2023年3月9日

なぜ大洲は世界1位になれたのか 「持続可能な観光地」とは

国際的な認証団体が選ぶ「世界の持続可能な観光地」で、愛媛県大洲市が「文化・伝統保全」の部で見事、世界1位となりました。
「サステイナブル・ツーリズム」という観光の形が最近注目されていますが、大洲の何が世界に認められたのでしょうか。

(NHK松山放送局 八幡浜支局 勅使河原佳野)

持続可能な観光とは

「世界の持続可能な観光地」とは、オランダの国際的な認証団体「グリーン・デスティネーションズ」が景観保全や文化財の保護、エネルギー消費量の削減などの基準を満たした世界中の100の都市を選ぶもので、毎年発表されています。
持続可能な観光は英語で「サステイナブル・ツーリズム」とも呼ばれ、現在だけに目を向けず、その地域の将来の環境や社会、経済へのへの影響を配慮しながら取り組む観光の形です。
コロナ前からある考え方ですが、観光客が過剰に増えてさまざまな弊害が起きる問題が指摘されるようになってから大きく注目されるようになりました。

なぜ大洲が1位に

表彰式が行われたベルリンの会場

「世界の持続可能な観光地」には6つの部門があります。

今回、大洲市が受賞したのは「文化・伝統保全」の部です。

大洲城を中心に城下町が広がり、歴史的な建築物が多く残る大洲市ですが、人口減少が進むにつれて空き家が増えていることが課題となっていました。
空き家は歴史的な価値があるにも関わらず、所有者の高齢化などにより維持管理が難しくなったため、更地にして駐車場にしたり、他の所有者に売却や賃貸を希望したりする人があとを絶たなかったといいます。
危機感を感じた大洲市は地元の銀行に相談し、空き家を活用することで保全する仕組みを考えました。

そこで生まれたのが、古民家を活用したホテルです。
市内に点在している古民家を改修することで、町全体が22棟の客室を持つ分散型ホテルとなりました。
客室のほかにも、改修した古民家にカフェや雑貨店などを誘致したことで、観光客に町に長時間滞在してもらいながら、外から来た人にお金を落としてもらう仕組みもつくり、地域の経済も活性化させようとしたのです。

このような取り組みにより「歴史的な建築物を活用することでなくなりつつあった町並みを保全した」として、今回の受賞につながりました。
大洲市と連携してまちづくりの取り組みを進める一般社団法人「キタ・マネジメント」の担当者は、ドイツ・ベルリンで開かれた表彰式で次のように喜びを語りました。

「キタ・マネジメント」ディエゴ・コサ・フェルナンデスさん

「国際的な賞をもらい、大洲の知名度が世界レベルになることを本当にうれしく思います。環境などにも配慮しながらさらに持続可能性の高い観光地を目指して頑張りたいです」

これまでの日本の都市の評価は

グリーンデスティネーションズのHPより

キタ・マネジメントによりますと、「世界の持続可能な観光地」の部門で日本の都市が1位を受賞したのは大洲市が初めてだということです。
なお、今回(2022年)は国内から10の市と地域が100選に入り、大洲市以外では熊本県の小国町が「ガバナンス体制の構築、観光地の再生」部門で3位に選ばれました。
こちらは観光客が増えすぎて渋滞などの支障が出る「オーバーツーリズム」を緩和する取り組みが評価されたそうです。

選ばれるとどんな効果が?

欧米などの大手旅行会社は、認証を受けた都市を優先して旅行客に紹介する傾向があるということです。
また、今回の表彰式は、ベルリンで開かれた世界最大規模の旅行博の中で行われたことから、多くの旅行会社が大洲を認知するきっかけとなったといいます。
今回の受賞を通して、大洲という地名が世界的に注目されることを、私も期待したいと思います。

この記事を書いた人

勅使河原 佳野

勅使河原 佳野

2019年入局の記者。2021年5月から八幡浜支局で、南予地域の取材を担当。
好きなものはコーヒーと温泉、エスニックなもの。