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アニメ職人たちの凄技アニメ職人たちの凄技

【第34回】
今回、スポットを当てるのは、
高橋昴也

プロフィール

高橋昂也 1985年 愛知県生まれ。
東京藝術大学大学院デザイン科修了。
アニメーション作家・イラストレーター。フリーランス。
テレビ、博物館、ゲームなどの分野で活動する傍ら、自主作品の制作も行なう。

高橋昴也さんに「松本清張スぺシャル(第三回・第四回)」のアニメ制作でこだわったポイントをお聞きしました。

松本清張は社会派ミステリー作家として多くの有名な作品を残していますが、今回担当させていただいたのは、かなりコアな2作品だと思います。
膨大な取材と時代観察に立脚した、フィクションとノンフィクションを行き来する清張ワールドをアニメーションにしていくのはとても挑戦的でした。
硬派で具象に徹した清張作品に見合った映像表現とはどんなものか、探っていきました。

「昭和史発掘」はノンフィクション作品なので、写実性の高い映像を目指しました。
また、登場するのは実在の人物なので、彼らの内面が映像で規定されるべきではないと感じ、人物の表情が見えない描き方に統一しました。
代わりに舞台の空間描写に、ただならない空気を語らせようとしました。暗く凍てついた東京の風景に、現場の緊張感を感じさせたかったです。

「神々の乱心」は、清張が「昭和史発掘」で追求したテーマも盛り込んだ、壮大なエンターテインメント作品です。呪術、阿片、陰謀論、三種の神器といった伝奇的、オカルト的な要素も、松本清張の手にかかれば凄まじい説得力を持ち始めます。
驚いたのが、現実を土台にしていながら、呪力の実在というSF的な構想を取り入れていたことでした。
清張も相当楽しんで書いていたのだろうと思い、こちらのアニメーションは、劇画調のタッチも取り入れて、いかにも怪しげな雰囲気を押し出して娯楽性を持たせようとしました。
ただし作品に通底するドキュメンタリー性を損なわないように、説得力のある画作りにも配慮しました。

娯楽性の高いフィクションでありながら、それが逆に現実を暴いていったり、新しい現実の見方を教えてくれたりする清張作品。もっと清張を読みたくなりました。

高橋昴也の凄技にご注目ください!

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