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伊予市 福岡大樹×Yaeが考える 食と農の未来

  • 2024年03月15日

シンガーソングライターのYaeさん。2001年にデビューして以来、国内外で活動を続けています。
母は歌手の加藤登紀子さん。
先日、愛媛県でライブを行った際にある人を訪ねました。

(NHK松山放送局 多田篤司)

対談の様子は動画でもご覧いただけます。

伊予市の農家、福岡大樹さんです。

大樹さんの祖父、正信さんは、戦後、農薬や肥料は使わず、自然の生きる力に委ね作物を育てる「自然農法」というやり方を提唱。その考えを大樹さんが受け継ぎ、持続可能な農業を模索する場として、今も世界から注目を集めています。

福岡大樹さんの祖父 正信さん

歌手のかたわら農業を行い“半農半歌手”として食の問題にも関心が高いYaeさん。日ごろから土と向き合う福岡大樹さんと、食と農の未来について語りあいました。

“半農半歌手”とは?

Yaeさん
「“半農半歌手”という風に私は自分で言っているんですけど、半分農業をやって半分歌手をやっているのか、というと実はそうじゃなくて、半分農業の農の部分が“生きる”というか、“ライフスタイルそのもの”というか。それが分母になってて。だからやっと歌える、みたいな。分子に歌手っていうのがあるような」

大樹さん
「百姓のまた特権的なところがあって、その中で食べていくこと、生きていくことはそれほどハードルが高くなくなるので、そういうゆとりが精神的な部分にも生まれてくるんかなと」

変化していく地球の気候

東京で生まれ育ったYaeさん。
父で、有機農業の普及に尽力した藤本敏夫さんが開いた、千葉県鴨川市の農場「鴨川自然王国」で、20年ほど前から農作業をするようになりました。
近年、強く感じるという気候の変化。大樹さんはどうとらえているか、たずねました。

Yaeさん
「地球沸騰かとも言われて、世界中で。確かに夏の雨が降らない時期がこんなにも続くとか、すごい苦労している、今まで見ない虫が大発生しているとか、そういう心配とか危惧はされていますか?」 

大樹さん
「そうですね。意外と心配はしてないですかね。そこにちゃんと対応できなかったら、百姓としての腕がまだ未熟やったいうところもあるし。恩恵みたいなのも、結構しっかり裏側には隠れとったりもするんで、上手にその辺り“気象、気候は変化するもの”ととらえてしまって、逆に、温暖化が進むんやったら、パパイヤでも植えようか、マンゴーでも植えようかってね、もうそっちに切り替えてしまって」

Yaeさん
「すごい、たくましいですね」

大樹さん
「うまくいくかどうかは、また別の話なんやけど」

食から平和に・・・

災害や戦争が絶えない中、Yaeさんが歌い続けてきたのは、かけがえのない命の重さです。
一方、大樹さんの祖父・正信さんも平和の大切さを訴え、世界の砂漠や紛争地に植物の種を届けてきました。

砂漠や紛争地に植物の種を届けた大樹さんの祖父・正信さん

Yaeさん
「戦争もね、おなかがすくと、どうにもこうにも危機感を感じてしまって、そうせざるを得ないというか。お互いを傷つけ合うとか、そういうことに。おなかが減っているんじゃないかなって、単純に思ったりする。だから、おいしいもので満たされていれば、戦争する気も起きないんじゃないのかなって思ったりもするんですよね」

大樹さん
「明日食べるもの、先に食べるものにゆとりがあれば、もっと平和な世の中につながる。ここまで世の中が進歩してきても、まだ食料難とかいうことが、叫ばれる世の中で・・・・」

“消費者”ではなく“共生者”でありたい

食をとりまく状況を改善するには、どうすればいいのか。
Yaeさんと大樹さんは、生産者と消費者という関係を見直すことが大切だと語りました。

Yaeさん
「“消費者”と“生産者”っていう言葉、私は消費者というのがあんまり好きじゃないなと思っていて、もちろん自分もかつては消費者だったんですけれど、それがちょっと生産者に入った途端に、すごい消費者っていう言葉って不自然だなって。みんなが携わることが、本来できるはずなのにって思ったことがあって・・・」

大樹さん
「そこに、やっぱり分断されたものがあってはいけないですよね。その言い方が本当、冷たい感じがして。作物を食べてもらえる人たちによって、僕らの生活ができよるところがあって、彼らの体を作る、健康を作るというところを、こっちは支えとって。お互いが支えあっている関係性で。ここをもっとお互いが強く感じていけたら。別々の存在ではなくて、そうやって世界全体がつながって、生かされ続ける」 

Yaeさん
「うん、そうか、消費者じゃなくて、“共生者”。そんなような、ちょっと名前を変えるみたいな。“共に支え合える存在”なんだっていう」

食べること=生きること 伝え続けるために

Yaeさん
「なぜ自分の歌を伝えようと思ったのか。何か自分の原点みたいなものが、土にあるということに気づいた。プラスマイナスゼロなんですよ、土って。食べることができないと、人は、生きてはいけないっていうのを、根本忘れないでいきたいなと思うし、それを伝え続けないといけなくて。多くの顔が見えない人たちに、知ってもらうことを、どうやったらできるかっていうのも、もちろんあるし」

大樹さん
「手法としてもっと、緩くて、楽しくて、笑いながら、進んでいける方向性を探していくべきなのかなとも。ちょっと偉そうなところですね。そこを模索したいですね」

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