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アニメ職人たちの凄技アニメ職人たちの凄技

【第38回】
今回、スポットを当てるのは、
ケシュ#203

プロフィール

仲井陽(1979年、石川県生まれ)と仲井希代子(1982年、東京都生まれ)による映像制作ユニット。早稲田大学卒業後、演劇活動を経て2005年に結成。
NHK Eテレ『グレーテルのかまど』などの番組でアニメーションを手がける。
手描きと切り絵を合わせたようなタッチで、アクションから叙情まで物語性の高い演出を得意とする。100分de名著のアニメを番組立ち上げより担当。
仲井希代子が絵を描き、それを仲井陽がPCで動かすというスタイルで制作し、ともに演出、画コンテを手がける。
またテレビドラマの脚本執筆や、連作短編演劇『タヒノトシーケンス』を手がけるなど、活動は多岐に渡る。
オリジナルアニメーション『FLOAT TALK』はドイツやオランダ、韓国、セルビアなど、数々の国際アニメーション映画祭においてオフィシャルセレクションとして上映された。

ケシュ#203さんに「河合隼雄スペシャル」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

100分de名著のアニメを作るとき、物語が題材の場合は世界観や感情表現を優先的に考えるのですが、思想や哲学など学問の場合はその力学というか、機構が可視化されることを最重要視します。概念をアニメに落とし込むうえで、いかにシンプルかつダイレクトに届けられるかということに重きをおいて、画コンテ作業や、キャラクター設計、背景素材づくりをしています。

今回の「河合隼雄スペシャル」では、人間の心の動きをわかりやすく描くことが重要でした。たとえば第一回の心理療法士と相談者のシーンでは、相談者が心理療法士と共にWHY?(どうしてなのか?)の道を歩きつつ、答えを見つけていくといった形で、なるべく1枚の画で状況と説明が伝わるようにしています。
また自我とコンプレックスの場面では、無意識を海に例え、意識の玉座を海から突き出た氷山の一角のように見せています。無意識を海に例えるのは「ユング心理学入門」にも出てくるのですが、心の中の把握できない混沌とした広大な領域を海とし、意識がコントロールできる領域は限られた範囲に過ぎないというふうに捉えました。その混沌の海=無意識から擬人化されたコンプレックスがぬっと現れ、自我を弄んでその玉座を奪い取る様子など、メタファーをコミカルに表現しています。

そしてキャラクター造形について今回は、「相談者」や「心理学者」など現代の人間、「意識」や「無意識」などの精神をキャラクターにしたもの、「日本の昔話」の登場人物、「神話」の神々、「海外の寓話」の登場人物など、多種多様な世界観の人物が登場します。しかし世界観をまたぐ複数の人物たちに統一感を持たせるためには、ひとつの手法でパッケージングしなくてはなりません。そのため、いままでの絵柄から趣向を変え、シンプルな線画を選択し、丸みを帯びた抽象性の高い造形にしています。
人の心の深奥を捉えようとした河合隼雄の視点が少しでも伝わるようなアニメになっていたら幸いです。

ケシュ#203の凄技にご注目ください!

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