
東京“ガチ中華”エリアマップ~バラエティー豊かな味に迫る
酢豚やエビチリ、ラーメンといった日本人向け“町中華”とは違う、本場の味の中国料理、“ガチ中華”。この数年で急増しています。東京近郊のガチ中華の広がりや、中国各地の料理のバリエーションを、地図にまとめました。日本にいながらにして、中国各地の多様な味に出会える時代です。
(クローズアップ現代取材班)
どこで食べられる? “ガチ中華”
ガチ中華を発掘し、情報発信を続ける「東京ディープチャイナ研究会」の中村正人さんによると、都内および東京近郊には、ガチ中華が集まるエリアがいくつかあります。

○埼京線沿線(新宿~池袋)
○上野・御徒町
○総武線沿線(錦糸町~小岩)
○西川口・蕨
○蒲田
中村さんたちの情報に、在住中国人人口の地図を重ねてみると、中国人の多い地域とガチ中華の多い地域がほぼ一致します。在日中国人が多く住む地域(東京都江東区・江戸川区、埼玉県川口市など)や、通勤・通学のターミナル駅周辺に出店が集中してきたことがうかがえます。
最近特にガチ中華の出店が盛んな高田馬場は、中国人留学生の多い早稲田大学が近く、中国人向けの日本語学校や大学進学塾も集中しています。成田空港にアクセスがいい上野も、店が増えています。
現在、都内にはガチ中華が少なくとも300店以上はあるとみられ、さらに大阪、名古屋、福岡などにも広がっているといいます。
中国各地からの“ガチ中華”ひしめく本場・池袋
ガチ中華の世界に触れようと、池袋を訪ねました。
駅の北西エリアを歩くと、街角には中国語の看板が各所に。駅近くの雑居ビルのエレベーターを上がると、中国の街角かと思うような風景が広がっていました。

3年前にオープンした、ガチ中華のフードコート。四川料理、中国東北料理などの店が並んでいます。好きな料理を注文して中央のテーブルで食べることができ、ガチ中華入門には格好の場所です。系列店が、千葉や大阪、福岡にもできているそうです。
週末だったためか日本人のお客さんも多いようですが、中国語の会話もあちこちから聞こえます。
湖南省出身だという男性がいました。

「毎週食べに来ています。味が本格的で、中国に帰った気分になります」
料理は軽食が中心。
こちらは上海焼売。おこわを皮で包んでいます。
上海料理は辛くなく、日本人好みの優しい味が特徴です。

下の写真は中国東北地方の料理、「烤冷麺(カオレンメン)」。
といっても一般的な麺ではなく、冷麺の生地で肉や野菜などを包んで焼いたものです。クレープのようにも見えますが、モチモチして食べ応えがあります。

フードコートの横には食材店があり、調味料や羊肉などが売られていました。中国の方たちが家庭でガチ中華をつくるのに使うのでしょうか。
コロナ禍の2020年まで、日本に住む中国人は増え続けてきており、それも、広大な中国の様々な地域から移住してきています。ガチ中華は、そうした多様な中国出身の人たちのニーズに合わせて広がってきたとみられます。

さらに、中国人の間で人気だという四川料理店も訪ねました。

お客の多くが中国人のようです。
聞えてくるBGMは中国人歌手の歌、いったいどこの国にいるのかわからなくなります。
3人で楽しそうに会食しているお客さんがいました。

女性2人は、それぞれ中国と台湾から来日した友人同士。男性は中国人女性の上司だとか。
まさに東アジアの国際交流!
中国から来日した女性(左)
「コロナで2年以上ふるさとに帰れていないし、辛いものが好きなので、ここで本場の味を食べます。このへんは、マーラータンも火鍋も中国東北料理も台湾料理もあって、便利な池袋です!」
台湾から来日した女性(中央)
「日本料理にはこんな辛さのものはないですよね。美味しいです」
日本人男性
「辛い中にも旨味があって奥深いです。たまにどうしても食べたくなります」
この店の看板料理は「烤魚」(カオユー)。
魚を焼いてトウガラシいっぱいの鍋で煮たものです。

付け合わせに、カモの血を固めた「鴨血(ヤーシエ)」や、牛の胃袋・センマイもついています。四川料理は、花椒(ホアジャオ)という香辛料とトウガラシを使った、しびれるような辛さが特徴です。
“ガチ中華”で身近に!中国の多様な食文化
このように、ガチ中華といっても軽食から激辛料理までさまざまです。
「東京ディープチャイナ研究会」の中村さんによると、中国料理には代表的な四大料理(北京、上海、四川、広東)のほか、さまざまな地方料理があり、地域・風土によって食材も味付けも大きく異なっているということです。

○華北・西北エリア:
北京料理、西安料理など。羊料理や、小麦粉を使った麺・軽食が多く、塩味が強い。
○東方エリア:
上海料理。醤油ベースの甘く優しい味が多い。
○南方エリア:
広東料理、福建料理など。海や山の多様な食材を使い、あっさりした味付けが特徴。
○西南エリア:
四川料理、湖南料理、雲南料理など。トウガラシや花椒(ホアジャオ)を使った辛い料理が多い。
コロナ禍で海外旅行へのハードルが上がった昨今ですが、実は日本にいながらにして、こうした中国各地の味を楽しめる状況になっています。
身近にある異文化を楽しんでみてはいかがでしょうか。
取材協力「東京ディープチャイナ研究会」
都内のガチ中華を発掘し、食事会を企画しているグループ。
ホームページなどを通じて情報発信も行っている。
クローズアップ現代「なぜ急増?“ガチ中華”新時代の日中関係に迫る」
2022年10月19日放送 ※10月26日まで見逃し配信
ナマズの煮込みに、ザリガニのニンニク煮込み…。日本人の舌に合わせた料理ではなく、本場中国の味を出す中国料理店が都内に急増!その数300軒にのぼる。急増の謎をひもとくと、中国社会の知られざる変遷が明らかに。しれつな受験戦争や就職戦線、“頑張らない若者”の増加…。中国の若者たちは日本の価値観や終身雇用など雇用環境に共感、来日するケースが増えている。ブームから見える新時代の日中関係に迫る。