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知って欲しい“ミックスルーツだけじゃない”マイクロアグレッション体験談

「マイクロアグレッション」を考えるシリーズの最後(第3回)は、マイクロアグレッションはミックスルーツだけでなく、もっと多くの人を対象に起きているという現状を考えます。

マイクロアグレッションとは、小さな攻撃性という意味で、日々の言葉や行動で相手を無意識のうちに傷つけてしまう行為です。マイクロアグレッションをしてしまう側は、社会的マイノリティの人に対して無意識に抱いている偏見や固定観念などが根底にあると言われています。

皆さんの中には、「ミックスルーツの人と関わる機会がないから、自分は関係ないかな」と思う方もいらっしゃるかもしれません。でも、もしかしたら、あなたの家族や友人がマイクロアグレッションで悩んでいるかもしれません。あるいは、あなたが日ごろ人づきあいで感じているモヤモヤ、それも実はマイクロアグレッションかもしれないのです。

第1回『マイクロアグレッションとは?』という記事では、ミックスルーツであるディレクター自身の経験を紹介しました。

マイクロアグレッションとは? ~日本で生まれ育ったミックスの私の体験~ - インクルーシブな社会のために - NHK みんなでプラス

第2回『なぜマイクロアグレッションは起こるのか?』という記事では、20名以上のミックスルーツ当事者への取材で見えてきた、マイクロアグレッションが起こってしまう理由をひもときました。

無自覚の差別行為マイクロアグレッションはなぜ起きるのか - インクルーシブな社会のために - NHK みんなでプラス

「彼氏/彼女いるの?」質問したこと、ありませんか?

だれかと仲良くなりたいと思ったとき、男性には「彼女いるの?」 女性には「彼氏いるの?」と質問をしたことがある人、多いのではないでしょうか?

日常の中にありふれた、何気ないコミュニケーションのひとつのように思えますし、実際に、何も違和感を覚えずに質問に答える人も多くいます。

でも、もしその質問を投げかけた相手が同性のことを好きになる人だったら、どう思うでしょうか?

今回マイクロアグレッションについて取材をする中で、LGBTQ+の方々にも話を伺いました。その中で特に多かったのが、この「彼氏/彼女いるの?」という質問に対するモヤモヤの声でした。

「自分は同性のことが好きだけど、異性愛者だということを前提に質問されているから、どのように答えたらよいのか分からない…。自分は“前提”から外れているのかも…」

もちろん、質問した人には悪意がない場合がほとんどです。それでも“男性の恋愛対象は女性。女性の恋愛対象は男性”という固定観念が、無意識のうちにことばのチョイスやニュアンスににじみ出て、結果的にマイクロアグレッションとなってしまうのです。

福井瑞穂さんのマイクロアグレッション体験談

女性として生まれたが現在は男性として生きる福井瑞穂さん
香川県出身でピアノ調律師やミュージシャンとして活動

トランスジェンダーの福井瑞穂さんが、ご自身のマイクロアグレッションの体験を語ってくれました。

福井瑞穂さん

「やっぱり小さいときからどうしてもボーイッシュで髪刈り上げをしたり、あとはスカートを履かなかったりとかしていたので、周りから『なんで女の子なのに髪伸ばさないの?』とか『もっと女の子らしくしたら?なんで?男みたいにするの?』みたいに、幼稚園・小学校とか、ずっと小さい時から言われ続けていました。周りの人に悪意はないんですけども、やっぱりそれでちょっとずつ、ちょっとずつ、傷ついてきたという経験があります」

これは、福井さんが小学5年生の時に書いた作文です。周囲から「女の子なんだから女の子らしくしなさい」ということを求められたり、逆に「ボーイッシュなのに、ピアノ好きなんやね」と言われたり、固定観念の枠から外れた時に言われる言葉への複雑な心境がつづられています。

小学5年生の時に書いた福井さんの作文
(福井さんの作文 ※本文抜粋)

「次は、福井瑞穂君です。」

ピアノの発表会で言われた一言。私はカーッと体が熱くなり、とってもはずかしくなり、曲がうまくひけませんでした。私もそう言われるのではないかと、とても心配でした。

実はその日のスタイルは、頭はかり上げ。もちろん短パン。そしてくつは、黒いスニーカー。私にとってそれは自然なスタイルなのです。

―中略―

男も女も同じような服を着たり、区別なしにすればいいと思います。いくら体つきがちがうからと言って、男はズボン、女はスカートなんておかしいと思います。

こうした、悪意がない周りからの度重なるマイクロアグレッションが原因で、福井さんは幼いころ「自分は悪いことをしている存在なんだ」という意識があったそうです。

大人になってからは、「LGBTQの人って芸術家とか音楽得意な人多いよね!」と言われたり、戸籍を男性に変更して結婚してからは、「子どもはまだ?」「お父さんなんだから頑張らんとね!」など、子どもがいることが前提のことばをかけられることもあったといいます。発言に悪意がないことは分かっていても、そのつど傷ついてきたと話します。

