2022年12月26日

インターハイ5連覇!松山学院自転車競技部 強さの秘密は?!

現在、総合テレビで放送中のアニメ「弱虫ペダル」。
自転車競技部の高校生たちが、インターハイ優勝を目指す熱い青春の物語です。
渡辺航さんの原作マンガは累計発行部数2800万部(2022年11月現在)を記録。
この作品をきっかけに自転車競技を始める選手も数多くいると言います。
実は愛媛には、弱虫ペダルのように自転車競技に打ち込む高校生がいる強豪校があります。
その強さの秘密を探りました。

(NHK松山放送局 佐々木理沙 山口輝 佐藤雄真)

史上初の5年連続総合優勝!

松山市にある松山学院高校の自転車競技部です。
今年8月、香川で行われたインターハイで、史上初の5年連続総合優勝を達成した強豪です。
個人では男子で阿部英斗さん(あべ・あやと:3年)がスプリント、鎌田晃輝さん(かまだ・こうき:3年)が個人ロードレースで優勝、女子では垣田真穂さん(かきた・まほ:3年)がポイントレース、ロードレースで優勝するなど、多くの種目で上位進出を果たしています。

5連覇の記念プレート

そんな松山学院自転車競技部ですが、創部からまだ7年目。短期間に全国屈指の強豪へと駆け上がりました。部員は現在31人。地元愛媛の他、九州、関西、関東、北海道など、全国各地から集まり、合宿生活をしながら練習に励んでいます。

厳しく緻密なトレーニング

専用マシンが並ぶのは教室を改装して作った自転車競技部の室内練習場、通称“道場”です。

ここでは選手に合わせた適切な負荷をかけながら、3時間みっちりトレーニングします。
ペダルの回転数や心拍数など細かくデータを取って、選手一人一人に合ったメニューをきめ細かく作り、効率的にトレーニングを行っています。

徹底して追い込む練習でも、無駄のないペダリング(こぎ方)になっているか、綿密にチェックします。
自転車競技では、フォームにちょっとしたブレがあるだけで空気抵抗が増え、スピードが落ちてしまうためです。
練習中、コーチの菊池さんが選手の一人に声をかけました。

(コーチ)「ギアをかけた?」
(選手) 「あまりかけていません」
(コーチ)「ちょっとだけサドルを後ろに下げてみようか。何ミリか」

(菊池コーチ)
バイクのモニターを見たら、ペダリングに乱れがあり、本人も乱れを認識していたので、改善法を話しました。ペダルを回すとき一番力を入れなければならないタイミングが遅れ気味だったので、タイミングを早くするよう指示しました。

指導するのは元トップ競輪選手!

菊池仁志コーチ

松山学院を指導するのは元競輪選手の菊池仁志さん(61歳)です。
菊池さんは地元松山市出身。松山工業高校在学中に自転車競技を始め、卒業と同時に競輪の世界に進みました。競輪選手の最上級クラスである「S級」に28年間連続で在籍、トップ選手として活躍して来ました。

競輪選手時代の菊池さん

引退後はコラムの執筆や自転車愛好者向けのスクールを運営していた菊池さんですが、自転車を通じて地元愛媛に貢献したいという思いから、創部と同時に松山学院の自転車部を指導することになりました。(創部当時は松山城南高校)

(菊池コーチ)
特別な練習は全くしていなくて、基本的な所を反復練習しています。練習時間も出来るだけ短く、2~3時間で終えるようにしています。高校生には回復する時間も絶対に必要なので、短時間に集中して練習するよう心掛けています。

ケガに細心の注意

中でも、菊池さんが注意を払っているのは、ケガの予防です。長年競輪の選手を続ける中、ケガで引退を余儀なくされる選手を数多く見て来たからです。
厳しい練習を行っても、先の長い高校生には同じ経験をして欲しくないと言います。

(菊池コーチ)
一番大切なのは病気やけがをしないこと。トレーニングは継続しなければならないので。

菊池さんはケガの予防のため、道具の細かいところまで目配りします。
この日、気にかけていたのは、3年生の鎌田晃輝さんのシューズでした。

調整したのはシューズの接地面。自転車競技用のシューズは3つのボルトで、ペダルに固定するよう出来ていますが、少しでもズレがあるとフォームが崩れ、力をうまく自転車に伝えられなくなってしまいます。また、正しくないフォームは関節や靭帯のケガの原因にもなるため、細心の注意を払いながらシューズを調整していきます。

(コーチ)「ちょっとずつのずれやね」
(選手) 「そうですね」
(コーチ)「今いじったのは、0.5ミリ以内」

鎌田さんは今年のインターハイのロードレースで優勝、自転車の世界選手権のジュニアの部に出場したホープです。
地元大阪を離れ、松山学院に進学した鎌田さんですが、トレーニングだけでなく、体のケアや道具に気を配るようになって、ケガが減ったと言います。

(鎌田晃輝さん)
中学時代は踏みこむ位置がずれ、じん帯が炎症を起こしたり、ひざを痛めたりすることが多かったのですが、高校に入ってからケガがだいぶ減りました。

自転車競技の選手にとって、自ら自転車という“道具”を調整するのも大切な技術です。
菊池さんはケガを防ぐためにも、道具の調整のポイントも教えようとしています。

(菊池コーチ)
自転車は道具を使うスポーツなので、逆に言うと、道具を自分の体に合わせるんですね。
自分の体に合わないところがないよう、出来るだけ調整するようにしています。

