
AEDの使い方 迷わないためのポイントを解説
突然の心停止を起こして倒れた人を救うことができる医療機器「AED」。
各地で普及が進んでいますが、いざあなたが使う場面になったとき、迷わず使うことはできそうでしょうか。
そもそも使い方は?
息があるようにみえたら、電気ショックはどうすれば?
服を脱がせるのに抵抗を感じる場面では?
迷いやすいポイントを整理し解説します。

群馬大学医学部、大阪大学医学部医学研究科・生態統合医学(救急医学)博士課程修了。
2022年より現職。日本AED財団・専務理事。
“電気ショックが1分遅れると救命率は10%減少”

はじめに、知ってほしいデータがあります。
グラフは、心停止となってから電気ショックまでの時間と救命率を示したもの。
AEDによる電気ショックが1分遅れるたびに、救命率が10%低下するというデータです。
AEDによる救命は一刻を争います。迷っている時間はないため、直面しがちな疑問を事前に理解しておくことが大切です。
迷いポイント① そもそも、どう使えば良いの?
AEDの存在は知っているけど使い方が分からない…講習を受けたことはあるけど忘れてしまった…と思う方は少なくないと思います。
そんな方に覚えて頂きたいのは「まず、電源を入れよう!」ということ。

電源を入れると機械の音声が流れはじめます。フタを開けると電源が入るタイプもあります。
「意識・呼吸を確認してください。胸を裸にしてAEDのフタから四角い袋を取り出してください…」といったふうに、何をすればいいか機械が教えてくれます。
またAEDの装着を考える場面では、すでに119 番通報をしているはずです。そうすれば、消防署の職員が電話越しに指示してくれます。
迷いポイント② 息をしているように見えるときは?
倒れた直後には、「死戦期呼吸」という、“しゃくりあげるようなゆっくりとした不規則な呼吸”が見られることがありますが、これは心停止のサインです。

判断が難しいときは、AEDのパッドを装着しても大丈夫。電気ショックをしてよいか、機械が判断してくれます。「心電図を調べています……電気ショックが必要です/不要です」などの音声が流れます。
また、胸骨圧迫(心臓マッサージ)も行ってください。心臓が止まっていない人に胸骨圧迫を実施しても、問題ありません。胸骨圧迫をいやがる動作がみられたら、中止してください。
迷いポイント③ 服は脱がさないといけない?
AEDのパッドは素肌に貼る必要がありますが、正しい位置にパッドを貼り付けることができれば下着を外す必要はなく、パッドの上から服やタオルなどをかけても問題なく動作します。

ある調査では、救急隊が到着する前にAEDのパッドが装着されたか男女で比較したところ、女性が大幅に低かったという結果に。可能な範囲で配慮しつつも電気ショックを遅らせないことが大切です。
迷いポイント④ 小さな子どもに使ってもいい?
大丈夫です。
多くのAED には切り替えスイッチがついていて、「未就学児用/小学生~大人用」と書かれた2つのモードがあります。未就学児用のモードがないときは「小学生~大人用」で使用しても構いません。
ただ、上記の表記は最新のモデルで、以前発売されていたモデルは「小児/成人」などと表記されています。この場合、小学生(6歳)以上は「成人」となるため、覚えておくと便利です。

迷いポイント⑤ そういえば、身近にAEDはどこにある?
ここまでAEDを使う場面をイメージしてみてきましたが、そもそも、今あなたがいる場所でAEDが必要になったら、一番近いAEDはどこにあるか分かりますか?一分一秒を争うため、もしもに備えて身近にあるAEDの場所を覚えておくのが大切です。
子どもが訪れる場所別に、代表的な設置場所をみていくと…
① 学校:玄関や昇降口、職員室など

② 駅:改札近く

③ ショッピングモール:案内窓口

また、知らない場所でAEDを探す際に便利なアプリもあります。
日本AED財団が制作した「救命サポーター team ASUKA」には、地図上でどこにAEDがあるか、みつけることができます。
目の前のAEDがまだ登録されていなかったときは、スマートフォンから登録することもできます。
アプリの名前の「ASUKA」は、2011年、さいたま市の小学校で駅伝の練習中に心肺停止となり、AEDが使われることなく亡くなった桐田明日香さんの名前から名付けたものです。

おわりに
代表的な“迷うポイント”をみてきました。
いざというときを想像してみると、さまざまなハードルがありそうだと感じたかもしれません。一方で冒頭お伝えしたとおり、AEDによる電気ショックは1分遅れるたびに、救命率は10%下がります。
救急隊の到着を待っている時間はありません。その場に居合わせたあなたが、一歩踏み出して救命に加わることが何よりも大切です。
日本は世界的にもAEDが普及している国。この貴重な資源を生かして、1人でも多くの人、そして周りの大切な人を守ることにつなげていきましょう。
<動画でも詳しく>
①AED 身近にある場所は?
②AED 迷わないポイント