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香川県女木島 島民も、外の人も 共に支える伝統の祭り

  • 2023年09月01日

香川県高松市、高松港からフェリーで20分の離島“女木島”(めぎじま)で、2023年8月上旬、4年ぶりの祭りが開かれました。

この離島の祭りを支えるのは、島の外からやってくる人々。
東京からわざわざ参加しに来たひとりの男性に密着しました。

(NHK松山放送局 森陽裕)

祖父母が暮らしていた女木島

7月下旬。東京から女木島にやってきた中塚正記さんです。

島を訪れるのは4年ぶりのことでした。

中塚正記さん

「コロナになってからは帰ってきてなかったので。帰ってきたなという気持ちの方が強いですよね」

実は中塚さん、女木島が出身地ではありません。普段は東京で弁護士をしているため、島で暮らしているわけでもありません。
ですが、祖父母が女木島で暮らしていたことをきっかけに、毎回祭りには参加しています。

島の誇り 住吉神社大祭

中塚さんが参加する祭りは、女木島で100年以上の歴史を誇る住吉神社大祭です。

その主役は“太鼓台”。この地域では船に見立てられています。

この太鼓台を男たちが激しく揺らしたり転がしたりすることで、荒波にも沈まない様子を表し、漁の安全や大漁を祈願しています。

当初は島民だけで続けてきたこの祭り。
しかし、女木島の人口は一時期に比べ10分の1ほどにまで減少し、いま、太鼓台の担ぎ手たちの8割は島の外で暮らす人が担っています。

“栄誉”太鼓乗りも島外から

中塚さんには、今回の祭りで重要な役割がありました。

中塚さん
「腕ピッと伸ばして!胸張って!」

島の中高生が祭りで務める重要な役目“太鼓乗り”。
ことしそれを担う子どもたちに、太鼓のたたき方やかけ声などを指導することです。 

この祭りでの太鼓乗りは神様という位置づけです。
島の子どもにとっては選ばれることが栄誉で、乗りたくても乗れない人が出ていた時期もあったといいます。

しかし、いまは島に子どもがおらず、大半が島外出身の子たちです。

そのひとり、今回初めて参加する佐藤大成さん17歳。

佐藤大成さん

「ばあちゃんちがこっちで(女木島の祭を)YouTubeで見て。こんな太鼓乗るんやと思って。めちゃめちゃ面白いって言われて乗ってみようかなと」

実は、中塚さんも16歳の時に太鼓台に乗ったことがあります。
それ以来、地元の人と関わるようになり、祭りに特別な思いを抱くようになりました。

中塚さんの少年時代

中塚さん
「祭りを通して島のおじいさん、おばあさんとかとすごく関係が深くなっていって。血のつながりとか関係なくお互いに大事にし合ってくれる関係というのが、何か自分はすごく好きだなと思っているとこでもあります」

形は変わっていっても残したい

祭りが近づくと、続々と島の外から担ぎ手たちがやってきます。

中塚さん
「毎年毎年一大作業です」

それでも、4年ぶりの祭りとなったことしは人手が足りません。
そこで祭りの歴史の中で初めて、太鼓台を担ぐ区間の一部を台車に乗せることにしました。

磯崎さん
「いつ終わってしまうか僕らも分からない祭なので」

三宅さん
「続けていくために崩さないかんとこは、崩さないかんのかな」

島が沸いた日

祭り当日。朝6時から島民も総出で、太鼓乗りの着付けを行います。

担ぎ手
「綿をたくさん巻いておかないと、衝撃があって痛いので」

大成さん
「意気込みですか?頑張ります!」

中塚さん
「おまえらが声出して、元気にやった方が一番かっこええけんな」

いよいよ本番。

「若い衆 頼む やってくれ~!」

威勢のいいかけ声で、担ぎ手たちが太鼓台を動かし始めます。

中塚さんも太鼓乗りに指示を出したり、台の動きを指揮したりと、重要な役目を担います。

観客「わぁ~すごい」

観客「久しぶりや。小さいときから行ってるからね」

観客「血が騒ぐというか、わくわくするわね」

待ちに待った祭りに、島が沸きました。太鼓台は7時間かけて島を練り歩きます。
ほかにも、祭りを形作るものが。

無病息災の御利益があると伝わるみこしくぐりに、 鼻でつつかれた場所が良くなると伝わる猿田彦。
ほかにも、音楽を奏でる屋台や獅子舞など、 祭りに携わる男たちそれぞれが役割を持って、島の神様にささげました。

観客
「次もできたらいいなと楽しみにしております。それまで何とか長持ちしときます」

観客
「祭のために地元に帰ってというのが、そこからまた地元愛につながると思いますし、 自分のこころのふるさと」

祭りを締めくくるのは、太鼓台を激しく転がす「暴れ」。

「最後大暴れしよう」

大成さん「やろうやろう」

中塚さん「お前ら頑張ってやれ!!」

力を振り絞る、一番の見せ場です。
太鼓乗りの佐藤さんも激しく揺られる中声を出すのをやめません。
中塚さんも最後まで全力でげきを飛ばし続けました。
島の人も外の人も、共に支えた4年ぶりの祭りです。

「達成感はあるっすね。熱気のある島やなって。次は太鼓持つ係で参加したい」

「お祭りが終わったときですね、本当に皆さん口々に一生懸命やってくれたからこのお祭りができるんだと言っていただけて。そういった皆さんの温かさっていうものを感じて、本当に、自分の存在意義っていうんですかね。ここに縁を持って生まれてきてこういう祭をずっと続けていけて、そこで自分がすごく大事にされているっていうところはありがたく思っています」

感想

私の出身地には女木島のような祭りがなく、今回取材した方々の楽しそうな様子、晴れやかな顔を見ていると、とても羨ましく思いました。 
四国の“祭り“と言われると、高知県のよさこい祭りや徳島県の阿波おどりのような、全国から観客が来る規模の大きい祭りがついつい思い浮かびがちです。
でもこの祭りのように、地域に住む自分たちのため、ゆかりのある人々のために行われる小さな祭りがあることで、縁をつないだり、地域の中での存在意義を確認できたり、心を一つにしたりと、祭りが果たす役割は大きいんだと実感しました。
そんな祭りだからこそ、女木島のみなさんは形を変えても残したいんだな、と思えるすてきな祭りでした。

  • 森陽裕

    ディレクター

    森陽裕

    2019年入局。出身地の神奈川県で5歳からサッカーを始める。好きなチームは川崎。ユニフォームは8枚持っている。

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