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伝統か、安全か、秋祭りの華「鉢合わせ」 松山での模索

  • 2023年11月10日

先月、松山市で行われた秋祭り。多くのみこしが市内を練り歩き、街には太鼓の音が響き渡りました。なかでも、呼び物とされたのが、みこしとみこしを勢いよくぶつけ合う「鉢合わせ」です。その勇壮な姿を一目見ようと、毎年多くの市民や観光客が訪れますが、「鉢合わせ」によるけが人もあとを絶ちません。伝統を守りながら、安全をどう確保していくのか。祭りの現場で続く模索を取材しました。

(松山放送局記者 竹野帆香)

伝統の“鉢合わせ”

先月7日の夜明け前。まだ薄暗い中、威勢の良い男たちのかけ声が響き渡ります。
松山市の秋祭りの最終日。
道後地区には7つの地区からみこしが集まり、呼び物の「鉢合わせ」が行われました。

「もてこーい」のかけ声のあと、800キロほどのみこしを勢いよくぶつけ合います。
みこしをぶつけ合う行為は御利益を高めるとされ、江戸時代から続く神事です。

しかし・・・続出するけが人

この「鉢合わせ」によるけが人は毎年あとを絶たず、松山市内では過去に死亡事故も起きています。

道後地区の祭りの責任者、西岡義則さんです。道後地区ではこれまで亡くなる人は出ていないということですが、けが人をゼロにするのは難しいと話します。

西岡総代

「誰1人として自分がけがをするとは思っていないんです。思っていないんですけど、それが起きた時でもしょうがないな、って。日本人ってお祭り大好きですから、もう少々のけがは覚悟でやってます」

救護所

それでも、重症者を出さないために道後地区では救護体制の構築に取り組んでいます。
祭りの会場近くに救護所を設け、医師や看護師らがけが人の治療にあたっていて、さらに、ことしは一部救護体制を見直しました。

インカムで連絡する医師

これまで救護所に待機していた医師を、鉢合わせの現場に配置。
けがの程度をその場で判断したうえで救護所と情報を共有し、スムーズな治療につなげるためです。

救護所の責任者 福井博雅医師

「こういうお祭りの場合、神輿の喧嘩祭りですので、どうしてもけが人って言うのは避けては通れない。けが人をいかに出さないように、あるいは出てもそれを最小限にいかにするか。安全な祭りができるよう少しでもお役に立てれば。何百年と続いてきたことですので、絶えることがないように続けていきたいなと思っています」

祭りの参加者たちからも「鉢合わせ」は祭りの華だという声が相次いでいます。

「ずっと30年以上やってきとるんで、いいもんはいいもんなんやろうけど、こんなん(けが)はしょうがないこと」

「やっぱり伝統行事なんで、先輩たちが作ってきてくれたものを守っていきたいと思っています」

しかし、ことしも市内の別の地区で、重大な事故が起きました。
松山市の城山公園で行われた「鉢合わせ」。担ぎ手として参加していた34歳の男性がみこしの下敷きになったのです。頭を強く打ち、意識不明の重体となりました。事故から1か月がたった今も体が麻痺していて、後遺症が残ってしまう恐れがあるといいます。

涙ながらに語る重体男性の父親

「息子は昔から祭りが好きで、あの日も友達と一緒にみこしを担ぎに行っていました。過去にもみこしで事故が起きていることは知っていましたが、わが子がこんなことになるとは夢にも思っていませんでした。息子と2人で住んでいた家にいるとさみしくて、夜も眠れません。祭りのことを悪く言うつもりはありませんが、もう二度と息子のような事故が起こらないようにちゃんとした対策を組んでもらいたいです」

取材後記

取材を通して、祭りの伝統か安全か、単純に二者択一できる問題ではないと感じました。ただ、伝統や神事を大切にするあまり、大きな事故や、命が犠牲となるような祭りはあってはならないとも感じます。そのためにも、時代にあわせた祭りのあり方を模索する話し合いを、地域で重ねていくことが必要だと思います。愛媛出身の祭り好きの1人として、このお祭りが「みんなが楽しめるお祭り」として次の世代に引き継がれていくことを願いながら、引き続き取材を続けたいと思います。

  • 竹野帆香

    竹野帆香

    2022年入局。新居浜市出身。 主に市政担当。 

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