おもわく。

「遠野物語」

ザシキワラシやカッパ、神隠し、姥捨てなど、岩手県遠野に伝わる伝承を記録した柳田国男の「遠野物語」。6月の「100分de名著」では、この名著を取り上げます。
農商務省の官僚だった柳田は、農政調査のため全国の農村をまわるうちに、地方の民俗に深い関心を抱くようになりました。そして明治41年、柳田は、遠野出身で早稲田の学生だった佐々木喜善と出会います。佐々木は祖父から聞いた昔話を克明に記憶していました。その不思議な物語に魅了された柳田は、何度も聞き書きを行います。そして現地を訪ね、推敲を重ねたのちに「遠野物語」を出版しました。「遠野物語」は、知識人の間で評判を呼び、日本民俗学の発展に大きな役割を果たすことになります。
神への畏怖と感謝、祖霊への思いなど、日本人の死生観や自然観が凝縮された「遠野物語」。そこには、津波で妻を失った男の物語など、今の東北にも通じる題材も含まれています。番組では、「遠野物語」を読み解くことで、日本人の心の原点を探っていきます。

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第1回 民話の里・遠野

【放送時間】
2014年6月4日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2014年6月11日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2014年6月11日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
石井正己(東京学芸大学教授)

遠野は盆地にある城下町で、内陸と海岸をつなぐ交通の要衝だった。そのため様々な地域の物語が集まった。その中には、田植えを手伝う神の話もあれば、子殺しの話など怖い話もある。日本人の暮らしを、負の部分も含めて全て記録しているのが遠野物語の特徴なのだ。第1回では、カッパの物語などをひもときながら、遠野物語の全体像を解説する。

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第2回 神とつながる者たち

【放送時間】
2014年6月11日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2014年6月18日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2014年6月18日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
石井正己(東京学芸大学教授)

家に幸せをもたらし、いなくなると不幸をもたらすのがザシキワラシだ。ザシキワラシが家を出たため、一家が毒キノコを食べてしまう物語では、ひとりの少女だけが助かった。昔、子どもは、神から特殊な能力を授けられているとされていた。子どもだけが助かったのは、そうしたことを暗示していると思われる。第2回では、遠野の神々と、神につながる人々を描く。

名著、げすとこらむ。ゲスト講師:石井正己「古くて新しい物語の世界へ」
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第3回 生と死 魂の行方

【放送時間】
2014年6月18日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2014年6月25日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2014年6月25日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
石井正己(東京学芸大学教授)

昔の遠野では、生と死の境界は曖昧で、行ったり来たり出来るものだった。臨死体験の話などには、そうした死生観が凝縮されている。また遠野物語には、明治時代の大津波の話も収められている。そこでは、生きのこった男が亡くなったはずの妻に出会う。男は妻に何を語ったのか?第3回では、日常の中にあった死と、鎮魂への思いを見つめる。

もっと「遠野物語」
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第4回 自然との共生

【放送時間】
2014年6月25日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2014年7月2日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2014年7月2日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
石井正己(東京学芸大学教授)

オオカミの子を殺したため、怒った母オオカミが村の馬を殺すようになった物語では、不必要な命は奪うべきではないという人々の心情がうかがえる。自然界には、自然界ならではの掟があるのだ。こうした考えは、宮沢賢治の作品にも大きな影響を与えたという。第4回では、オオカミと人間との戦い、人を化かすキツネ、飢饉の前兆となる鳥などの物語から、自然と共に生きる人々を描く。

NHKテレビテキスト「100分 de 名著」はこちら
○NHKテレビテキスト「100分 de 名著」
「遠野物語」2014年6月
2014年 5月24日発売
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こぼれ話。

「遠野物語」こぼれ話

プロデューサーのNです。実は私、6月13日をもって異動いたしました。今後はEテレの福祉関係の番組を担当します。
「100分de名著」はもともと、2010年9月に放送した特集番組「1週間de資本論」が出発点になっています。この特番に改良を加え、2011年度から定時番組化して、現在の形になりました。
最初に番組の企画を提案したのは先輩のプロデューサーで、当時の私はそのお手伝いをしているような感じでした。しかし定時番組化されてほどなく、大半のシリーズが自分の担当となり、やがて全ての回を担当することになり、試行錯誤をしながら毎回の制作を行ってきました。
最も気を使ったのは、本好きの人だけが趣味で見るような番組にはしない、それと同時に、分かりやすいが、示唆に富んだ深みのあるものを目指すということでした。狙いが欲張っている分、構成が大変でしたが、おかげさまで好評をいただき、今ではEテレの顔のひとつになりました。3年半の間、本当にありがとうございました。
今後の予定ですが、7月には「ファーブル昆虫記」、8月には「アンネの日記」を放送します。今後も、「100分de名著」をどうかよろしく御願い申しあげます。

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