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校則がついに変わった!「10分休憩で自販機の利用禁止」撤廃へ|“校則が厳しい学校”の改革日記④

栃木県の公立校・足利清風高校で行われている“校則見直し”の活動。そこにNHKのディレクターが1年間お手伝いしながら記録していく「校則が厳しい学校の改革日記」。

第4回。ついに、1つの校則が変わります。それは「校内の自動販売機は、授業間の10分休憩では購入禁止」というもの。

「以前、休み時間中にジュースを買っていた生徒が授業に遅刻したから」と続いていたルール。見直しに向けて駆け抜けた高校生たちの一夏の記録です。

※本記事は2021年7月~8月の出来事をまとめたものです。肩書きや学年、校則の内容は当時の状況です。

これまでの記事は↓

① 発足!ルールメイキング委員会

②「意外と難しい・・・」 生徒と教師の“対話”

③ 全校生徒を巻き込め!500人を前に語ったことば| “校則が厳しい学校”の改革日記

これまでの校則改革日記

「下着の色の指定」や「ツーブロック禁止」「スマートフォンの校内使用禁止」など、約90項目のルールがあり、地域では“校則が厳しい”ことで知られる栃木県立足利清風高校。

2021年春、学校はNPOカタリバが主催する「ルールメイキングプロジェクト」に参加することを決める。有志の先生と生徒、そしてNPOから派遣されたコーディネーター(筆者ら)が参加し、「ルールメイキング委員会」を結成。話し合いや客観的なデータを大切にしながら、学校に関わる全員が幸せになれる校則づくりを目指すことに。

1学期の終業式。全校生徒の前で「校則を見直すために、みんなも考えて意見をあげてほしい」と呼びかけるとともに、アンケートも実施。523枚の貴重な意見の束がメンバーの元に集まった―

全校生徒の約9割が「校則に不満がある」

523枚のアンケート

2005年に足利清風高校が創立されて初となる、校則についての全校アンケート。523の回答が集まった。

“校則は厳しすぎる、みんなもそう思っているだろう”・・・・・・ぼんやりした思いが、ついに客観的なデータになる。みんなのめり込むように分析作業に入っていった。

その結果がこれだ。

全校アンケートをもとに筆者が作成

「校則をどう思うか」という質問。

実に89%の生徒が「不満がある・とても不満がある」と回答した。

学年別では、「不満がある・とても不満がある」と答えたのは、

1年生:86%、2年生:91%、3年生:90%と、どの学年も似たような傾向だった。

どの校則が不満か聞くと、「髪型」や「服装」のルールが多く挙げられた。

■スマートフォンの使用方法(登校したらスマホは回収され、職員室に保管される)

■アルバイト(原則禁止で、やむを得ない事情があれば届け出を提出)

■下着の色の規定(白かベージュ)

などのルールへの不満も目立った。

「髪型・服装」のルールについては、さらに細かく調査した。

■「前髪は眉毛にかかる程度まで」という長さの規定

■「お団子」や「ツーブロック」など髪型の禁止

■「ジャージ」や「セーター」での登下校禁止

などのルールに多くの声が寄せられた。

自由記述からは、校則に対する生徒たちのさまざまな思いも見えてきた。

あまりにも制限がありすぎて刑務所みたいだと感じる

生徒手帳に書かれているルールと先生の言っていることが違うときがある

コンプレックスを隠したいのに隠すことが許されていない校則が、逆に生徒を苦しめているのではないか

なぜ校則があるか、理由をちゃんと教えてもらえれば納得できる

来年入学する清風生に楽しい学校生活を送ってもらうために見直してほしい

自分だけの不満というよりは、ほかの生徒や将来の生徒を思っての声が少なくなかった。

“自動販売機の購入制限”のルールは、生徒の健康に影響する?

中でもメンバーが気になったのが「自動販売機の購入制限は、生徒の健康に関わる」という意見だ。

体育のあとに水筒のお茶がなくなるので、いつでも自販機を使えるようにしてほしいという意見が多かったです

今の時期だと確かに暑い日があって、水分をとらないで体調を悪くする人がいるなら、そういうのもありかなと思います

校内に設置されている自動販売機。

登校時・昼休み・放課後は利用可能だが、授業と授業の間の休憩時間は購入禁止となっている。かつて、自販機で飲み物を買っていたことを理由に、授業に遅刻する生徒が相次いだため設けられたルールだった。

どの意見も切実だが、生徒の健康に関わることはすぐに見直せないか。メンバーは、まだまだ残暑が厳しい2学期の始業式までの改正を目指して動き出すことにした。

先生たちも納得できる“改正提案”を書こう!

