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アニメ職人たちの凄技アニメ職人たちの凄技

【第51回】
今回、スポットを当てるのは、
山中澪/川口恵里(ブリュッケ)

プロフィール

写真左-演出:山中澪
愛媛県生まれ。神戸大学発達科学部人間表現学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。アニメーション関係で活動中。「100分 de 名著」への参加は2019年2月『大衆の反逆』に次いで2回目。

写真右-イラスト:川口恵里(ブリュッケ)
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。2016年より株式会社ブリュッケに所属。アニメーション作家/イラストレーターとして、TV番組、企業CM、音楽PV、ワークショップ等、幅広く手掛ける。線画台を用いた、空間と光を活かした画づくりが得意。

山中澪さんに「自省録」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

『自省録』を読んだとき、感銘や親近感、尊敬の念を覚えると同時に、「これを上の立場の人から押し付けられたらどうしよう」という恐ろしさも感じました。番組内でも、自ずから考えてこそ意味のあることだと言われていますが、アニメーションも、考えを押し付けるのではなく考えるきっかけのひとつになるようにと思って作りました。
アニメーションはアウレリウスの生い立ちを描く他、人間の心の動きを説明するパートに用いられています。後者では「ひとに嫌な思いをさせる人物」が登場する場面もありますが、この「嫌な人物」を、絵として区別しないようにと考えました。どの人物も、年齢性別を特に割り当てず、記号的に描くようにお願いしました。人間誰しも間違い得るというのがアウレリウスの考え方なら、間違った人間を他者として描きたくなかったからです。そしてできあがった川口さんデザインのキャラクターたちは生き生きと愛らしいので、「嫌な人間」含めて親しみやすく感じていただけるのではないかと思います。
気に入っているのは、第4回のアニメーションのひとつに、それまでに出てきたキャラクターを一気にたくさん出せたところです。
『自省録』はまず、アウレリウスが自分に関わったひとを羅列することから始まります。それを読んで、人生のエンドクレジットだ…!とぐっときました。
文脈としては違うのですが、そういう大集合の場面を作れて嬉しかったです。

川口恵里(ブリュッケ)さんに「自省録」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

名著はいままで数回関わらせて頂きましたが、写真が残っていない著者というのは今回がはじめてでした。石像しか残っていないアウレリウスの人間味をどう描いたら?というのが今回の最大の悩みでした。
しかし、絶望に陥った顔途方に暮れている顔、王座に溺れるにやけ顏というおそらく本来のアウレリウスにはありえない表情を演出上描けるというのもアニメの醍醐味だと感じられました。

そして、一番アウレリウスらしい姿を描けたと感じたのは。前も後ろも見えない暗闇を歩くシーンです。歩く姿はアニメーションの中で何度も出てきますが、歩くという行為はローマ時代も現代も変わらない人間の生きている姿として見えるのではないでしょうか。
また、もくもくと歩き続ける姿はたんたんと自省録を書く姿に重なるとも思います。

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