IPCC報告書を解説②地球温暖化で日本の気象は?【インスタ画像でわかりやすく解説】
世界の科学者でつくる国連のIPCCが公表した地球温暖化に関する報告書。
「地球のミライ」では、報告書の内容や日本の将来の気象についてイラストで解説しています。
(報告書の解説①温暖化の原因についてなどはこちら→https://www.nhk.or.jp/minplus/0019/topic037.html)
今回は、こちらの3つのポイントから考えます。
ポイント1☞地球温暖化で日本の気象は変化?
ポイント2☞日本の温暖化対策 経緯と課題は?
ポイント3☞温暖化対策 世界の動きと私たちにできることは?
※サムネイルの画像を矢印に沿ってスワイプすると、インスタグラム「地球のミライ」で投稿した画像の続きを見ることができます。
国連IPCC報告書 解説④ 地球温暖化で日本の気象はどう変化?
気象庁と文部科学省は、今世紀末にかけての日本の気候変動を予測(2020年12月公表)。
①「パリ協定」の目標を達成し、世界全体の気温上昇が今世紀末に、産業革命前と比べて2℃前後に抑えられた場合
②追加的な対策をとらず、4℃前後上昇した場合
温暖化が進むと、日本の気象はどうなるのでしょうか。
35℃以上の猛暑日
2020年までの30年間で、全国13地点の猛暑日の年間の平均日数は、約2.5日
▼世界全体の気温上昇が2℃前後に抑えられた場合
約2.8日増加(年間 全国平均)
▼4℃前後上昇した場合
約19.1日増加(年間 全国平均)
非常に激しい雨
20世紀末と今世紀末を比べると(全国平均)
①1時間に50ミリ以上の「非常に激しい雨」頻度は…
▼2℃前後上昇した場合、約1.6倍
▼4℃前後上昇した場合、約2.3倍
②1日の降水量が200ミリ以上と大雨になる日数も…
▼2℃前後上昇した場合、約1.5倍
▼4℃前後上昇した場合、約2.3倍
日本沿岸の平均の海面水位
▼2℃前後上昇した場合、約0.39m上昇
▼4℃前後上昇した場合、約0.71m上昇
高潮や高波による浸水被害のリスクが高まるおそれが…。
海面水温の上昇も続く
近年、上昇が続く日本周辺の平均海面水温。2020年8月には広い範囲で30℃前後(統計を取り始めてから最高に)。
海面水温は近い将来どう変化するのでしょうか?
国立環境研究所・林未知也特別研究員などの研究グループは、IPCCが今回の報告書に用いた温室効果ガスの排出シナリオなどに基づき、詳しく解析。その結果、2031年から2050年ごろには、海面水温が2020年8月のような異常な高温になることが頻発する(2年に1度以上の頻度)との予測が。
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国立環境研究所 林未知也 特別研究員
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「海面水温の上昇は、世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5℃に抑えられても、避けられない可能性が高い。海面水温が高くなると、台風が勢力を落とさずに日本に接近・上陸するリスクが高まるほか、漁業などにも影響を与える可能性がある」
海面水温が上昇すると大気中の水蒸気量が増え、猛烈な台風が勢力を落とさずに接近するおそれが。台風の専門家によると…
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東京大学大気海洋研究所 佐藤正樹教授
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「2020年9月に発生し、猛烈な勢力で九州に近づいた台風10号は、幸い日本に上陸しなかったが、地球温暖化が進めば、勢力の強い台風が上陸する可能性はますます高くなってくる。2020年は大丈夫だったからといって油断せず、備えていくことが重要だ」
国連IPCC報告書 解説⑤ 日本の温暖化対策 経緯と課題は?
温室効果ガスの排出量が世界で5番目に多い日本。欧米各国の対策が進む中、2020年から排出削減に向けた新たな目標を表明してきました。
温室効果ガス排出量 削減目標
▼2020年10月
2050年までに国内の温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目標に掲げる
▼2021年4月新たな削減目標を表明
2030年度の温室効果ガスの排出量を、2013年度と比べて46%削減
この実現に向けて、2021年7月「エネルギー基本計画」の素案を提示しました。
再生可能エネルギーの割合は?
【2030年度の電源構成について】
▼再生可能エネルギーの割合
36%~38%(現状の2倍の水準)
▼二酸化炭素を排出する火力の割合
41%へ大幅削減(現状は75%)
しかし山がちで森林が多い日本では、再生可能エネルギーの発電に適した土地が少なく、各地で建設に反対する声も上がるなど目標達成には課題も。
石炭火力発電の輸出は?
▼これまで
発電効率の高いものにかぎり、石炭火力発電の輸出を支援する方針
▼2021年6月G7サミット=主要7か国首脳会議
排出削減対策が取られていない石炭火力発電について、政府による輸出支援を年内に終える方向で合意
輸出支援を継続できる条件についての再検討が日本に求められています。
国連IPCC報告書 解説⑥ 温暖化対策 世界の動きと私たちにできることは?
IPCC報告書の公表を受け、国連のグテーレス事務総長は直ちに行動をと強調。
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国連 グテーレス事務総長
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「報告書は人類に対する警鐘だ。温室効果ガスの排出が地球を窒息させ、何十億もの人たちを差し迫った危険のもとにさらしている。今、力を合わせれば破滅的な状況は回避できる。しかし、対応を先延ばしにしたり言い訳をしたりする余裕はない」
「パリ協定」では、平均気温の上昇を産業革命前に比べ、2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力をするため、世界全体の温室効果ガス※の排出量を今世紀後半に実質的にゼロにすることが目標に。(※二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスなど)
それぞれの国の目標は?
日本、EU、アメリカなど
2050年まで 温室効果ガスの実質ゼロ
中国
2060年まで 二酸化炭素の実質ゼロ
2030年までの温室効果ガスの削減に向け、新たな目標を掲げる動きも。
日本
2013年度比 46%削減
アメリカ
2005年比 50%から52%削減
EU
1990年比 少なくとも55%削減
1.5℃の目標を世界全体で目指すことに、どれだけ合意できるかが焦点に。
私たちは何をしたらよいか?
地球のミライでは、国立環境研究所の江守正多さんに聞いた「私たちができる5つのこと」を紹介してきました↓
1.科学者の声を聞く
2.気候変動の危機を人に伝える
3.生活を少しずつ変えてみる
4.地域の気候変動対策に参加する
5.よりよい企業・政治を選ぶ
より詳しくは、「持続可能な未来へ「わたしたちにできる5つのこと」もご覧下さい!
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国立環境研究所 江守正多さん
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「日本では、温暖化対策をしましょうというと、“何を我慢すればいいの・・・?”と負担意識の強い発想になりがちです。そうではなくて、例えば、断熱のよい家に住むと快適では?再生可能エネルギーが増えれば、災害時も使えるのでは?などと前向きに捉えていくことが、アクションを広げるために必要なことだと思います」
インスタグラムでも画像を公開中
インスタグラム「地球のミライ」では、環境問題や気候変動のほかSDGsの達成に向け、いま課題になっていることを写真やグラフィックで紹介しています。こちらも合わせてご覧ください。
インスタグラム「地球のミライ」※NHKサイトを離れます