8月。生徒たちは夏休み中の補習授業後に集まり、校則改正の提案書を作ることにした。

この活動を“コーディネーター”としてお手伝いしている私は、ふだん仕事で番組の企画書を書くことが多くある。微力ながら、生徒たちの提案が通る支えになりたい。大切にしてほしいポイントをいくつかあげさせてもらった。

◯提案する「背景」を示す

◯客観的なデータと、集めた「生の声」で説得力をもたせる

◯先生たちが懸念する校則改正の「デメリット」も書き、対応策を示す

◯理屈だけでなく、提案者の「熱意」をことばに込める

右:オンラインで活動に参加した筆者

提案の「背景」はすでに明白だ。暑さが厳しい夏、飲み物をいつでも購入できる環境を整え、熱中症のリスクを減らすことだ。

生徒たちは、より説得力のある情報を求め保健室から話を聞いた。すると・・・

■熱中症のような症状で保健室に来たのは1学期で27名(うち6月の体育祭で10名)

■3名は救急搬送された

というデータを得ることができた。

(イメージ)

先生たちが懸念するのは、この校則ができたきっかけである“授業への遅刻”。その対策として、2つの案を書くことにした。

■休み時間のうち、なるべく早く購入を済ませ授業に遅刻しないよう周知する

■1週間の試行期間を設け、もし授業に遅刻する人が多く出たら、再検討する

そして、最後に生徒たちの思いを添えた。

「校則について、先生と生徒が対立するのではなく、対等に話し合って考えていくことができればと思っています。今回の提案を通じて、生徒・先生ともに笑顔でいられる、もっと過ごしやすい学校にできたらと思います」

できあがった文書は、ルールメイキング委員会担当の小瀧智美先生に託され、職員会議にかけられることになった。

文書を確認する小瀧教諭。この日の活動には一切、口を挟まなかった

ついに校則改正をやり遂げた!

夏休みがあけた2学期の初日。

活動部屋にやってきた生徒たちは、“提案がどうなったか伝えられるに違いない”と、やや緊張した面持ちで席に着いていた。

小瀧先生から結果が告げられる。

職員会議で提案を説明しました。


結果は、◯(採択)です!

みんな大盛り上がりで喜ぶはずだ・・・・・・

と思いきや、特に声をあげることもなく、一同静かに拍手して祝った。でも、その表情には1つのことをやり遂げた達成感がにじんでいた。

実はこの校則見直しには、ルールメイキング委員会を担当する先生たちの思いもあった。

「生徒の健康に関わる問題なら、教員が主体となってすぐに見直すべきではないか?」

教員たちの間ではそんな議論もあった。

しかし最後は「生徒の発意を大切にして、生徒が主体となって見直しを実現させ、成功体験を持ってほしい」という思いを優先して生徒たちの活動を見守り続けた。

「もし自分たちで校則を変えられたら、生徒にとって“校則は変えられるんだ”と思える。それで何の問題も起きなければ、先生にとっても“校則を見直しても大丈夫だろう”と思える。その経験が、学校には必要なんだと思います」

翌朝。ルールメイキング委員会のメンバーは、朝のホームルームの時間を借りて校内放送を行った。

自動販売機の購入制限の校則が撤廃されたこと。この状況を維持するには、授業に遅刻しないという当たり前のルールを守っていく必要があることを、生徒のことばで伝えた。

そして、自動販売機に貼り出されていた注意書きが取り外された。

ルールは目に見えないものだが、このときばかりは“変化”を実感するものだ。

おわりに

ついに1つ、校則見直しを実現した生徒たち。

次なる目標は、生徒から多くの意見が寄せられた「髪型」や「服装」などのルールの見直しだ。新入生が入学してくる4月までの実現を目指して動き出すことになる。

「変えて、つなげろ」

ルールメイキング委員会が掲げたスローガンを実現するための日々は続く。

この記事の執筆者

報道局 社会番組部 ディレクター
藤田 盛資

2011年入局、金沢局と首都圏局を経て現職。
「教員の働き方」や「校則改革」など学校現場を取材。

みんなのコメント(1件)

感想
ヒカキンとフォートナイト大好き
男性
2024年6月15日
ほとんど校則がない高校にいる身として、非合理的な校則が残り続けているのはどうしてなのか疑問に思っていましたが、この記事を見て納得しました。
校則の改正を生徒が主体となって行う経験は、普段学校に対して受動的な姿勢で学校生活を送る生徒にとっては貴重で有意義なものになると思います。
今よりより良いものにみんなで話し合いながら様々な懸念を想定して、システムを作っていくという論理的・合理的な思考判断の能力であったり協調を行うためのお互いの関係性を作ったり、その過程で得られるものは社会に出て必要な能力ですし、清風高校が行ったこの取り組みは、今の教育に相応しいものでそれこそ推進して行われるべきことなんじゃないかと思います。

担当 藤田 盛資の
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