
【評論家・宇野常寛さん】 インフォデミックと陰謀論
ネット社会への鋭い批評で知られる評論家の宇野常寛さん。新型コロナウイルスに関する情報が爆発的に広がり、インフォデミックと呼ばれる状況が起きる中、宇野さんが特に問題視しているのがいわゆる“陰謀論”についてです。
(フェイク・バスターズ「新型コロナ・情報爆発に立ち向かう」取材班)
ネットの世界でまことしやかにささやかれる“陰謀論”
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宇野 常寛さん(評論家)
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例えば「新型ウイルスは中国の生物兵器だ」といった議論がSNSを中心に流れていて、それが排外主義やナショナリズムに利用されているのを、頻繁に目にします。こうした“陰謀論”がなぜ支持されるのかというと、それが心を安定させてくれる、ある種の“薬”になっているからだと思います。
「世の中には隠されている現実がある。それを見つければ、直面している不透明な状況に突破口が見つかるはずー」こうした考え方を持っていると、陰謀論を信じてしまいがちです。
「不安」が情報氾濫を助長
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宇野 常寛さん(評論家)
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新型コロナウイルスをめぐるインフォデミックを見ていると、我々は『不安と付き合っていく技術』が足りていないと感じます。いまはトライ&エラーを繰り返して、探り探り進めていかなければいけない状況なのに、わからないことに耐えられず、とりあえず安心できる情報を求めてしまう心理が、本来不必要な情報の氾濫を生んでしまっているように感じています。
情報への向き合い方で 社会に“分断”も
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宇野 常寛さん(評論家)
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僕が恐れているのは、世の中が『自分から情報を取りに行き、それを批判的に検証できる』人たちと『情報を一方的に受け取り、消費する』人たちに分かれてしまうことです。それによって生じる社会の断裂は、実はパンデミックよりも恐ろしいのではないかと思っています。
僕らひとりひとりが、不安だからといって安直に情報に接し、陰謀論に逃げたりしないよう、気をつけなくてはいけないと思います。
2020年5月5日放送 フェイク・バスターズ「新型コロナ・情報爆発に立ち向かう」