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“ガチ中華” 食材の舞台裏にも新時代の日中関係

中国人が多く住む地域や通勤・通学のターミナル駅周辺に増える本場の中国料理“ガチ中華”。ザリガニや鴨の血など、日本人に馴染みのない食材や香辛料が多く使われます。日本で入手しにくい食材の多くは中国などから輸入されていますが、中には国内調達の工夫を行っている店も出てきています。新たな時代の日中関係を反映した、食材や香辛料調達の舞台裏を取材しました。
(クローズアップ現代取材班)

こだわりのトウガラシは畑で自給

中国料理で最も辛いといわれるのが湖南料理です。
高田馬場にある湖南料理店を訪ねると、留学生など中国人のお客さんでにぎわっていました。

高田馬場にある湖南料理店

下の写真は、「刴椒魚頭(ドゥオジャオユィトウ)」という湖南風蒸し魚。
刻みトウガラシが大量に使われています。

「刴椒魚頭(ドゥオジャオユィトウ)」
「刴椒魚頭(ドゥオジャオユィトウ)」

そして定番料理、「牛肉の湖南風炒め(小炒黄牛肉・シャオチャオファンニウロウ)」。
こちらも緑と赤のトウガラシがたくさん使われています。

「小炒黄牛肉(シャオチャオファンニウロウ)」
「小炒黄牛肉(シャオチャオファンニウロウ)」

湖南省出身の留学生が食事に来ていました。料理について聞くと・・・

湖南省出身の中国人留学生
中国人留学生

「もっと辛くてもいい。辛いほどおいしいです」

湖南料理の調理の様子

湖南料理では、さまざまな種類のトウガラシを使います。
それも生のもの、乾燥させたもの、発酵させたものなどがあり、多様な辛みを出します。

店のオーナー・劉振軒(リュウ・シンケン)さんも湖南省出身です。

湖南料理店店主 劉振軒さん
湖南料理店店主 劉振軒さん

「ふるさとの料理を食べたくて、日本に本場の味がなかったので店を開きました。最近は日本人のお客さんも増えています。湖南省のトウガラシは、日本のものと香りも辛さも全然違います。日本で手に入りにくい種類の新鮮なトウガラシを使いたくて、自分の農場で栽培しています」

本場の味を出すために、そこまでしているとは!

埼玉県にある劉さんの農場を訪ねてみることにしました。

埼玉県にある劉さんの農場

都心から車で1時間。ここで中国人スタッフがさまざまな野菜やトウガラシを栽培しています。

細長いインゲンや、巨大なウリなど、見たことのない珍しい野菜が。

細長いインゲンや巨大なウリ

実はここは試験農場で、試しに少量育ててみて、うまくいったら茨城にある広い農場でたくさん栽培するのだそうです。

ちょうど、トウガラシの収穫をしていました。

トウガラシの収穫
栽培しているトウガラシ

トウガラシも6~7種類育てているそうです。日本では「鷹の爪」が知られていますが、ここにあるトウガラシはすべて辛さや風味が違うそうです。本場の味を追究するため、わざわざトウガラシや野菜を自家栽培するこだわりぶりには感心させられました。

“ガチ中華”がもたらした、食品ロス削減と草の根日中交流

ここでクイズです。下の写真、どんな食材を使った料理かわかりますか?

カモの首を輪切りにした料理

実は、カモの首を輪切りにしたものです。

カモの首や爪などの料理店

池袋にある、カモの首や爪などの料理店です。新大久保や上野などにも展開しているそうです。

店頭には、カモの首、頭、爪、舌、内臓など、さまざまな部位を煮込んでくん製にしたものが並んでいます。中国の若者にスナック感覚で好まれているそうで、テイクアウトしていく中国人客がひっきりなしにやってきます。

料理をテイクアウトしていく中国人客

日本人にとって、カモといえばカモ鍋やカモ南蛮。
モモ肉やムネ肉(ロース)などは食べますが、首や爪などは“ガチ中華”ならでは。

カモの首や爪などを煮込む様子

埼玉にある店の工場では、大きな鍋を使い、スパイスを効かせた特性スープで、カモの首や爪などを何時間も煮込んでいました。

社長の孫成龍(ソン・セイリュウ)さん
社長の孫成龍(ソン・セイリュウ)さん

社長の孫成龍(ソン・セイリュウ)さんは留学のため来日し、IT企業に勤めたあと、2013年に起業。食材は輸入ではなく、日本人が経営するカモ肉加工業者から仕入れているそうです。

そこで、仕入れ先のカモ肉加工会社も訪ねてみました。
ちょうど産地からトラックでアイガモが運ばれてきていました。

カモ肉工場

アイガモを解体し、モモ肉やムネ肉などを生産しています。
肉を取った残りの部分は、以前はコストをかけて飼料原料などにリサイクルしていたとか。

しかし、これをガチ中華の食材として活用するようになって、その分の利益が上がるようになり、食品ロスを2割減らすことができたそうです。

カモ肉を加工する様子

カモ肉加工会社の浜田健一社長にお話を伺いました。

カモ肉加工会社の浜田健一社長
カモ肉加工会社 浜田健一社長

「10年近く前、孫社長から、鴨の首や内臓などの食材が欲しいと依頼がありました。日本人はあまり馴染みのない料理ですし、外国の方ということで若干不安がありましたが、おつきあいしてみたら皆さん本当にいい人たちで、今では飲食をご一緒するなど、親しくおつきあいさせてもらっています。ウィン・ウィンの関係というか、これからも共に成長していけたらと思っています」

ガチ中華は日本に暮らす中国人たちの間で広がってきたものですが、食材の調達などを通じて日中の草の根のつながりが生まれたり、食品ロスの軽減がもたらされたりしていることがわかりました。このような「ウィン・ウィン」の関係の深まりを期待したいと思います。

クローズアップ現代「なぜ急増?“ガチ中華”新時代の日中関係に迫る」

2022年10月19日放送 ※10月26日まで見逃し配信

ナマズの煮込みに、ザリガニのニンニク煮込み…。日本人の舌に合わせた料理ではなく、本場中国の味を出す中国料理店が都内に急増!その数300軒にのぼる。急増の謎をひもとくと、中国社会の知られざる変遷が明らかに。しれつな受験戦争や就職戦線、“頑張らない若者”の増加…。中国の若者たちは日本の価値観や終身雇用など雇用環境に共感、来日するケースが増えている。ブームから見える新時代の日中関係に迫る。

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