スペシャル番組 100分deフェミニズム論

再放送決定!2023年2月5日(日)午前0時(土曜深夜) Eテレ

古今東西の「名著」を、100分で読み解く「100分 de 名著」。そのスペシャル版として「100分 de フェミニズム」を放送します!
今回は、「フェミニズム」がテーマ。
多角的なテーマから名著を読み解くことで、「フェミニズムとは何か」「どんなことを問題にしてきたのか」について考察します。 通常の4回シリーズではなく、100分間連続の放送でお届けします。

予告動画
スタジオには、現代を代表する気鋭の論客が集結!フェミニズムについて示唆を与える名著を、得意分野から紹介、分かりやすくプレゼンします。更に取り上げた名著について、出演者同士で意見を戦わせ、「フェミニズムとは何か」に迫っていきます。
加藤陽子(かとう・ようこ)/歴史学者。東京大学教授。歴史学研究会委員長。<br>
 近代日本の軍事地、外交史を専門とする。『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』で第9回小林秀雄賞を受賞。著書に『戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗』『天皇と軍隊の近代史』『歴史の本棚』など。

<プロフィール>加藤陽子(かとう・ようこ)/歴史学者。東京大学教授。歴史学研究会委員長。
 近代日本の軍事地、外交史を専門とする。『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』で第9回小林秀雄賞を受賞。著書に『戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗』『天皇と軍隊の近代史』『歴史の本棚』など。

上間陽子(うえま・ようこ)/教育学者。琉球大学教育学研究科教授。
沖縄で10代の女性たちの聞き取り調査を続ける。著書に『海をあげる』『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』など。10代のシングルマザーを支援するシェルター「おにわ」共同代表。おにわは、「オリオン奨学財団」の助成金を受け、株式会社アソシアが労務管理を行い、琉大医学部とタイアップしている。

<プロフィール>上間陽子(うえま・ようこ)/教育学者。琉球大学教育学研究科教授。 沖縄で10代の女性たちの聞き取り調査を続ける。著書に『海をあげる』『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』など。10代のシングルマザーを支援するシェルター「おにわ」共同代表。おにわは、「オリオン奨学財団」の助成金を受け、株式会社アソシアが労務管理を行い、琉大医学部とタイアップしている。

鴻巣友季子(こうのす・ゆきこ)/翻訳家・文芸評論家。<br>
マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』ヴァージニア・ウルフ 『灯台へ』エミリー・ブロンテ 『嵐が丘』などの翻訳を手がける。著書に『謎とき『風と共に去りぬ』『文学は予言する』など。

<プロフィール>鴻巣友季子(こうのす・ゆきこ)/翻訳家・文芸評論家。
マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』ヴァージニア・ウルフ 『灯台へ』エミリー・ブロンテ 『嵐が丘』などの翻訳を手がける。著書に『謎とき『風と共に去りぬ』『文学は予言する』など。

上野千鶴子(うえの・ちづこ)/社会学者。専攻は、女性学・ジェンダー研究。東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク (WAN) 理事長。高齢者の介護とケアも研究テーマとしている。『家父長制と資本制 ― マルクス主義フェミニズムの地平』『女ぎらい ニッポンのミソジニー』『おひとりさまの老後』
『在宅ひとり死のススメ』など著書多数。

<プロフィール>上野千鶴子(うえの・ちづこ)/社会学者。専攻は、女性学・ジェンダー研究。東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク (WAN) 理事長。高齢者の介護とケアも研究テーマとしている。『家父長制と資本制 ― マルクス主義フェミニズムの地平』『女ぎらい ニッポンのミソジニー』『おひとりさまの老後』 『在宅ひとり死のススメ』など著書多数。

突然ですが「RBG 最強の85歳」という映画をご存知でしょうか?

性差別と戦い続けた米最高裁判事ルース・ベーダー・ギンズバーグを追ったドキュメンタリー映画です。2人の監督、7人のプロデューサー、撮影監督、作曲家はじめ、制作のリーダーを全て女性が務めたことで話題を呼びました。主要制作陣を女性が占めているからといって、全く偏向は感じませんでした。むしろ、男性の私がみても胸のすくような映画。逆に、全体として、女性たちが舵をとったからこそ、今までにない、視点の深さと面白さがにじみ出ているのではないかとも思いました。私の大好きな映画です。

「この布陣、出演者でやってみてもいいのでは?」と思いいたったのが、今回「100分deフェミニズム」において、女性のみでキャスティングをするという決断をしたきっかけです。迷いがなかったというと嘘になります(事実、最初は男性も混ぜる案を私は主張していたのでした)。もちろんディレクターや他のプロデューサーの意見もあってのことでしたが、最終責任は私にあるので、なぜ全員女性なのかという理由を書いてみたいと思い立ちました。

結論をいうと、「誰もみたことのないことを見せるのがテレビの面白さの一つだ、もっと言えば、テレビの重い使命の一つだ」という私の信念が、最終的にそうさせました。要は、議論やトーク内容に「排除の論理」が働いてなければいい。自分もこんな対話空間を見てみたいと心底思ったし、収録を終えた今、確かな余韻が残っています。ああ、これはしなやかに他者に開かれた空間だったなあ、と。ホームページに掲載された出演者の皆さんの写真を見ていただけたら、その雰囲気の一端は伝わると思います。

