
『ヤングケアラー』から届いた切実な声
先日『ヤングケアラー』についてのご意見や体験談を募集したところ、70件以上の声が寄せられました。ご協力いただき誠にありがとうございました。「悩みをひとりで抱え込み孤独だった」という方や、「子ども時代に介護をした影響が大人になっても続いている」という方など、実際にヤングケアラーを経験した方々から切実な声が数多く届きました。
実態をつかむのが難しいとされるヤングケアラー。アンケートから見えてきた当事者の実情とその胸の内をご紹介します。
(ヤングケアラー取材班)
生活の中心は「家族」 介護・世話に追われる毎日

精神疾患の母親と5歳の弟と同居しています。母親が精神的に不安定になると、料理も洗濯もできなくなるので、カップ麺をコンビニで買ってきて弟と食べたり、フードバンクでレトルトの食材をもらってしのいでいます。
(10代 女性)
学校から家に帰ると、統合失調症の母親が包丁を持って私に向けてきて、そのときにはどうすればいいのかわかりませんでした。母のふるまいを誰に相談すればいいかもわかりませんでした。
(10代 女性)
アンケートの中でも多かったのは30歳以上の女性からの声でした。
介護や世話をしていた相手を聞いたところ「親」と答えた方が最多でした。
親が精神的な病気を抱えていてその介護や世話に追われたり、きょうだいの面倒を見ていたという方も数多くいました。

介護・世話の内容について多かったのが
「料理や洗濯などの家事」「声がけや見守りなどのきづかい」「ほかのきょうだいの世話」
介護の頻度を訪ねたところ「毎日」と答えた人が6割以上にのぼりました。
介護や世話などが生活の中心となり「自分に使える時間やお金がない」という声も聞かれました。
治療費や薬代がかさんで生活費が足りませんでした。長時間のアルバイトはできないのでどうにもならない時は援助交際で稼いでいました。 親が精神的につらそうな時は夜中でも起きて話し相手をしていたので、学校の授業中はほとんど寝ていました。
(女性 20代)
親に精神疾患があり、幼稚園時代から兄弟たちのオムツ替えなど世話をし、ストレスで暴れている親から兄弟を守りました。親が家出を繰り返し、親戚に連絡したり近所を探し回ったりしました。
(女性 30代)
中学2年の時に母が脳硬塞で倒れてしまい、一人っ子の私が背負うことになりました。同居していた祖母も高校1年の時に亡くなり、生計を立てられなくなりました。 高校を中退して、アルバイト生活になりました。
(女性 40代以上)
精神が不安定な母を一人にできず、高校時代はほとんど友達と遊びに行けませんでした。 大学時代は友達が遊びや旅行に誘ってくれても、断ってばかりで、バイトにも行けませんでした。
(女性 30代)
アルコール依存の母親の安否を常に気遣いながらの生活でした。母親は家の中でも転んで骨折を繰り返していました。家はごみ屋敷状態で、自分がゴミ出しや、簡単なごはんをつくっていました。
(女性 30代)
母が統合失調症で、家事に加え、母の服薬管理と見守り、親族に対する病気の説明や説得、小学生だった妹と弟のケアをしていました。15歳にしてたくさんの役割を背負っていました。
(女性 30代)
闘病中の母とそれを看病する高齢の父との中で暮らしていました。闘病中の母の看護を父と交代に行い、中学に毎日通うことがなかなかできませんでした。出席日数的にも経済的にも進学をあきらめました。
(女性 40代以上)
ライブに行くのが趣味ですが、行けないことも多くストレスが溜まります。 友人と食事へ行く時も、いつ父から電話がかかってくるかひやひやしながらなので楽しめません。人生の全てが終わった感じ。 これ以上、きついことって人生であるのかと。 人生への影響どころか親の介護をするために生まれてきたのかと、生きてる意味すらわからなくなります。
(女性 20代)
ヤングケアラー その後も続く影響
ヤングケアラーの経験が「その後の自分に影響をおよぼしている」という方も数多くいました。子どものころ誰にも頼れなかったり、家族のことを人に話せなかったなどの経験から、大人になっても「自分に自信が持てない」といった声も聞かれました。
『自分は幸せになってはいけないのだ』とずっと本気で思い込んでいました。家族の世話をまぬがれるのは自分の体調や精神状態がよくないときだったので、少しでも家族から解放されるように、無意識のうちに自分を追い込んでいくようになりました。仕事にのめりこんでほとんど睡眠時間をとらないとか、母親に抵抗したいのに自分もアルコールに溺れるようになったり。自暴自棄で自分を大切にしない日々が続きました。
(30代 女性)
自尊心が育っていないため、人からほんの少しのマイナス評価があったと知ると、自分の存在はまったく意味がないと感じ、すぐに死にたくなってしまいます。 こんなふうにして人生を全うできるのか、不安です。
(母が精神的な病を抱えていた 30代 女性)
母のメンタルケアを担い、妹たちの世話を担い、私だけが重篤な精神障害になりました。そのために働くこともできなくなりました。
(40代以上 女性)
自分で頑張るしかない状況だったので、人を頼る、信じることがなかなかできなくなりました。
(40代以上 女性)
ヤングケアラーの経験をしている人とつながることができない孤独感、普通の社会では理解してくれる人がいない孤独感、そんな家庭環境で育ったがゆえに何も希望を持てません。また、何かを頑張っても何も幸せとは思えないし、喜びも得られません。普通ではないという劣等感や、母親や父親の愛情を得られたという経験がないことから、ぽっかりと空いた穴みたいなものがほかでは埋まらない空虚感などが一生続いています。
(20代 男性)
家族が楽しいところとか安心するところではなく、頑張らなくてはいけないところという感覚や意識があります。現在家庭があってもほかの人の思う家庭とは違うのだろうな、と比較してしまい、そんな時にどうしてもつらい気持ちになってしまいます。
(40代以上 女性)
アンケートに答えて下さったみなさん、あらためてご協力に感謝いたします。
本当にありがとうございました。
みなさんからの貴重な声は2月11日放送の「おはよう日本」でもご紹介させていただきます。
番組ではヤングケアラーの当事者や経験者の方々による『オンライン座談会』も行います。ぜひご覧いただき、感想をお寄せ下さい。
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