おもわく。

トルストイ『戦争と平和』

ロシアの文豪・トルストイの長編小説「戦争と平和」。ロシアの人々とナポレオンとの戦争を描いた長編小説ですが、実はこの小説、自分探しを続ける若者たちの成長の物語でもあります。そして戦争という激動の中で、生きがいとは何か、幸せとは何かを学んでいきます。

「戦争と平和」の登場人物の数は何と559人。ストーリーが複雑に入りくんでおり、極めて難解ですが、最も大きな役割を担っているのは3人です。そのひとり、ピエール・ベズーホフは貴族の庶子。お人好しで不器用ですが、父の急死により、莫大な遺産を相続します。しかし急に大富豪になってしまったピエールは、何のために自分が生きているのか、その意味がわからずにいます。もうひとりの主人公はアンドレイという男です。ピエールの数少ない親友で、勇敢な軍人ですが、名誉欲が非常に強いタイプです。自分の名を世界にとどろかすことこそが生きがいだと思っていたましたが、挫折し、目標を見失ってしまいます。このふたりの男が、天真爛漫な少女、ナターシャに恋をします。そして3人は、ナポレオンとの戦争に巻き込まれていきますが、それぞれに成長を遂げ、生と死、そして愛の意味を知ることになります。

番組では、「戦争と平和」を通して、豊かな人生とは何なのか、そして生きる喜びとは何なのかを探り、私たちに残したトルストイのメッセージをひもといていきます。

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第1回 人生に迷う若者たち

【放送時間】
2013年6月5日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2013年6月12日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2013年6月12日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
川端香男里(ロシア文学者 東京大学名誉教授)

 人間は自己愛が最大に達成できる環境こそが幸せだと思いがちだ。しかし本当にそうだろうか?大富豪となったピエールは、自分に手に入らないものはないと思う。しかしなぜか物足りない。得たものが多ければ多いほど、幸せになれるとは限らなかったのだ。一方アンドレイは、戦地で活躍出来ず、捕虜となってしまう。人生は思い通りになるものではない。つまり自己愛を追求してもうまくいくとは限らない。結局アンドレイに残ったのは不満だけだった。第1回では、人生に迷う若者たちの姿を描きながら、物語の全体像を明らかにする。

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第2回 生きる喜びとは何か

【放送時間】
2013年6月12日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2013年6月19日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2013年6月19日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
川端香男里(ロシア文学者 東京大学名誉教授)

絶望に打ちひしがれていたアンドレイは、自分の殻に閉じこもり、孤独な日々を送っていた。ところが天真爛漫な少女ナターシャとの出会いや、自然の美しさに触れるうちに、考えが変わっていった。アンドレイは気づく。人間と人間、あるいは人間と自然、互いに影響し合う中で、生きる力は生まれるのだと。元気をとり戻したアンドレイは、ナターシャとの婚約を決意することになる。第2回では、アンドレイとナターシャの出会いから、生きる喜びとは何かを探る。

名著、げすとこらむ。ゲスト講師:姜 尚中「「心」を書こうとした作家」
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第3回 心がひとつになる時

【放送時間】
2013年6月19日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2013年6月26日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2013年6月26日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
川端香男里(ロシア文学者 東京大学名誉教授)

婚約したアンドレイだが、国外で過ごすことを余儀なくされてしまった。離れて暮らす中で、ふたりにすれ違いが生じ、婚約の話は破棄同然となる。傷心のアンドレイはナポレオンのロシア侵攻を食い止めるため、再び戦地へと赴く。一方ナターシャは、負傷兵の手助けをするようになった。他人のためにつくすことの大切さを知ったからだ。さらにナターシャは、重傷を負ったアンドレイと出会う。過去を許し、愛し合うふたり。第3回では、危機の中、心をひとつにすることによって、力を取り戻していく人間の姿を追う。

もっと「戦争と平和」
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第4回 本当の幸福を知る

【放送時間】
2013年6月26日(水)午後11:00~11:25/Eテレ(教育)
【再放送】
2013年7月3日(水)午前5:30~5:55/Eテレ(教育)
2013年7月3日(水)午後0:25~0:50/Eテレ(教育)
※放送時間は変更される場合があります
【ゲスト講師】
川端香男里(ロシア文学者 東京大学名誉教授)

看病の甲斐なくアンドレイは死んでしまったが、残された者たちは必死に生きていく。ピエールはフランス軍の捕虜となり、貧しい農民兵カラターエフと出会う。そしてカラターエフの生き方を見て、これまでの自分の不幸は有り余る自由から生じていたことを知る。苦しい行軍の果てに解放され、ナターシャと再会したピエールは、以前とは全く違う人間になっていた。そしてふたりは結ばれ、家庭を築くことになる。第4回では、物語の最後をしめくくるとともに、本当の幸福について考える。

NHKテレビテキスト「100分 de 名著」はこちら
○NHKテレビテキスト「100分 de 名著」
トルストイ『戦争と平和』2013年6月
2013年5月25日発売
定価550円(本体524円)
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こぼれ話。

「戦争と平和」こぼれ話

プロデューサーのNです。ロシア文学といえば、ドストエフスキーの方が日本人にはなじみがあるかもしれませんが、そこをあえてちょっと外して、今回はトルストイに挑んでみました。
「100分de名著」では、自分で企画書を書くのと同時に、15ページくらいの番組のシノプシスを書いて方向性を決めてから、先生と打ち合わせをするようにしています(状況によっては、企画書だけでシノプシスは書かずに先生と打ち合わせをするときもありますが)。
企画書やシノプシスは、プロデューサー業務が終わった深夜などに、取りあげる本と関連書籍を10数冊読みながら、夜なべで作っています。しかし「戦争と平和」は、先の見えにくい会話が長く、登場人物もややこしく、読み終わる頃にはついに熱が出ました。
今回は、取りあげる人物を絞っての紹介にしましたが、番組ではあまりふれなかった人物もたいへん魅力的です。ぜひこの番組を道しるべにして、全巻を読んでみて下さい。

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