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「耕作放棄地は宝の山!」 西条市 82歳農家のビックリ“農地再生術”

  • 2024年05月27日

朝早くから晩まで、土と向き合う男性。高岡照海さん(82)。
農業法人の代表を務め、愛媛県西条市で、20ヘクタールもの耕作放棄地を、自分らの手で農地によみがえらせてきたといいます。
そんな高岡さんが繰り返し語るのが『耕作放棄地は宝の山!』。
一体どういうことなのか!?高岡さん独自の “農地再生術”を取材しました。

(NHK松山放送局 瀬田萌々子)

買い取り依頼が急増!深刻化する担い手の減少

西条市で、ケールやニンニク、レモンなどを栽培している高岡さん。実は、その全てが元々は耕作放棄地でした。

ピンク色の部分が、現在高岡さんが耕している農地です。荒廃した農地を見つけては、一軒一軒地主を訪ね、賃貸契約という形で耕作面積を増やしてきました。数か所から始まった開墾ですが、畑へと再生される様子が噂となり、依頼主が徐々に増加。「農地を買い取ってほしい」という声まであがり、この20年間、使い勝手の悪い土地も、出来る限り引き受けてきました。時間のかかる農地の再生ですが、近年、このような相談が加速度的に増えているといいます。

「今は80~90歳の方が農業をやっていますが、お子さんが都市へ引っ越して、戻ってこないケースが顕著になりました。今までは、“農地は大切な財産”という考えのもと、頑張って維持してきた方も、体力の限界や固定資産税を払い続ける負担から、今のうちに手放したい、という地主さんが急増しています」

実は全国3番目の広さ 再生が難しい荒廃農地

耕作放棄地の中でも、農地への復元が困難とされる「荒廃農地」。実は愛媛県は全国で3番目に多いことが分かっています。傾斜地や小さな島が多く、効率的に農地を集積するのが難しいことが原因の一つといわれています。

一度荒れ果てた農地を再生させるのは簡単なことではありません。何十年も放置された土地は木が生い茂り、重機を使った伐採が必要に。民間業者に依頼すると、一反で300万円ほどかかることもあると言います。

高岡さんはこう見た!「耕作放棄地は宝の山」

一般農家であれば、耕作放棄地の利用は経営的にリスクもある“問題のある農地”。しかし、高岡さんはこの土地を180度違った視点で評価していました。

「30年以上放置された土地は、農薬や除草剤、化学肥料はいっさい使ってないからきれいな土地やと。土壌改良さえすれば、すばらしい作物ができると直感で分かったから、 “宝の山”に見えた」

地域の農業を守るためには、作物を高い値段で取引し、経営を維持することが大事だと考えていた高岡さん。放棄地の特性を生かし、農薬・化学肥料を使わない有機作物を栽培すれば、将来的に放棄地を再生できると考えたのです。

耕作放棄地再生の切り札は「土づくり」

耕作放棄地を、唯一無二の作物を生み出す農地へと変貌させる。その切り札となるのが、5年間にも及ぶ徹底した土づくりです。

例えば、開墾の際に切り倒した木々はそのまま寝かして肥料に。3年ほどすると、木々が分解され土にかえるといいます。このように、経費をかけて処分していた木々も、朽ちて分解されると、やがて貴重な土として生まれ変わるのです。

さらに、大規模畜産農家と連携し、鶏糞を炭と混ぜ合わせて活用しています。実は、この炭を使ったやり方は、「カーボンファーミング」といい、大気中のCO2(二酸化炭素)を地中に貯留させる効果があるため、気候変動の対策としても高く評価されています。
鶏糞の処理に困る畜産農家にとっても、焼却処理する必要がなくなるため、皆が喜ぶ仕組みができたと高岡さんはいいます。

土づくりのため、最初の5年間は、作物の栽培ができず収入はありません。そんなストイックな土壌改良を継続するために、高岡さんが重視するのが、作物を加工し、付加価値の高い商品として独自に販売することです。自社で加工場や冷蔵施設を持つ高岡さんは、様々な工夫をしていました。

