file.02 オウム真理教
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事件の年表
ドラマ撮影記

ドラマ撮影記

監督 池添博、撮影を振り返って

このシリーズの醍醐味は、
NHK報道局の長期に渡る取材に基づいて、
日本中を驚愕させ誰もが深く印象に残った重大事件を
新たな切り口でその真相に迫るというところにある。
時間がたった今だからこそ、
その当時には語ることができなかった事実が
明らかにされるというのも、
このシリーズならではではないだろうか。

ドラマ部分は、
NHK報道局の記者(報道ディレクター)が
取材で集めてきた情報(事件当時の事実や新たに分かった事実)を基に
事件関係者の中から誰の目線でこの事件を語るのか(主人公を決める)、
そして新事実を織り込ませて事件全体のストーリーを
脚本家の田子明弘さんを中心に構成していく。

今回は、NHK記者たちの粘りの取材で発掘された
得難い主人公を見つけることができた。
『オウム真理教』の古参信者である。
『オウム神仙の会』(オウム真理教の前身)からの信者で、
「松本サリン地下鉄サリン事件」後に脱会した
今まであまり知られていない人物だ。

前回の『グリコ森永事件』では
事件記者の目線でドラマ部分を演出したが、
『オウム真理教事件』では、この元信者を主人公として、
彼女の目線でオウム真理教という集団が
なぜ凶悪な犯罪を次々起こしていくことになったのか
を内部から事実に基づき忠実に描いていくことになった。
そこで苦労したのが、普通のドラマ演出とは違い、
主人公の感情を通して『オウム真理教』の犯罪を
正当化するように受け取られてはいけないという事だった。
「松本サリン事件」「地下鉄サリン事件」など、
一連の『オウム真理教』事件で被害にあわれた方々や
その家族の方々に十分配慮しなければならないという思いだった。
さらにドラマ部分の撮影開始直前に、
平田信の出頭という出来事があり、
日々NHK報道局よりもたらされる新たに判明する事実を
どのような形でドラマに織り込んでいくのか。
撮影中は、毎日緊張と苦悩の連続であった。

そのような撮影状況の中で、
俳優陣のすばらしさに本当に助けられた。
NHK記者役を演じてくれた萩原聖人さんの感情を内に秘めながら
事実だけを表現しようとした抑えた演技、
古参信者役という非常に難しい役どころを演じてくれた冨樫真さん羽場裕一さん、
そして麻原本人かと見間違えるほどの怪演をしてくれた古川悦史さんなど、
この場を借りて出演者全員に感謝を申し上げます。

5年D組 池添 博