IPCC報告書 解説1 IPCCって?【インスタ画像でわかりやすく解説】
2021年8月、世界の科学者でつくる国連のIPCCは、地球温暖化に関する報告書を公表しました。
SNS上で番組でIPCCの報告書を解説してほしいとの声をいただいていたので、「地球のミライ」では報告書の内容や日本の将来の気象について、グラフィックで解説することにしました。
2回に分けてお伝えしていきます。
今回、考えていくのはこちら3つのポイントです。
ポイント1☞IPCCの報告書の役割は?
ポイント2☞温暖化の原因は?
ポイント3☞温暖化が進むと・・・
※サムネイルの画像を矢印に沿ってスワイプすると、インスタグラム「地球のミライ」で投稿した画像の続きを見ることができます。
国連IPCC報告書 解説① 地球温暖化に関する最新の報告書を発表したIPCCとは?
2021年8月9日、国連のIPCCは地球温暖化に関する報告書を8年ぶりに公表しました。
ポイントは…
・初めて地球温暖化の原因が人間の活動によるものと断定。
・温暖化が進めば熱波や豪雨などの「極端現象」の頻度や強さが増すと指摘。
国連IPCCってどんな組織?
Intergovernmental Panel on Climate Change
気候変動に関する政府間パネル
▼設立 1988年
WMO=世界気象機関と、UNEP = 国連環境計画によって設立。
▼役割
各国政府から推薦された研究者が最新の研究結果をもとに、
①自然科学的根拠 (地球温暖化の現状や今後の見通し)
②地域や生態系への影響
③緩和策
の3つの報告書と統合報告書を数年ごとに発表。
活動が評価され、2007年ノーベル平和賞を受賞しました。
報告書の役割って?
気候変動に関する国際的合意に、科学的基盤を提供。
▼2013年第5次評価報告書
2015年採択「パリ協定」に以下が盛り込まれました。
“世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力をすること”
▼2018年 1.5℃特別報告書
「世界の平均気温は今のままでは、早ければ2030年には1.5℃上昇し、異常気象がさらに増加」と予測。
温暖化を「1.5℃」に抑えることが世界的に意識されるようになりました。
今回発表された報告書では?
今回の第6次評価報告書では、「2040年までに気温の上昇が1.5℃に達する可能性が50%を超える」との新たな予測が。
2021年10月末からイギリスで開かれる予定の、COP26(国連気候変動枠組条約締約国会議)の議論への影響に注目です。
IPCC報告書なぜ信用できるの?
報告書の執筆者の1人、国立環境研究所 江守正多さんによると…
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国立環境研究所 江守正多さん
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「IPCCの報告書は、66か国から200人以上の専門家が集まり、1万4,000本を超える論文を引用して執筆しています。そこから3回にわたる査読(レビュー)を行います。これは、報告書の途中の原稿をいろいろな専門家に見てもらい、意見をもらう作業です。今回は、全部で7万8,000のコメントに対応しましたが、コメントおよびIPCCの対応は、すべて公開されます。この徹底的な包括性、厳密性、透明性がIPCC報告書の信頼性の源泉だといえます」
国連IPCC報告書 解説② “地球温暖化の原因は人間の活動”と初めて断定
人間活動が及ぼす温暖化への影響についての表現を徐々に強めてきた、IPCC。
2013年の報告書では「温暖化の主な要因は、人間の影響の可能性が極めて高い」、今回の報告書では「人間の影響が、大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と、初めて断定する形に。

「疑う余地がない」と記された理由のひとつは、産業革命以降に観測された急激な気温上昇は、過去2000年以上の間で前例がなく、過去10万年のうち、地球が最も温暖だったころの気温(推定)も超えているということです。

また、「世界の平均気温の変化(1850-2020)」について「自然の影響(太陽や火山の活動)」だけ考慮して試算した場合、急激な気温の上昇は見られないのに対し…
「人間の活動」と「自然の影響」両方考慮して試算した場合、急激な気温の上昇が見られ、観測データとおおむね一致というのも「疑う余地がない」と記された理由のひとつです。
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国立環境研究所 江守正多さん
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「IPCC報告書が『温暖化の主な原因は、人間活動の影響の可能性が・・・』という表現を使い始めたのは、2001年の第3次報告書からです。第3次は、可能性が高い(66%以上)。第4次は、可能性が非常に高い(90%以上)。前回の第5次では、可能性が極めて高い(95%以上)ときて、今回不確実性の表現が外れて、言い切ることとなりました。これは大きいことだと思います。いろいろなデータを全部総合的に見て評価した場合にやっぱり疑う余地がないということになったんだと理解していただければと思います」
国連IPCC報告書 解説③ 温暖化が進むと「極端現象」の頻度と強さが増すとは?
「極端現象」とは、熱波、 大雨、 干ばつ、 熱帯低気圧などのこと。
IPCCは、最新の報告書で温暖化が進むほど世界各地で「極端現象」の頻度や強さが増すと指摘。温室効果ガスの排出を削減するよう警鐘を鳴らしています。
50年に1回発生するような「極端な高温」が観測される頻度は産業革命前(19世紀後半)と比べると…
▼平均気温が1℃温暖化した現在
4.8倍発生する可能性が高い
▼1.5℃温暖化した場合
8.6倍発生する可能性が高くなる
▼2℃温暖化した場合
13.9倍発生する可能性が高くなる
▼4℃温暖化した場合
39.2倍発生する可能性が高くなる
10年に1回発生するような「大雨」 が観測される頻度は産業革命前(19世紀後半) と比べると…
▼平均気温が1℃ 温暖化した現在
1.3倍発生する可能性が高い
▼1.5℃ 温暖化した場合
1.5倍発生する可能性が高くなる
▼2℃ 温暖化した場合
1.7倍発生する可能性が高くなる
▼ 4 ℃ 温暖化した場合
2.7倍発生する可能性が高くなる
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国立環境研究所 江守正多さん
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「今回の報告書を総括すると、これまでの報告書と大きな方向性は変わりませんが科学がより精緻になって、温暖化の原因が人間活動であると言い切ったことなどひとつひとつの論点が非常にクリアになりました。2040年までに世界の平均気温の上昇が1.5℃に達する可能性も新たに分析されましたが、さらに強い決意で脱炭素を続けていき、パリ協定で定められた目標※をしっかりと実現しないといけないことが改めて確認されたと受け止めています」
※世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ、2℃より十分低く保つとともに1.5℃に抑える努力をすること。
インスタグラムでも画像を公開中
インスタグラム「地球のミライ」では、環境問題や気候変動のほかSDGsの達成に向け、いま課題になっていることを写真やグラフィックで紹介しています。こちらも合わせてご覧ください。
インスタグラム「地球のミライ」※NHKサイトを離れます
