萩原聖人さんからのコメント

萩原さん写真

あの事件を知ったのはテレビのニュースでした。
あれだけ大勢の人が倒れている映像を見たことがなかったので、リアリティがありませんでした。
それだけ衝撃的でした。
それからしばらくは、都内をロケバスで移動する度に警察の検問で何度も止められたのを覚えています。
今回NHKの記者役を演ずるにあたり、様々な資料を読み込みましたが、とても複雑な気持ちになりました。特に、生きる目的を見失ってオウムに入信していく若者たちのことを思いました。
なぜ彼らは一線を越えたのか・・・?
記者として元信者を取材する役ですから、その心の奥を少しでも理解せねばとオウムの立場に寄り添って考えている自分をふと感じてしまうこともありました。
事件は絶対に許せません。それでも色々な思いに左右される・・・そしてたくさんの人が亡くなり、未だ後遺症に苦しむ多くの方々がいらっしゃるというつらい現実を思い返す・・・そんな緊張の連続でした。
取材対象である元信者との距離感に悩みながら、ジャーナリストとして葛藤し続ける記者の役に魅力は感じましたが、演ずることはとても難しい仕事でした。
「集団」「組織」の怖さも考えさせられました。
深層にある欲望が、集団になってエスカレートして暴走し始め、組織化されていく中、個々の善悪は思考停止状態になっていく・・・色々な意味で自分も気をつけねばと思いました。
是非見ていただいて、簡単に答えの出ない「今」を考えるヒントになれば嬉しく思います。