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もっと「菜根譚」もっと「菜根譚」

今回のキー・フレーズ

文は拙を以って進み、道は拙を以って成る。
一の拙の字に無限の意味有り。

【現代語訳】
文を作る修行は拙を守ることで進歩し、道のための修行は拙を守ることで成就する。 この拙の字に限りない意味が含まれる。
洪自誠『菜根譚』 後集94より

番組第四回でも紹介する言葉ですが、番組では全てを言い尽くせなかったので、あらためて「もっと菜根譚」で解説させていただきます。

この言葉は、短い一説ですが、私の心に一番ズキンときた言葉です。

「拙」は「稚拙」「拙劣」「拙速」などの言葉からもわかる通り、「つたないこと」を意味します。どう考えてもマイナスなこの言葉を「菜根譚」は見事にプラスの言葉に転化します。そこに「無限の意味」があるという。果たしてどういうことなのか?

番組内では、一つの解釈例を示しています。それは、主に、今回講師を担当した湯浅先生の解釈。そして、この言葉は、「無限の意味有り」とある通り、受け取る人によってさまざまに響く言葉ではないかと思います。

私自身に「拙」の深い意味を気づかせてくれたのは、野球評論家の野村克也さんがある著書で記していた解釈です。野村さんが率いた野球チームは、優れてはいたが、ある意味、「拙い」選手が多かったといいます。いわば、「不器用な選手」。それでも勝つことができた。それはなぜか?

その理由は、不器用な人間は自らの「拙さ」をきちんと自覚しており、だからこそその欠点を克服するために正しい努力をすることができるから、なのだそうです。「巧み」な人は得てしてそれができない。そこで成長がとまってしまう。だから「巧み」を目指す必要はない。不器用でも真っ直ぐ道を進んでいけばよい、と。

私はここに「野村再生工場」の真髄をみた気がしました。そして自分の身にあてて考えてみました。私自身の中にも「拙」はたくさんある。ですが、「不器用で真っ直ぐ」な方が大きな力を発揮することがあることに思い至りました。

時間をかけて練り上げた「巧み」な質問ができたインタビューは必ずしもうまくいかないことが多い。相手から本当の気持ちを引き出せたインタビューは、あとで振り返ると、自分がいいたいことがなかなかいえなくて、でもなんとか相手に伝えたくて、もどかしくてとちりながら愚直な気持ちをぶつけたインタビューでした。言葉は稚拙だったけども、その「真っ直ぐな拙」に相手が何か感じてくれたのでしょう。自分の中では、最高のインタビューができた瞬間でした。

「拙」におごってはいけないけれど、本当に相手に伝わるのは、不器用だけど真っ直ぐな「拙」なのだということを、この言葉は思い出させてくれました。

さて、番組では、湯浅邦弘先生、伊集院光さん、武内陶子アナウンサーにとっての「拙」が出てきます。実は、時間の関係でどうしてもカットせざるを得なかった素敵な話も幾つかあります。本当に「拙」の意味は無限です。

そのあたりは、「プロデューサーAのこぼれ話」でも触れたいと思います。お楽しみに!

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