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新型コロナ“後遺症”と向き合う 女子高生からのメッセージ

「もう夢は諦めました」

1年あまり取材を続けるうちに、心の内を話してくれるようになった10代の女性、さやかさん(仮名)。新型コロナの“後遺症”に苦しみ、通っていた高校から転校を余儀なくされました。
それでも、後遺症の症状と向き合い、新たな目標に向かって歩み始めました。
「自分と同じように苦しんでいる多くの人たちに向けて-」
さやかさんから寄せられたメッセージをお伝えします。

NHKスペシャル「新型コロナ病棟 いのちを見つめた900日」

10月1日(土) 22:00~22:50 放送 [総合]
※NHKプラスで見逃し配信を10月8日までご覧いただけます

新型コロナ“後遺症”に苦しむ患者たち

私たちが2020年4月から長期取材を続けている聖マリアンナ医科大学病院(神奈川県川崎市)では、去年1月から同病院総合診療科が中心となり、新型コロナウイルス感染症の後遺症外来を設けています。ことし7月までに受診した患者は600名以上。そのほとんどがコロナの軽症者で、中には1年以上にわたって後遺症に苦しんでいる方もいます。症状は、倦怠感、嗅覚味覚異常、呼吸困難、不安、頭痛、脱毛、胸痛、動悸などに渡り、患者は20代から50代が最も多く、全体の8割に及びます。

高校に通っていた10代の女子生徒、さやかさん(仮名)は、後遺症と診断されるまでの3ヶ月間、原因不明の倦怠感、めまい、そして立ち上がっただけで脈が異常に高くなる症状に悩み続けていました。後遺症外来で治療を続けたものの、この春、スポーツ推薦で入学した高校からの転校を余儀なくされました。

8月に後遺症外来での診察を終え、さやかさんは今、新たな目標を見つけ歩き出していると言います。彼女は、どのように後遺症と向き合い、一歩前に歩みを進めることができるようになったのか。
「自分と同じように苦しんでいる人たちに向けて」、私たちにメッセージを寄せてくれました。

「新型コロナ後遺症を乗り越えて」

後遺症外来に通院していた頃のさやかさん(仮名)

新型コロナウイルスの後遺症と思われる様々な症状に悩んだ15カ月間、8月の診察を最後に後遺症外来を卒業することができ、病院の先生方はじめ、緩和ケア、看護師の皆様、学校の先生、友人、家族、支えてくれた全ての人々に感謝の気持ちを伝えたいです。

いくつもの病院で診てもらった中で、最初に後遺症ではないか、と聖マリアンナ医科大学(以下、聖マリ)のコロナ後遺症外来への紹介状を書いて下さったクリニックの先生にもとても感謝しています。聖マリでは、初診から時間をかけて話を聞いてくれて、詳細な検査と適切な薬の処方、日常生活を送る上での生活指導等、本当に親身にアドバイスして下さいました。検査結果が思わしくない時も、焦らずゆっくりじっくり治していきましょう、大丈夫、といつも声をかけてくれて、こうした声かけやアドバイスを頂くたびに、「うん、きっと大丈夫」と思え、心に希望を持って治療に向き合ってこれたと感じています。

後遺症外来では様々な検査を受けた

「自分自身を責め続けた日々」

私がコロナに感染してから、後遺症だと診断がつくまで、約3カ月かかりました。診断がつかない間はとても不安で、頑張ろうと言われても何をどう頑張れば良いのかわからず、今、自分がすべきことは何なのか、どうして思うように動けないのか、と毎日自分自身を責めながら過ごしていました。
自分の身体に異常が起きていることはわかるのに、この症状をどう周りの人に言ったら伝わるのか。理解してほしいのに理解してもらえない苦しさ。これは私が一番悩んだことです。
最初に両親に自分の症状を話した時も、高校に入学したばかりの時期だったので、「もう少し学校生活に慣れてきたら体調もきっとよくなるよ」と受け流されてしまいました。今思うと、両親も初めてのことで、今まで明朗快活だった私の変わりようを信じられなかったんだろう、信じたくなかったのだろうと想像することができます。でもそのころの私は、両親にも理解してもらえないのかなと心を閉ざしてしまいました。一番近くで見守ってくれている家族にさえ気持ちを伝えることができなくなり、何もできない自分は存在価値が無いと思うようになり、自分自身を見失っていた、そんな3カ月間でした。

