
生徒に配慮するための“地毛届” でも実態は…
くせ毛や髪の色などの特徴を学校に届け出る“地毛届”。生まれつきの個性なのに行き過ぎた指導をしてしまわないようにするために導入する学校があります。
しかし、愛知県教育委員会が(1月)、届け出の表現の中に人権に配慮が欠けているものもあるとして、全校に届け出内容の見直しを指導することを決めました。実態はどうなっているのか、取材しました。
(NHK名古屋放送局 藤谷萌絵記者)

4分の1で届け出
まず、どれだけの学校で“地毛届”の届け出を実施しているのか。NHK名古屋放送局は、愛知県に情報公開請求を行い、全日制の県立高校147校の校則を調べました。
その結果、多くの高校で髪の毛を染めたり、パーマをかけたりすることを禁止していて、全体の4分の1にあたる38校で、誤って頭髪の指導をしないようにという理由で くせ毛や髪の色が黒くない生徒に地毛の特徴を書類で届け出る決まりがあることがわかりました。
議論になってきた「頭髪指導」
染髪に関しては「生徒が規律ある生活を送るため」として脱色やパーマを禁止する学校は、これまでも多くありました。しかし、生まれつき髪の色が明るかったり、くせ毛だったりする生徒もいるため、「頭髪指導」のあり方を見直す動きも出ていました。

きっかけは、2017年、大阪で起きた裁判です。府立高校の女子生徒が「生まれつきの髪が茶色いのに黒く染めるよう強要され不登校になった」として損害賠償を求め、多くの学校で校則の見直しの動きが活発になりました。
“黒髪の直毛”は普通?
それでも今も愛知県では、4分の1の学校で頭髪に関する校則がありました。県教育委員会が問題視したのは、その届け出に記載されている表現。いったいどう書いてあったのか、中身を調べてみました。すると「黒色でなく、薄い」や「普通」か「天然パーマ」かを選ばせるなど「黒髪の直毛」を標準とするような文言がある高校がありました。

県教育委員会は外国人など多様なルーツを持つ子どもや、髪の毛にコンプレックスを抱える子どもなどへの配慮が欠ける表現もあるとして(1月)、すべての高校に対し地毛の届け出について、人権に配慮する内容に改めるよう指導することを決めました。 県教育委員会は、「頭髪に関する校則は合理的な範囲で定められていると考えているが 地毛の届け出の内容や運用が人権に配慮したものとなるよう見直しを指導して参ります」とコメントしています。
愛知県は東京に次いで全国で2番目に多い外国人が暮らしています。さまざまなルーツを持った子どもたちも増えるなか、地毛届だけでなく、頭髪をめぐる指導そのものを見直す時期に来ていると感じます。