ネットの「投げ銭」 子どもの高額課金を防ぐには 専門家が解説
ネットのライブ配信などで、気に入ったコンテンツに対して送金するシステム「投げ銭」。ブームが広がる一方で、子どもが親の知らないうちに高額の課金をするケースも増加。
中には複数のクレジットカードを無断で使ってしまい700万円もの請求が来た例も。
トラブルを防ぐにはどうすればいいのか?返金はしてもらえるのか?
この問題に詳しい「ECネットワーク」理事の原田由里さんに、保護者が知っておくべき4つのポイントを聞きました。
(クローズアップ現代+取材班)
クローズアップ現代+「“投げ銭”急拡大 空前のブームで何が」(2021/10/26放送)
NHKプラスでは放送1週間後まで見逃し配信中です(~11/2まで)
①最も確実な対策は「ペアレンタルコントロール」
現在ネットのライブ配信の多くは「アプリ」で運用されていて、“投げ銭”をすると「Apple ID (App store )」や「Googleアカウント(Google Play)」といったプラットフォームのアカウントを経由して決済されるのが基本です。クレジットカードや(携帯電話会社の)キャリア決済、プリペイドカードなどで支払います。
これらのプラットフォームでは、子どものアプリの利用を管理・保護するための機能が使えるようになっています。それが「ペアレンタルコントロール」です。
iOS/iPadの場合は「スクリーンタイム」と「ファミリー共有」、Androidの場合は「ファミリーリンク」というサービスで設定ができます。
子どものスマホやタブレット上で「ペアレンタルコントロール」を設定すると、『保護者の承認がないとアプリのダウンロードやアプリ内での課金ができない』ように制限をかけることができます(画像・左)。『アプリ内での課金を許可しない設定』(画像・右)も可能です。
つまり「ペアレンタルコントロール」を設定しておくことで、子どもの高額課金のかなりの部分は防ぐことができるのです。(設定方法は、各プラットフォームのHP上に掲載されています)
またキャリア決済(携帯電話料金とまとめて支払い)の場合は、利用できる上限額が設定されています。子どもの年齢によって多少の違いはありますが、ほとんどの携帯電話会社で、未成年の上限額は月1万~2万円です。金額は1000円単位で変更することも可能です。決済する際のパスワードは保護者が管理し、「2段階認証」も設定すると安心です。
しかし子どもの年齢や、家庭の事情によってペアレンタルコントロールをかけることが難しい場合もあるかもしれません。そうした場合はどうすればいいのか、次に見ていきます。
②「クレジットカード」の管理を徹底
一部の”格安スマホ”などではキャリア決済が利用できないため、子どもの端末で課金する場合に保護者のクレジットカードで支払うことがあると思います。そうした場合には、以下の点に注意が必要です。
■子どものスマホにクレジットカード情報を登録しない
「1000円だけ課金させて」と子どもにせがまれ、一度だけ保護者のクレジットカードで支払いをしたら、その後高額な請求が届いた…というケースがありました。
クレジットカードを利用するための情報(クレジットカード番号やパスワードなど)は、一度端末に登録すると自動保存されるのが一般的です。
ペアレンタルコントロールを設定していない場合、そのままの状態にしてしまうと、保護者の知らないうちに子どもがクレジットカードを利用できてしまうので高額課金のリスクになります。クレジットカードの情報は、その都度入力するように設定してください。
(※厳密には「クレジットカードの第三者への貸与」にあたり、名義人にはカードの強制解約や全額一括返済を求められる可能性があります)
■クレジットカードは子どもに渡さない
クレジットカードの情報を入力する際には、子どもにそのままカードを渡さないようにしてください。カードの番号を写真で撮影していたり、メモや暗記をしていたケースがあります。
■子どもにわかるパスワードを設定しない
またパスワードの設定にも注意が必要です。誕生日など子どもでもすぐにわかってしまうようなものは避けましょう。保護者がパスワードを入力する際は、子どもに見せないようにしましょう。
■保管の徹底と、明細の確認
複数のクレジットカードを持っている人が、普段使用しないカードを引き出しなどに入れていて、それを子どもが勝手に使って課金をしていた…というケースも。
カードの保管にも気を配ってください。言わずもがなですが、クレジットカードの明細も定期的に確認するようにしましょう。
ここまで言われると「何だか子どもを信用していないみたい…」と思う人もいるかもしれません。もちろん家庭で話し合ってルールを決めることが理想ですが、特にライブ配信の場合は、「まさにその瞬間」に投げ銭をしたくなってしまうため、衝動的に課金し、そのまま隠してしまったという子どもが多いのも事実です。同じことが何度も繰り返されるなどの場合は、厳しめの対策が必要な場合もあります。
③返金の可能性も「未成年契約の取り消し」
万が一、子どもが高額な課金をしてしまったらどうすればいいのか?
そんなときは「未成年者契約の取消し」という方法もあります。
未成年者が保護者(法定代理人)の許可なく結んだ契約を取り消す手続きのことで、民法で定められています。
この手続きによって、実際に一部の返金や全額返金が認められたケースもあります。
ただしライブ配信サービスを利用する際に、子どもが年齢を偽って登録していたり、サービスの利用規約に「保護者の同意」についての条項が含まれている場合などは、「未成年者契約の取り消し」が認められないケースもあります。また仮に認められても、2回目が認められるケースはほとんどありません。
「未成年者契約の取り消し」の適用には、以下の要件をすべて満たすことが必要です。
・契約時の年齢が未成年(現在は20歳未満)であること
・契約当事者が婚姻の経験がないこと
・法定代理人(保護者など)が同意していないこと
・法定代理人から、処分を許された財産(小遣い)の範囲内でないこと
・法定代理人から許された営業に関する取引でないこと
・未成年者が詐術を用いていないこと(成人であると偽っていないこと)
・法定代理人の追認がないこと
・取消権が時効になっていないこと(未成年者が成年になったときから5年間、または契約から20年間)
細かい手続き方法などは、最寄りの消費生活センターなどに相談してください。
消費者ホットライン → 局番なし「188」(いやや!)
※最寄りの市区町村や都道府県の消費生活センター等を案内する、全国共通の3桁の電話番号です。
④“100%安全”はない 家庭でルール決めを
新しいネットサービスが次々に登場する中で、「これをしておけば100%安全」という対策はありません。 最も重要なのは、家庭内でコミュニケーションをとり、子どものスマホの利用方法(スマホを使う時間や場所など)をしっかり決めておくこと。そして、課金をする際の「ルール」を決めることだと思います。
予防の意味でも、再発防止の意味でも、保護者ができるかぎりの対策を講じて見守ることが重要です。
子どもたちのネットやスマホの使い方。保護者の方も悩みが多いと思います。「うちではこんなルールを決めている」など、みんなで共有できるアイディアがありましたら、ぜひ下のコメント欄に書き込んで下さい。