症状を信じてもらえている?と疑心暗鬼にも

スポーツ推薦で部活に打ち込んでいたさやかさん

後遺症だと診断がついた時は、病名がわかって心底ホッとしました。

薬を飲み始めて症状が格段に良くなって学校には通えるようになりましたが、頭痛や、立って運動すると脈が安定せずひどく疲れる症状が続きました。
私は本当に部活動や体育の授業に復帰できるのか、友達は今の自分を受け入れてくれるだろうか、この症状はあとどれくらい経てば治るのか、元の自分に戻れるだろうか、と色々な感情が出てきました。
この当時、私は先のことを考えすぎてその時の自分としっかり向き合うことができていなかったように思います。両親も診断がついて治療していけるとわかった後はとても安心してくれて、私の話をそのまま受け止めてくれるようになりました。あとから、「あの時は信じてあげられなくてごめんね」と泣いて話してくれ、それからは「家族には頼ってもいいかな」と思えるようになりました。

打ち込んだバレーボールはクローゼットの中に

私はその後、全国大会に出ることを目標に希望と覚悟を持って入学した憧れの高校から、通信制の高校に転校しました。

思い通りに動けず悩むうちに、スポーツ科や部活動での目標が見つけられなくなってしまい、やるべきことができていないことに罪悪感を感じ、その気持ちを払拭(ふっしょく)することができませんでした。
学校のクラスの友人や部活動の先生方は、できることを焦らずゆっくり、と寄り添って下さっていたし、部活の先輩や同級生もずっと励ましてくれていました。今考えると、自分自身の中で「同じようにコロナにかかってもみんな後遺症もなく回復している。だからこそ回復できない自分をどう思うのだろう?私が訴える症状を信じてもらえるのだろうか?」と疑心暗鬼になって、どんな励ましの言葉も素直に受け止めることが出来なくなっていたように感じます。
どういう理由であれ入学当初の志を途中で諦めた自分はかっこ悪く、一緒に全国を目指そうと誘ってくださった先生方にも、励まし見守ってくれた友人にも、申し訳ないと思う気持ちをずっと持っています。体調不良で体育や部活動は見学という毎日を重ねるうち、スポーツの楽しさを感じることが出来なくなり、スポーツ活動をする自信を失ってしまいました。
転校という重い決断をしたことは、間違っていなかったのだろうか?もう少し頑張れば違う道があっただろうか?と思い悩む時間が続きました。

新たな環境で、今を大切に

新たな高校ではパソコンでの授業が中心に

転校して5カ月。今の学校ではパソコンで授業をすることがほとんど。まわりの友達もパソコンが得意な子が多く、特にプログラミングでは友達のレベルの高さに圧倒されています。パソコンで音楽創作をしたり、動画編集の高い技術を仕事にしたりしている友達もいます。学校は、カリキュラムも進路指導も全てシステムが整っていてすごいなと思うことも多いです。
体を動かすことはほとんどない学校生活ですが、新しい出会いや発見もたくさんあり、とても楽しく登校できています。

ゆっくりではありますが、やるべきことができるようになったことで自信も取り戻しつつあると感じています。また、この1年の経験をしたことで興味を持つようになった事柄もあり、進路の方向性も少しずつ見えてきたように思います。健康で目標に向かって学べている今この時間を大切にしたいと思っています。

少しずつ運動も再開した

後遺症を乗り越えた今だから思うことは、ひとりで悩みを抱え込み、解決しようとすることが何よりも自分を追い詰める、そして自分のまわりの人をも苦しめるということです。
私は学校でも親身に話を聞いてくれる先生がいたことや、緩和ケアの看護師の方に自分が一番つらい時に色々な悩みを聞いて頂いて、少しずつ自分を取り戻すことができました。話を打ち明けて誰かに頼るということは苦しい時こそ重要だなと改めて感じます。

