
「震災デマに惑わされるな」 小木曽健さんが教える3つのポイント
大手IT企業で情報教育部門の責任者を務める小木曽健さん。ITリテラシーの専門家として、学校や企業などで年間300回以上の講演を行ってきました。小木曽さんがもっとも危機感を持っているのが、地震などの災害時に出回る「震災デマ」です。
惑わされないための3つのポイントについて、小木曽さんが寄稿してくれました。
「震災デマは怖くない」

2011年の東日本大震災の頃から、少しずつ見かけるようになった「震災デマ」。最近では大きな災害が起きると、必ずと言ってよいほど、フェイク情報が投稿されますが、震災デマは「明らかなウソ・間違い」の代表選手です。
2016年の熊本地震では「動物園からライオンが逃げた!」という震災デマが拡散しました。実は震災デマって、手順を踏んで確認すれば、すぐにフェイクを見破れるんですよ。
その①:科学的にあり得ない
「明日、大地震が発生するらしい」
「今回の地震は●●の陰謀」
言うまでもなく、地震の発生を、事前に正確に予知できる人、意図的に地震を引き起こせる人は、地球上にいません。
冷静に考えれば、すぐに分かるレベルの話ですが、災害時には冷静さを失いがち。こういったフェイク情報には、当たり前の科学的知識で冷静に対処して下さい。
慌てて拡散させると、あなたが恥をかくのはもちろん、多くの人に迷惑をかけることになります。
その②:情報源が曖昧、その後の続報がない
「友人から連絡あり。●●駅で電車が転覆したらしい」
「●●地区は今夜から断水。自衛隊から聞きました」
こうした書き込みは、一見、情報源が明確のように見え「あの人にも教えてあげよう」という親切心から拡散したくなります。しかし、「●●から聞いた」「現場に居合わせた人からの伝聞」は必ずしも正確な情報源とはいえません。
そもそも大きな事故や重要な情報には、運営会社や行政からのアナウンスが必ず存在しますから、それらの「情報源」が書かれていなければ高確率でフェイク情報。
たとえ現場に居合わせた一般の人からの情報のほうが早くても、そのすぐ後に、正式な発表がされるはずです。いつまで待っても「正式発表」がされないものは、やはり高確率でフェイク情報です。
その③:画像付き
「●●スーパーが燃えてる!」(デパート火災の画像)
「動物園から動物が逃げたぞ!」(動物が逃げ出している画像)
私たちは、なぜか「画像」が添えられているだけで、その情報を信じてしまいがちです。だから、「それっぽい画像が添えられたフェイク情報」は相当たちが悪いのです。だって信用させる為、拡散させる為に、わざわざそれっぽいニセ画像を添付しているんですよ。
もし拡散して大きな問題になったとき、「悪気はなかった」なんて言い訳は通用しないでしょう。熊本地震の「ライオンが逃げた!」というフェイク情報にも、ライオンが町中を歩く写真が添えられていました。
でも安心してください。悪質な「画像フェイク」は、最も白黒つけやすいフェイク情報でもあります。この手の画像フェイクで使われているのは、たいていネット上から適当に拾ってきたもの。だったらその逆の作業をすれば良いのです。
ちょっと怪しい、と感じた投稿に画像が添付されていたら、その画像を検索エンジンで「画像検索」してみて下さい。すぐに元ネタとなった「全く無関係の画像」が見つかるでしょう。無関係の画像が添付された情報なんて、100%フェイクに決まっています。だから白黒つけやすいんです。
熊本地震の「ライオンが逃げた!」という投稿でも、「南アフリカの街中で撮影された映画のロケ風景」を勝手に使っていました。
震災時に出回る様々なフェイク情報には、慌てず落ち着いて、この①②③チェックで対処して下さい。卑劣なフェイク情報に負けてはいけません。

震災デマは、極めて違法性が高く、しかも多くの人命にかかわる深刻なフェイク情報です。そのせいで、必要のない「問合せ対応」や「安全確認」に費やされる稼働が発生し、消防や救急などの緊急対応に支障が出る可能性もあるからです。
また、そのデマを単に「リツイート」「転載・転送」しただけでも、場合によっては責任を問われることがあります。
情報リテラシーとは「読解力」・「記述力」
そもそもリテラシーとは「読解力」「記述力」という意味。情報リテラシーは、情報の本質を理解し、その情報を適切に使うことができる能力と言えるでしょう。フェイク情報と戦うためには、この「情報リテラシー」が必要なのです。