
どう考える? “予期せぬ妊娠”と緊急避妊薬【vol.91】
新型コロナの影響が続く中、“予期せぬ妊娠”への不安を抱える女性が増えています。“予期せぬ妊娠”を防ぐ「緊急避妊薬」。WHO(世界保健機関)が誰もが安く 簡単に入手できることが望ましいものとして必須医薬品に指定している薬で、性行為から72時間以内に服用すれば80%以上の確率で妊娠を防ぐことができるといわれています。現在、世界86か国で医師の処方箋を必要とせずに購入することができますが、日本では医師の診察を受けることが必要です。緊急避妊薬の扱いについて、私たちはどう考えればいいのでしょうか。
(さいたま放送局 記者 信藤敦子・NHKグローバルメディアサービス ディレクター 飛田陽子)
新型コロナの陰で…急増する“予期せぬ妊娠”に関する相談
10代や20代の若者を中心に、性に関するメール相談に応じているNPO法人「ピルコン」では、3月から相談が急増しています。その数は、589件に上ります(6月末現在)。なにが起きているのか。「性暴力を考える」取材班は、寄せられた相談の内容を、名前などの個人情報を伏せた上で、教えてもらいました。

1通1通のメールから浮かぶのは、パートナーにも、親や先生など身近な大人にも、不安な気持ちを打ち明けられないでいる孤独な姿です。NPO「ピルコン」代表理事の染矢明日香(そめや あすか)さんは、コロナ禍で相談が急増した背景について、休校が続くなか 子どもだけでやりとりする時間が増え、性行為の機会そのものが増えた可能性があると指摘します。さらに「春に予定されていた性教育の出前授業や講演が軒並み中止になったことの影響も感じています。今まで わずからながらあった、10代が性について考える機会が損なわれていることが心配です」と話していました。
#緊急避妊薬を薬局で 声をあげ始めた人たち

各国では、避妊の失敗や性暴力被害に遭った時などに“予期せぬ妊娠”を防ぐために、緊急避妊薬が使われています。性行為から72時間以内に服用すれば、80%以上の確率で妊娠を回避することができるといわれている薬です。アメリカやイギリスなど、多くの国では薬局で購入できますが、日本では産婦人科を受診して事情を説明し、処方が必要と判断されない限り、手に入れることができません。かかる費用も1~2万円程度と、国際的に見ても高額(※)です。SNSなどを介し、本物かどうか定かでない“輸入品”の売買が横行しているケースもあり、このまま医師の処方を必須とし続けるべきかどうか、議論を呼んでいます。
(※性暴力の被害を受け、警察に被害届が受理されれば、公費負担となります。)

新型コロナの陰で、“予期せぬ妊娠”への不安がかつてないほど高まっている今だからこそ、緊急避妊薬を薬剤師の関与のもと薬局で買えるようにしてほしい―。今月21日、中絶経験のある女性たちや薬局での購入に賛成する産婦人科医、性に関する相談に応じている支援機関などでつくる団体が共同で、厚生労働省に要望書を提出しました。一方、日本産婦人科医会など 薬の処方に関連する学会からは、薬局で扱うことに対して、「避妊方法などを学ぶ性教育をより充実させるべき」など慎重な声も上がっています。
“予期せぬ妊娠”の不安に直面した時の選択肢である緊急避妊薬。あすの『おはよう日本』で詳しく考えます。
<総合>『NHKニュース おはよう日本』けさのクローズアップ
2020年7月29日放送
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