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『日本は二流国に』”知の巨人” ジェレミー・リフキン氏の警告

「このままでは日本は “二流の国”になる」と警鐘を鳴らす”知の巨人”がいます。世界各国の政策アドバイザーを務めてきた文明評論家・ジェレミー・リフキンさんです
いま世界ではヨーロッパを中心に温暖化対策と経済成長を同時に進め、持続可能な社会を実現ようとする動きが加速しています。この動きをリフキンさんは“新しい産業革命”と表現します。
その一方で日本は、優れた技術力という大きなポテンシャルを持っているものの、再生可能エネルギーへの転換を進めなければ、いまの経済大国としての地位を失うと警告します。
厳しい分析の理由を聞きました。( NHKスペシャル「2030 未来への分岐点」取材班)

ジェレミー・リフキン Jeremy Rifkin

アメリカ出身の文明評論家。
特に経済やエネルギー問題の分野に明るく、著書『限界費用ゼロ社会』では、再生可能エネルギーやIoTなどの先進技術によって生産性が極限まで高まり、将来的にモノやサービスが無料になると予想している。
未来を展望する確かな議論が世界各国から評価され、ヨーロッパなど世界各国の首脳・政府高官のアドバイザーを務めてきた。

「市場が示している」風力・太陽光への転換

「いまから私が話すことを聞かなければ、日本は20年で先進国の座を失い、二流の国になってしまいます」

リフキンさんが強く訴えているのが、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー(再エネ)への転換です。その理由はエネルギーをめぐる「お金」の大きな変化です。詳しく見ていきましょう。

まずは発電コストの変化です。

「太陽光と風力が安くなっているのに、化石燃料に依存して効率性を高められるはずがありません。太陽光発電や風力発電のコストは今後も下がり続けるでしょう。風と太陽は(燃料代として)請求書を送ってくることはないのですから」

太陽光発電と風力発電の電力の価格は、どのくらい変わっているのでしょうか?
この10年で欧州やアメリカなどでは、発電コストが原子力や火力(石炭など)の発電コストを逆転するようになってきており、世界平均でも再エネが最も安い発電方式となっています。

日本は化石燃料から抜け出せていない

一方で、日本は先進国(ここではOECD加盟国)のなかでも大きく化石燃料に依存している状況です。現在、石炭や天然ガスなど化石燃料を利用した火力発電の割合76%。これは先進国37か国のうち、6番目に高い数字になっています。

一方、再エネ(水力含む)18%で、先進国37か国中で下から8番目と、低い水準にとどまっています。2030年には22%~24%まで上げるべく目標値を定めています。
ヨーロッパでは再エネを積極的に取り入れてきました。ドイツはすでに発電量の42%が再生可能エネルギー。2030年には65%という数値目標を掲げています。

現在、日本政府は再エネの割合を高くしようと目標値の引き上げを行おうとしています。2021年内にも2030年度の再生可能エネルギーの割合を引き上げるか議論される見通しです。

「座礁(ざしょう)資産」 化石燃料から投資が引きはじめている

そして、「投資」にも動きがあります。再エネが安くなるにつれ、市場が変わりつつあります。

「すごいことが起きています。アメリカの太陽光発電・風力発電会社のネクステラ・エナジーの時価総額が、(2020年10月に一時的に、石油大手の)エクソンモービルの時価総額を上回ったのです。世界のフォーチュン500のランキングで1位だった企業が抜かれたのです」

一方で、化石燃料では再エネとは逆の評価が起きています。これもリフキンさんが再エネへのいち早い転換を勧める理由です。

化石燃料による発電にかかわる設備や権利は「座礁資産」と呼ばれるようになってきました。特に石炭からはどんどん投資の手が引かれているといいます。
安い太陽光発電や風力発電に切り替えが進んでいくと、火力発電所やパイプライン、採掘権などの費用の“もとが取れなくなる”と考えられるからです。

すでにドイツ大手電気会社の化石燃料発電部門が売りにでたものの、買い手がつかなかったといいます。

「(巨大な運用資産をもつ)公的年金基金が、化石燃料から手を引いています。日本も含め世界各地の基金が、です。化石燃料業界から11兆ドルがこの5年間で流出しています。民間年金基金や保険業界も同じ方向に進んでいて、大きな変化が起きています。
ただ日本は、市場が“(化石燃料は)間違っている”と示す転換点が来ているにもかかわらず、石炭火力発電所や液化天然ガス発電所を建設していますが。再生可能エネルギーは新しい産業革命なのです」

すでに始まっている 電力システムの変革

リフキンさんの言う新しい産業革命。どんな形なのでしょうか。
その一つが、ネットワークでつながった新しい発電システムです。すでにドイツなどでは、一般家庭まで参加する新しい発電ネットワークが始まっています。

「情報通信、電気、物流のすべてで私たちがネットワークで相互につながり、シェアリングする社会が来ます。これまでの“グローバル”化から“グローカル”化する新しい産業革命です。集中管理されず、すべての人がインフラの一部、そしてプレーヤーとなるのです。例えば自宅の太陽光発電もインフラになります」

それぞれが持っているものを地域や国で共有する。壮大な話にも聞こえますが、すでにドイツで構築されているのは国内全土に広がる巨大な“発電ネットワーク”。大規模に設置されている太陽光発電や風力発電の施設だけでなく、1万を超える個々の住宅や工場などの太陽光発電・風力発電・蓄電池をつないで全体で管理しています。

天気が悪くても、大丈夫です。太陽光発電や風力発電は、天候に大きく左右され、不安定ですが、それを解消しようと、電力をデジタル管理することで一つの発電所のように安定させています。
発電量が多いときには蓄電池に分散して貯蔵し、悪天候などで電気が足りなくなると蓄電池から給電する、いわば、「仮想発電所」ともいえるシステムです。家庭にある太陽光パネルや蓄電池もネットワークに参加していて、市民一人ひとりの力が社会を変えていく時代が始まっています。
こうした取り組みは、ドイツだけでなく、欧州の他の国や中国・アメリカの一部で導入が始まっているといいます。

日本への提言 「今すぐ動き出してほしい」

価格も、市場の評価、そして電力システムにまで大きな転換が起きている再生可能エネルギー。リフキンさんは、日本にはまだ大きな可能性もあるとして、急いで変革を起こしてほしいと訴えました。

「日本には今、新しい産業革命を主導するチャンスがあります。必要となる情報通信、モビリティ・物流の技術の分野でワールドクラスの企業が多くあります。そのうち、通信やモビリティ・物流ではすべて次の時代の技術へと移行しています。電力システムも変わるべきです。今が日本にとって正念場です」

「日本は世界第三の経済大国であり、アジアや世界で大きな発言力を持っています。その知識と文化的な力を活かせば、次の時代への革命のリーダーになれます。
変革を進め、日本にこの新しい時代をリードさせるべきです。
私たち次第です。始めましょう。明日の朝からです」

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みんなのコメント(2件)

40代
2021年2月14日
2030スペシャル観ました見逃した方のために何度も何度も繰り返し放送してほしいです
温暖化による危機が迫っている事が明確でとてもわかりやすくなっていて
若い世代に必要な番組だと思いました
Bonb
60代 男性
2021年2月13日
日本は世界第三位の経済大国ですが、40%が非正規雇用であり子供の7人に一人は貧困のために腹一杯食べることが出来ません。国民の多くが豊かさを感じなくなり貧富の格差が広がっています。日本の政治の貧困を感じます!