後遺症に苦しんだこの1年は、正直、つらく悔しいことが多かったです。だからこそ、この先どんなにつらいことがあっても乗り越えていこうと強く思えます。そして、この経験は今後の私にとって大きな糧になる。そう信じて、まわりの人への感謝の気持ちを忘れず、前を向いていこうと思います。

「取材後記 ~増え続ける後遺症患者 いま、私たちは~」

聖マリアンナ医科大学病院の後遺症外来は予約が1ヶ月先まで埋まるほど受診希望者が後を絶ちません。

さやかさんと同様に学校を休まざるを得なくなった方、後遺症だと診断がつかないために「自分の症状はなんだろうか」と悩み、感染した自分を責め続けている方も、大勢いるのではないでしょうか。
「ひとりで悩みを抱え込み、解決しようとすることが何よりも自分を追い詰める。そして自分の周りの人をも苦しめる」と体験を綴(つづ)ってくれた、さやかさん。彼女のように、時には周囲に「助け」を求めることも大事なことではないでしょうか。

症状が重くなくても後遺症で長く苦しみ悩み続けている方は大勢います。
今一度、自分たちの行動を見直すことも必要だと、さやかさんからのメッセージを読み感じました。

NHKスペシャル「新型コロナ病棟 いのちを見つめた900日」

10月1日(土) 22:00~22:50 放送 [総合]
※NHKプラスで見逃し配信を10月8日までご覧いただけます

この記事の執筆者

報道局 社会番組部 チーフディレクター
松井 大倫

1993年入局。2020年4月から聖マリアンナ医科大学病院コロナ重症者病棟の取材を続けている。

みんなのコメント(7件)

悩み
シン
60代 男性
2023年6月28日
62歳ですが、同じような症状で検査してますが、結果が出ません!
体験談
ゆ。
20代 女性
2023年2月7日
職場でのコロナ感染後、めまいと吐き気でまともに働くことが出来なくなりました。周囲に同じような症状を抱える人はいない中、ここに辿り着いて1人ではないんだ、少しずつでも良くなるんだと希望が持てました。ありがとう。
悩み
ゆえ
30代 女性
2022年12月12日
娘が今まったく同じ状況で、先日コロナ後遺症の診断となりました。薬をのんで、よくなったと記事にありましたが何の薬か教えていただきたくコメントしました。頭痛、めまい、吐き気、耳鳴り、寝込んで起き上がることができずにいます。
どうか教えてください。よろしくお願いします。
悩み
まめぴよ
40代 その他
2022年10月19日
さやかさんの記事を読んで少し自分と似ているなと思い安心しました。
コロナ陽性から26日間寝たきりで、呼吸が苦しくて内科でも異常なしと言われ、精神科に行くように言われました。

今は安定剤とうつの薬を毎日飲んでます。朝ごはんも夜ごはんも子供たちに作れず、朝の見送りもできません。後遺症外来に問い合わせたら、1ヶ月たたないと予約がとれないと言われ、寝て過ごしています。

同じ経験をした人の話が聞けて良かったです。ありがとうございます。
悩み
ららら
50代 女性
2022年9月16日
若い方の後遺症も大変辛いものですが、家族を支える働く世代が、後遺症により会社を休職や退社に追い込まれるのは、どうしようもない気持ちになります。治るのかどうなのかという前の見えない気持ちを抱えて不安でいっぱいです。
体験談
ぎんぎつね
50代 男性
2022年9月15日
私は2020年3月に罹患しました。
現在も、息切れ、貧血、倦怠感、冷え、健忘症に悩まされています。
職場の健康診断では異常が見つからないため、なすすべもなく一人もがいています
感想
ずー
20代 男性
2022年9月14日
私は現在、コロナ後遺症を患い闘病しています。昔から法律家になるのが夢でしたが、将来それが叶うのかとても不安です。しかし、彼女の記事を読み非常に勇気づけられ、希望を持つ事ができました。
今後、社会全体が長期コロナ後遺症患者をサポートしてくださる事を切に願っています。