
食品ロスを減らせ 大学生が営む“おすそわけ食堂”
新型コロナウイルスの影響で「食品ロス」の問題が注目を集めました。飲食店の利用が減ったことなどから、使われる予定だった食品が多く廃棄されたためです。以前から食品ロスは環境負荷への配慮などから、減らすことが求められてきましたが、日本の食品ロスの量は年間612万トン(平成29年度推計値)、1人当たりにすると約48kgにのぼります。

この問題をなんとかしたいと、高知県の大学生が、捨てられる予定だった野菜をつかって料理を提供する食堂をオープンさせました。高知放送局の取材です。
「おすそわけ食堂」で捨てるはずの野菜もらいます

高知県香美市にオープンした、夜だけ営業する食堂。開いたのは陶山智美(すやま・ちみ)さん(当時大学4年生)です。スタッフもすべて大学生です。
かぼちゃの煮つけや地元特産のりゅうきゅうの酢の物など、料理に使われている野菜のほとんどは、捨てられてしまう予定だった野菜です。
売れ残ったり、形や大きさが規格外といった理由で捨てられてしまう野菜を、農家から譲り受けているのです。定食が600円と手ごろな値段ということもあり、学生から親子連れなどから人気を集めています。
直売所でも売れ残れば、野菜が捨てられる現実
陶山さんが食堂を開こうと思ったきっかけのひとつが、大学2年生で体験した中山間地域の農業実習でした。農家の出荷作業などを手伝う中で、直売所に出しても、売れ残ってしまえば野菜が廃棄されるという現実に衝撃を受けたといいます。
その後も何とかできないか考えた結果、捨てられてしまう野菜を活用して、食堂が開くことを思いつきました。農家に相談してみたところ、野菜などを提供してくれる人が現れました。

いまでは陶山さんの取り組みに賛同して「おすそわけ」してくれる農家は10軒以上になり、なすやきゅうりなど25種類の野菜をほぼ無償で分けてもらえるようになりました。
「いつか地域の人々に恩返しがしたい」。陶山さんの取り組みを動画にまとめました。
陶山さんは、食品ロスを減らすだけではなく、この食堂が、仕事で忙しいお母さんが食事を通して、子どもとゆっくり過ごす時間が持てるという場所になったり、地域の人々が気楽に集まって話ができるような、「よりどころ」になることを目指しています。