私は、人道的にひどかったり悪政がはびこったりといったケースを除外して、「〜すべき」「〜すべきでない」と正義を振りかざして断罪するような所作が「制作の現場」で行われるのが、とても嫌いです。そうした所作は多様性を抑圧をするケースが多い。実験があっていいじゃないか、やってみる前にダメ出ししなくていいじゃないか。断罪が現場をダメにする、というのが三十年以上テレビをやってきての経験値です。だから、今までやっていないことをやってみる、それでわかったことをフィードバックする。……その繰り返しこそがテレビの世界を進化させてきたのですから。

もちろん個人的には、必然性があるならば男性のみの討論番組だってあっていいと思っています。ところが、これまで見てきたところ、多くの場合、口角泡を飛ばして人の意見を聞かない、他者の意見を遮る、反論されてブチ切れる、きちんとした理路で反論せずレッテル貼りだけで相手を断罪する……そんな所作がいかに多いことか。演出的にそういう白熱感を出すという手法も場合によってはありなのかしれませんが、私自身の好みではなく、男性の出演者が多い場合も、そんな形にだけにはならないようにと、これまで心がけてきました。

今回の「100分deフェミニズム」では、相手の意見を丁寧に聞く、それを受けて話をさらに豊かにする、反論が出てもそれをきちんと受け止めて新たな問題点を展開する……といった他者に開かれた空間が確かに現出しています。何よりもまず、そこを見ていただけたらと心から思います。

まずは、内容を見ずに批判したりせず、レッテルや偏見をいったん取り外して、特に、男性たちにこの番組をみてほしいと願ってます。もちろん、女性も含め、どのような性別(性自認)の人にも。今までにない視点がきっと開かれるはず。批判のための批判、レッテル貼り、あげ足とりなどではない、筋道や理路の通った異論なら大歓迎です。何はともあれ、「100分deフェミニズム」とくとご覧あれ。

きっかけは「100分deナショナリズム」(2020年1月放送)を見たことです。
友人のディレクター羽根井信英氏が演出したと聞いて、感銘を受けながら見ました。同時に、ナショナリズムがありなら、フェミニズムでもできるのでは…と発想しました。すぐに担当プロデューサーに連絡して、企画を提案しました。近々には難しいとの返答でしたが、これをきっかけに上野千鶴子さんにご出演いただき、シモーヌ・ド・ボーヴォワールの『老い』をテーマにした「100分de名著」(2021年7月放送)を作ることができました。ボーヴォワールの掲げた「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」(第二の性)をあらためて読み、「やっぱりフェミニズムで番組を作りたい」と強く思いました。

私にとって「フェミニズム」とは、女が男並に強くなり、軍人にもなれて、戦争にも行けることを目指すのではなく、「弱いものが弱いままで、生きていける社会をつくること」だと思っています。弱いものとは、社会のなかの弱者、老人、女性、子供、障害者、性的マイノリティなどを指します。これは2011年に上野千鶴子さんが『生き延びるための思想』という東京大学での最後の講義をされた時に語ったものです。
(この時の講義は収録して、同じタイトルのDVDを制作しました)
フェミニズムというと、女性たちが男性と同じくらい強くなり、権力を持つことを想像される方もいると思いますが、私は「誰にとってもそのままで、居場所を奪われることがなく、無理して強くならなくても安心して生きていける社会」を目指すものだと思っています。でも、そんな簡単で当たり前のことが長い間、実現していなかったんですよね。それにあらがい、なんとか自分たちの居場所を作ろうとした先輩たちがいる。今、自分がテレビや映画を作ったり、会社を運営したりできるようになったのは、闘ってくれた女性たちがいたから。彼女たちが成し遂げたことを伝え、そして、今も続く問題について考えることができたら。それがこの番組に込めた思いです。
なかでも、「性暴力」の問題に時間を割きました。今、まさに語るべきテーマであり、フェミニズムが見える化したものだからです。「取るに足らないもの」とされてきた女性たちの痛みに光を当て、声を上げ、回復の道筋を見つける。長く映像業界で仕事をしてきた身としては、ここ数年告発される性暴力については、本当に心を痛めてきました。性暴力の横行を止めることをせずに、次の世代に渡してはいけない、と強く思っています。

企画段階から上野千鶴子さんに相談し、どうしてもご出演いただきたかった上間陽子さんに連絡をしました。歴史家の加藤陽子さんに参加いただくことで、テーマを重層的にできると考えました。翻訳家の鴻巣友季子さんはプロデューサーからの熱い推薦により実現しました。フェミニズムに強い関心を持ち、トークに笑いを差し込んでくれるバービーさん、アナウンサーとして進行しながらも、自身の言葉で語ってくれた安部みちこさん。テーマを伝えると、朗読を即答で引き受けてくれた安藤玉恵さん。ナレーターの目黒泉さん。現場にはプロフェッショナルな女性たちが集まりました。「フェミニズムで番組を作りたい」という「幼稚なセンチメンタリズム」の先に、非常に内容の濃い100分ができました。私自身、知らなかったこと、心を打たれたことがたくさんありました。どうか、多くの方に届きますように。

100分deフェミニズム 演出担当
山田あかね

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