そうした経験をしてきた福井さんがいま伝えたいことは・・・

福井瑞穂さん

「LGBTQというワードが広まっていること自体はいいことだと思うが、知識が伴っていないことが多く、言葉だけが変に広まってしまっている印象がある。知識不足が故の偏見が、マイクロアグレッションの原因にあるのではないか。つまり、マイクロアグレッションをしてしまう人が問題なのではなく、正しい知識や本質が提供されていない教育環境に問題があると感じる」

LGBTQ+の人が感じるマイクロアグレッション

ほかにも、LGBTQ+の方に取材をする中で、「日々聞かれる何気ない質問や声かけがマイクロアグレッションになっている」という声がたくさん上がりました。

「恋愛対象が女性である女性が、『◯◯ちゃんも彼氏ができたらキレイになるよ~』『いいお嫁さんになるよ~』と言われる」

「『好きな異性のタイプは?』と聞かれる」

「ご近所付き合いをする中で『◯◯さん家の子が結婚したから、次はあんたやね~』と言われる」

「職場で『付き合っているパートナーがいる』と伝えても、会話の中でいつの間にか『彼氏さん』『彼女さん』に変換される」

「ボーイッシュな服装が好きな女性の場合『成人式で何色の振袖を着るの?』と聞かれる」

病気や障害をもとに起こるマイクロアグレッションも

取材の中で病気や障害をもとにマイクロアグレッションに悩む方々にも出会いました。

例えば、東京在住の雁屋優さん(28)はアルビノとしてマイクロアグレッションを経験してきました。中学生のころ、担任の先生にクラス全員に向けて“褒めて”もらったときの言葉が、10年以上経ってもなお、まだ心に複雑な記憶として残っているといいます。

「雁屋さんはアルビノで目が悪くて、君らより見えていないのに勉強を頑張って学年トップとか取るんだよ。努力家だと思うし、すごいと思う」

雁屋さんはこの発言を聞いて「私が褒めてもらえるのは、アルビノだからなの?」と、全身がカッと熱くなったのを覚えているそうです。

「◯◯だから~」「◯◯なのに~」という固定観念がもとになっている発言は、ミックスルーツやLGBTQ+に限らず、マイクロアグレッションになりやすいケースです。

また、子どもに障害がある40代の女性は、日常の中でマイクロアグレッションを感じる機会が多いと話してくださいました。

子どもが街なかで大きな声で泣いてしまったり、トイレに1人で行けなかったりする中で、周りの人に「大丈夫、大人になったら治るよ!」と励まされることが多いそうです。もちろん悪意はなく、むしろ元気づけようと思って声をかけたと思いますが、女性は、治ることではないことに向き合っている中で、“治る”という前提で言われることは傷つくといいます。

日常にあふれるマイクロアグレッションに“アンテナを張る”

マイクロアグレッションを経験する人の多くは“社会的マイノリティ”に属する人たちです。実はそうした人たちは、意外とごく身近にいるものです。そしてあなたも、もしかすると何かしらの“社会的マイノリティ”かもしれません。

つまり、マイクロアグレッションは日常にあふれており、どんな立場の人でも“被害者”にも“加害者”にもなり得るのです。

前回、第2回の記事では、「四国らしんばん 四国アップデート委員会」(昨年8月放送)で、一緒にマイクロアグレッションについて話し合った学生のみなさんから出た、それぞれのマイクロアグレッション体験談や、どうすればマイクロアグレッションはなくなるのかという意見を紹介しました。

それぞれの人が明日からどのような意識をもって周りの人と関わっていけば、マイクロアグレッションを防いでいけるのか…。この記事がきっかけになるとうれしいです。

この記事の執筆者

高松放送局 ディレクター
エイブル みちる

岡山県出身。父はアメリカ人、母は日本人。2019年にNHK入局後、東京で教育番組を制作。「ミックスルーツ」や「LGBTQ」などマイノリティに関するテーマなどを取材し、番組を制作している。

みんなのコメント(2件)

体験談
ハナミズキ
50代 女性
2024年4月28日
50代です。兄妹とも独身です。どこに行くにも二人連れだと、大体「夫婦」に見られてしまう。
「奥様もいかがですか?」などと聞かれる。

いい加減「奥様」ではなく、「お連れ様」と言う世の中になってほしいです。
提言
K
30代 男性
2024年4月19日
LGBTQ+当事者です。マイクロアグレッションという言葉をこのサイトで初めて知りました。私も「結婚しないの?」「結婚しないと一人前じゃない」「彼女は?」などと周囲からよく言われます。相手に悪意がないことは分かっているのですが、内心は嫌悪と反発でモヤモヤしています。意外だったのは、20代の若い人からも同じような言葉をかけられたことです。ジェンダー教育が浸透していると思っていた下の世代も、上の世代の感覚と大差がないことに驚きました。この状況を変えるには、学校自治体メディア等が連携して、マイクロアグレッションの知識の普及拡大に努めるのが基本だと思います。私個人は、勇気を出してカミングアウトし、目の前にもマイノリティが存在することを訴えていければと考えています。
この記事のコメント投稿フォームからみなさんの声をお待ちしています。

担当 エイブル みちるの
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