強さの秘密は“自主性”

松山学院の特徴の一つは選手の自主性を重視することです。
早朝5時。練習場に集まってくる部員たち。スポーツの強豪校ならよくある“朝練”ですが、松山学院では“強制”ではありません。

(1年生・中村和樹さん)
ほかの人より時間を使ってこがないと、周りのみんなに追いつけないので。

(1年生)
強い先輩たちはみんな朝練をしているので、自分もそうなりたいのでやっています。
朝練では自分がやりたいメニューを練習するようにしています。

部員たちは自分の課題を克服するため、朝食の時間まで自主的にトレーニングしています。
松山学院で大切にしているのは、自ら考え、行動を起こすことだと言います。
自転車競技の場合、レース中に展開を読んでスパートしたり、位置取りを変えたりするのは、選手の判断にゆだねられています。
このため、菊池さんは徹底して自ら考えることの大切さを部員たちに伝えているのです。

放課後、松山競輪場で2時間の練習のあと、後片付けをしている部員がいました。

Q「何年生ですか?」
A「2年生です」
Q「何を持っている?」
A「スポーツドリンクと空気入れです」

片づけをしていたのは2年生の水谷彩奈さん。今年のインターハイではロードレースで2位に入り、全日本の強化指定選手として海外遠征も経験している、高校女子では全国トップクラスの選手です。

(2年生・水谷彩奈さん)
1年生は自分のことに集中して練習してもらい、2~3年生が動くようにしています。
今まで自分たちが先輩たちにやってもらったので、その分を後輩に返そうとしているんです。

水谷さんは新潟県長岡市出身。強豪校で自らを成長させたいと、松山学院に進学しました。
新しい環境に慣れるまで時間がかかる1年生の間に、荷物運びなどの雑用に気を使わなくて済んだので、純粋に練習だけに集中でき、成長することができたと言います。

また、そこには、上級生にとっても競技面で思わぬ効果があるそうです。

(上級生)
周りのことを見られるようになったと思います。自転車競技はレース中集団内で誰がどういう動きをしているか、見ることが必要なので、そういう部分で影響があると思います。

高校トップクラスの実績のある運動部ながら1年生ではなく上級生が雑用を買って出る。
自主性を伸ばしてこそ、選手としての成長があるという菊池さんの思いがあります。

(菊池コーチ)
ここから巣立っていったときに、それぞれのステージで頑張るのですが、教えすぎてしまうと、考えなくなるので、選手が自主的にやる部分は、出来るだけ伸ばしていくように気を付けています。選手たちなりに一生懸命考えてやってくれているので、それはこのチームの誇れるところですね。

選手たちの自主性と考える力が強みという松山学院。
目指すは来年3月の選抜大会、そしてインターハイでの6年連続総合優勝です!

好きな「弱虫ペダル」のキャラクター 選手のみなさんに聞いてみました!

鳴子章吉
総北:
赤くて派手な“浪速のスピードマン”


「レース中のスター性に憧れます」

真波山岳
箱根学園:
風を読み、翼が生えたように加速する登りが特徴のエースクライマー


「とにかく自転車競技を楽しむという姿勢に共感しました」

御堂筋翔
京都伏見:
規格外の強さを持つ万能レーサー


「勝利のためには手段を選ばないという御堂筋の姿勢は、実際のレースでも必要なことで、一番リアリティのあるキャラクターだと思います」

【放送中】
アニメ
「弱虫ペダル LIMIT BREAK」

総合 毎週日曜午前0:00(※土曜深夜)

【佐々木感想】

私は“弱虫ペダルファン”なのですが、チームメイトを尊敬・信頼しあっている主人公たちの関係性が大好きです。取材を通して、松山学院自転車競技部にもそんな素敵な関係性が垣間見えました。自転車競技は主に個人戦。レース本番ではチームメイトが最大のライバルになるといいますが、チームの雰囲気は和気あいあい。練習中はお互いアドバイスして高めあい、普段はふざけあったりしながら楽しく過ごしているそうです。とても雰囲気がよくて、すっかりファンになりました。

【山口感想】

取材を行うまで自転車競技がどのくらいのスピードを出して行うのか知りませんでした。実際に競輪場に行った際に近くで見たときに、目の前を通り過ぎる度に強い風が吹き、迫ってくる自転車が怖く感じるほど速いスピードでした。競輪場の場合、時速60~70kmで走っていて、人間の力でこんなにスピードが出るんだと感動しました。

【佐藤感想】

コーチの菊池さんは「他校と比べて特別な練習をしているわけではない」と言っていましたが、それでもここまで強いのは、基礎練習に対する意識の高さゆえと思いました。ただ練習をこなすのではなく、常に実戦のつもりで限界まで追い込むからこそ成長できるのだろうなと、選手の必死に食らいつく姿を見て強く感じました。

この記事を書いた人

佐々木 理沙

佐々木 理沙

2022年入局。暇さえあればアニメを見ています。

山口 輝

山口 輝

2022年入局。趣味は、スポーツ観戦。特に好きなのは、サッカーです。

佐藤 雄真

佐藤 雄真

2022年入局。中学・高校・大学で陸上競技部に所属(専門は400m)。
城山公園をダッシュで通勤しているのは私です。