。
環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんや世界から集まった若者が参加した大きなデモには、日本の高校生の姿もあったんだ。
高校2年生の原有穂さんは、日本で気候変動問題への関心を高めるヒントになればとCOPに参加していたんだよ。
原さんは、同世代の若い人たちと気候変動対策を求める活動をしているんだ。
地元で石炭火力発電所の建設が進んでいるのを知って、建設反対のデモもしているんだよ。
だけど、発電所の建設は止まる様子もないし活動していても、限界を感じていたんだって。
それは心配だわ。
がんばっても何も変わらないなら、チコ、いやになっちゃうわ。
そうだね、チコちゃん。
でも原さん、もっと活動をがんばろうと思ったんだよ。だから海外は初めてだったんだけど、COPに行くことを決めたんだ。
COPでは、積極的に世界の若者たちの集まりや、世界的な研究者との懇談会にも参加したんだよ。
参加したデモでは気候変動に格差や貧困の問題が深く関わっていたことにきづかされたりー
世界では、性別、人種、国籍を超えて気候変動の問題を解決したいと思っている若い人たちがたくさんいることを肌で感じたんだ。
それで原さん、また、がんばろうって思えたのかな?
心配してくれるなんて、優しいんだね、チコちゃん。
世界の若い人たちと触れあったことで、原さんは、また活動していこうって思えたみたいだよ。
「自分がこれから普通に生きる未来や人権は尊重されるべき。そこを変えていくのが私がやらなければいけないこと」って話していたんだ。
へぇ、うれしいわね。
チコ、お兄さんお姉さんたちのがんばっている姿をみたら、ますます応援したくなったわ。
原さんだけでなく、日本から様々な人が参加したCOP26。
小野りりあんさんは若者たちの今後の糧になればと、著名な科学者と交流の場を設けるなど積極的に活動をサポート。
同じころ、日本では大学生の中村涼夏さんが気候変動対策を訴えるデモを行っていました。
COP26に参加したモデルの小野りりあんさん(32)。
最前線で環境活動を続けています。
今回、りりあんさんは日本から参加している若者たちのサポート役を買って出ました。
若者たちが世界の人たちと出会うことがよいきっかけになればと、現地では、日本の若本たちと著名な科学者などを引き合わせる手伝いも。
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小野りりあんさん
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若者たちがCOPに来ることが大切だと思っていたので、日本にあった活動の形は何かというヒントなどたくさん経験できるので、本当に力になっていると思います。
りりあんさんがCOP26に参加しているころ、全国の仲間と連携して気候変動対策を訴える活動をしていたのが大学2年生の中村涼夏さんです。
気候変動に関心を持ってもらおうと、衆議院選挙を前に始めた活動。有権者の参考にしてもらおうと候補者を訪ね、気候変動への取り組みを質問し、その動画を公開しました。
精力的に活動を続ける中村さんには悩みが…
デモのときに通行人ににらまれたり、SNSでのひぼう中傷も少なくありません。
COP26に合わせて世界中の若者と連携してデモを行った中村さん。2時間におよんだデモの最後に足を止めた子どもたちからは「かっこいい」との声も。
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中村涼夏さん
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子どもたちが「あの人たちが声をあげてくれてたな、だから社会が変わったのか」と思ってくれたらすごくうれしい。
NHK「おはよう日本」より
・インスタグラム「地球のミライ」@nhk_sdgs(※NHKサイトを離れます)