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ユリナ ノ 目

『武士道』をふりかえって。

寒い日が続いていて、毎日、今か今かと春の訪れがとっても待ち遠しいですね♪

この時期になると毎年、「早く桜が見たいなぁ」と気持ちが先走ってしまいます。

今月は新渡戸稲造の『武士道』を読み解いてきましたが、その中で「桜」について述べられている一節がとても印象的でした。

「わが桜木は、その美の下に刃も毒も隠しておらず、自然が呼ぶ時にいつでも生を捨てる準備ができている。その色は華美ではなく、その香りは淡く、人を飽きさせない。色彩と形状の美しさは、外観に限られる」

『武士道』の中で、新渡戸はヨーロッパ人の好む薔薇の花と日本人の愛でる桜の花を対比させています。

薔薇の花は、甘美の下にとげを隠し、華やかな色彩と濃厚な香りを誇り、生に執着するがごとく、その屍を枝上にさらすのに対し、桜の花は、その美の下に刃も毒も隠さず、色は華美でなく、香りは淡く、そして潔く散る、と言っています。
そして、それはまさに武士道の精神を象徴いている、と。

桜の美しさに対する思いが今も昔も全く変わらないことに感銘を受けます。

そして、毎年私たちは桜の咲くのを楽しみにしていますが、なぜそんなにも桜が待ち遠しいのか、なぜ美しいと思うのか?わざわざ立ち返って考えたりすることはありませんでしたが、私たちが桜に惹かれる気持ちは脈々と日本人の中で受け継がれて来た美徳なのだなぁと考えさせられます。


他にも『武士道』を紐解いていくと、良い面・悪い面は表裏一体ですが、
「名誉心」、「恥」の概念、「忠義」、「世間」など、
今の日本人に繋がるルーツを見ることができてとてもおもしろかったです。


『武士道』はそもそも、新渡戸が彼の米国人の妻や、ベルギー人の学者から日本について度々質問をされたことをきっかけに書かれた本だそうで、日本を外国人に理解してもらうために、1900年に“英国で”発刊された英文の書物でした。

東大の入試面接で教授に「貴君は何をやるつもりです?」と問われ、「海外との架け橋になりたい。」と答えた新渡戸はその言葉通り、海外との架け橋になるべく『武士道』を通して、外国人が抱いていた日本人に対する誤解を解いてくれたのでした。

ゲストでお越し頂いた元国連事務次長・明石さんが収録の時におっしゃっていたように、日本と外国の文化のどちらがいい、というような問題ではなく、互いに違いを理解した上で、それを超えてなにかを共有したり、共感できるようになれたら…。
それは、日本人同士の中でも難しいことかもしれませんが。

昨年の東日本大震災で、改めて、この日本に生まれたことや、日本人として生まれたことについて考えるようになりました。
『武士道』に書かれていることのように、日本人として受け継いで来たものもそうですし、新渡戸が「日本」を外国に対して示そうとした、その思いも私たちが受け継いでいかなきゃいけないのだと感じます。




さて、今回でコラム《ユリナノ目》は連載の最終回となりました!

拙い文章でしたが、読んでくださったみなさん本当にどうもありがとうございました!!
初めて連載させていただくコラムだったのですが、番組を通して感じた事を思ったまま、マイペースに、気ままに、書かせていただきました。


この1年間《100分de名著》を通してみなさんと一緒に名著を学ぶことができて、とっても素敵な時間を過ごさせていただきました。

一見とても難しそうな名著も、読み解いて行くと、必ず今の私たちに通じる変わらないものがあって、「本」は時間も場所も自由に渡ることのできる究極のトラベルマシーンだと改めて実感しました。

堀尾さんや素晴らしい先生方と毎回「一冊の本」に向き合う収録の時間がとても有意義で…実はいつも深夜にまで及んでいた収録ですが、そのまま朝までみんなで語り合いたいくらい(笑)それくらい名著の世界の虜になってしまっていました!

これからも迷いがあった時は、1年間名著を通して出会ってきた先人達の声にまた耳を傾けてみようと思います!


それでは、来月のアンコール放送もどうぞお見逃しなく♪

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