File.07 警察庁長官狙撃事件
演出ノート
演出ノート
(ドラマ 脚本・演出 黒崎博)
未解決事件という言葉には不思議な響きがあります。
犯罪者が罰せられることなく世の中に存在する、ということの不気味さ。
「悪人は捕まえられる」という単純な社会の決まりが実行されない不可解さ。
そして何より、被害を受けられた方の無念。
さまざまな思いを想起させる言葉です。
File.07の被害者は警察庁長官(当時)。
国家の治安組織のトップが狙われたテロであることを考えると、
日本の国民すべてに凶弾が向けられたのだと言えるかもしれません。
しかし事件は未解決のままです。みずから真犯人を名乗る男が存在するにもかかわらず…。

事件の裏側を取材していくうちに見えてきたのは、
真実は一つのはずなのに、実際は「真実は、見る角度によって違う」ということです。
ドラマの主人公である一人の刑事が見つめた真実。
容疑者が語る真実。
警察組織が語る真実。
それぞれが同じことを語っているようで、全く違う風景がひろがっていました。
激しく戸惑いながら、そのさまざまな風景をこそドラマ編では描こうと思いました。

國村隼さん、イッセー尾形さんたち第一線の俳優陣が、現実と仮想の境界を越えて演じた濃密な90分です。
ぜひご覧ください。
ドラマ 脚本・演出 黒崎博