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もっと『風姿花伝』

花と、面白きと、めづらしきと、
これ三つは、同じ心なり。

されば、時分の花をまことの花と知る心が、
真実の花になほ遠ざかる心なり。
ただ、人ごとに、この時分の花に迷ひて、
やがて、花の失するをも知らず。

「麒麟も老いては駑馬に劣る」と申す事あり。
さりながら、まことに得たらん。
能者ならば、物数はみなみな失せて、
善悪見どころは少しとも、花は残るべし。

時の間にも、男時・女時とてあるべし。
いかにすれども、能にも、よき時あれば、
必ず、また、悪き事またあるべし。

秘する花を知る事。秘すれば花なり、
秘せずば花なるべからずとなり。

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