もどる→

アニメ職人たちの凄技アニメ職人たちの凄技

【第63回】
今回、スポットを当てるのは、
山中澪/川口恵里(ブリュッケ)

プロフィール

左 / 演出:山中澪
愛媛県生まれ。神戸大学発達科学部人間表現学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。アニメーション関係で活動中。

右 / イラスト:川口恵里(ブリュッケ)
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。2016年より株式会社ブリュッケに所属。アニメーション作家/イラストレーターとして、TV番組、企業CM、音楽PV、ワークショップ等、幅広く手掛ける。線画台を用いた、空間と光を活かした画づくりが得意。

山中澪さんに「アーサー・C・クラーク スペシャル」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

アーサー・C・クラークは、何年か前に『幼年期の終わり』(私の読んだ本では『地球幼年期の終わり』)を読んだきりでした。当時「もっと早く読んでいればよかった。他の話も読みたい」と思ったことを覚えているので、こうしてその機会に巡り会えたことが嬉しいです。今回特にこだわったと思うのは、「実在しないもののビジュアルを描くこと」です。「こだわった」というより、「こうやってこだわるべきなのだと肝に銘じた」ポイントといった方が適当かも知れません。
『都市と星』のダイアスパーや群体生物、『楽園の泉』の宇宙エレベーターやスパイダー……。そういった実在しないものについて、まず私が自分が読み取った情報を作画担当の川口さんに伝え、絵にしてもらい、それを番組スタッフの方々に確認していただき、修正を重ねる、という風にしてビジュアルを作り上げていきました。
そのうちのひとつ、宇宙エレベーターの完成間近の図を、私は「超繊維のテープ4本」が「塔(エレベーターのレールの走る部分)」の縦四辺それぞれから伸びている様子として想像していました。しかし、解説の瀬名先生から返ってきたのは、「辺ではなく、面の中心から伸びているのでは」というご指摘でした。
小説本文を読み返してみると、なるほど、はっきりそうとは書かれてはいないのですが、他の情報をつなぎ合わせると「面から」で間違いないと感じるのです。
自分の付け焼き刃では間違った絵を見せてしまうこともあるのだ、とヒヤリとしたと同時に、こうやって丁寧に読み解けば実在しないものも具体的に描けるようになるのか、と晴れやかな気持ちにもなりました。
今回はそのようなパートがたくさんあります。
基本の構造さえ読み取れば、細かい部分は読者の想像に任されているところでもあります。ぜひ、本を読んで、頭の中の想像と比べながら見ていただけたらと思います。

川口恵里さんに「アーサー・C・クラーク スペシャル」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

今回、未来のSF世界を描く上でとても苦戦しました。本に書かれていることを、できるだけ再現しよう取り掛かったのですが、絵を描いていく上で必要となる描写は、意外と少なめで、かなり自分の想像に偏った形になったかもしれません。
初めて見る子供などアルヴィンの視点やモーガンが目にしたものを せめて自分の感覚から海外旅行で訪れる知らない土地で初めて見て経験するような感動を込めて 描けるようにと思って描いてみました。

ページ先頭へ
Topへ