例えば、ケールは遠赤外線を使った独自の技術でサプリメントに加工した商品は、高い評価をうけ、大手百貨店で取引されています。

さらに、無農薬のレモンはハート形に栽培し、皮ごと食べられるように。薄くカットして乾燥や冷凍保存することで、輸送費を抑えたり長期保存ができたりするメリットもあります。

これらの商品は、海外からも注目を集めています。取材をした日にやってきたのは、ニューヨークで高級日本食店を経営する2人。有機栽培の食品が注目されるアメリカで、高岡さんの商品を展開できないかと相談にきました。視察の中では、様々なアイディアが。

ニューヨークで高級日本食店を経営する女性
「乾燥したハートレモンは、ガーニッシュ(カクテルの飾り)としても売れますね。ニューヨークには、一杯6000円するようなおしゃれなカクテル屋さんがあって。お客さんはこういった商品にお金を厭わないです」

国内外で徐々に販路を広げる高岡さん。それを可能にしたのは、生産・販売・加工を一貫した、「6次化産業」に、徹底した土づくりを加えた独自の「7次化」があったからだと言います。これが、農地をよみがえらせる鍵になるといいます。

「自分の作った農作物に、自分で値をつけて売っていかないと、耕作放棄地は再生できません。お客さんに買ってもらう、オンリーワンの商品を作るためには、土づくりからこだわった “7次化”がないと持続していけません」

 

新たな連携で さらなる耕作放棄地の再生を

高岡さんは、事業の規模を拡大し、耕作放棄地をさらに再生させたいと考えています。協力を呼びかけたのは、県内で柑橘の有機栽培を行う農家。お互いの技術をいかし、商品を開発できないか話し合いました。
可能性を見出したのは、柑橘を皮ごとすりつぶしたピューレ。ジュースにすると、作物の半分ほどしか商品に出来ないのに対し、ピューレであれば皮ごと加工でき、生産効率も上がるといいます。新たな販路として、農家からも前向きな声があがりました。

「有機の作物が商品になってニーズが出てくれば素晴らしいことだと思います。農家単体で販路を確立させるのは難しいので、有機農家が連携し、今後も情報共有していきたい」

生産者が一体となった耕作放棄地の再生。1人1人の農家の経営が安定すれば将来的に耕作放棄地を減らし、農地を守っていくことにつながると考えています。見据えるのは、今の10倍以上の面積、およそ300ヘクタールをよみがえらせることです。

「有機栽培や6次産業などの形で、放棄地を再生する方法が確立されてきた。まずは、西条を拠点に、持続可能な農業の成功例をつくることが目標。そのために、県内の有機農家とも連携し、放棄地を再生させるため、一緒に目標もって頑張ろうや!そんな思いです」

ちなみに…収入源はこんなところにも!

採算が取れる経営のあり方を模索する中で、高岡さんが取り入れるのが、農地の上に設置する太陽光パネル。「営農型太陽光発電」(ソーラーシェアリング)と呼ばれ、農業をしながら、電気を売って収入を得ています。農家が、より安定した収入を得る方法として注目されています。このように、安心して就農できる環境を整えることで、今後担い手を増やしていけたらと考えています。

取材を終えて…

とても82歳には見えないバイタリティーをもった高岡さん。生粋の農家でありながら、ビジネスマンとしての才覚を表し、365日休むことなく農地再生に没頭する姿勢にとても刺激をうけました。「みんなが喜ぶ仕事をしなさい」という言葉も忘れられません。
うまくいかないことがあっても、気にしすぎることなく、どうやったら地域が生き生きするか、頭と体を動かして「生きた足跡残すんじゃ!」そう諭してくれる高岡さんの挑戦を、今後も取材し続けたいです。
特集の内容は下記の動画でご覧いただけます。

  • 瀬田萌々子

    瀬田萌々子

    2023年入局。松山赴任ではじめての地方暮らしです。学生時代に海外旅行や留学で学んだことは、地元の人にとにかく会う!と言うこと。愛媛を愛するローカルの皆様からいろんな発見を頂きお伝えできるよう頑張ります!

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