2022年12月23日

若者たちの間で人気!? フィルムカメラの魅力

突然ですが、皆さんは写真を何で撮りますか?
スマホも写真や動画を手軽に撮ることができますし、デジタルカメラも初心者から上級者向けまでさまざまな機種が出ています。
でも実はいま、若者たちの間でひそかにフィルムのカメラが人気なんです。
なぜフィルムが若者たちの心を掴んでいるのか、スマホ世代の私が取材しました。

(NHK松山放送局 森野美帆)

フィルムは…‟エモい”

かつてフィルムカメラは庶民の間で広く活躍していましたが、デジタルカメラ(デジカメ)の台頭で生産台数が減り、今となっては多くのメーカーで生産が終了しています。

中古のカメラを手にすると、レトロなデザインでずっしりと重さが伝わってきます。
フィルムが感光してしまわないように慎重に装てん。

絞りやシャッタースピード、ピントを調整して、ようやく撮影に取りかかれます。
デジカメと比べてフィルムカメラは一手間も二手間もかかります。

操作が難しそうで、一見マニア向けにも思えるフィルムカメラ。
どこに興味を持っているのかを知りたくて若者たちの撮影に同行させてもらいました。

訪れたのは古い家が建ち並ぶ海沿いの町。
思い思いの方向にレンズを向けて、黙々と撮影をしていきます。

多くのフィルムは24枚や36枚撮りと、デジカメよりもはるかに少ない枚数しか撮影することができません。

フィルムを使い切ると、取り出すためにその都度巻き取らなければなりません。
たくさん撮れば撮るほど、その作業を繰り返すことになります。

撮影をしていた一人、長岡昴冶さんは小さなレバーを操って巻ききるのに、やや苦戦している様子でした。

面倒くさくないのかと聞くと、それもフィルム撮影の楽しみの一つなんだそうです。

フィルムでの撮影が趣味 長岡昴冶さん

「レバーが小さくて回すのは難しいですね。でもこの作業は取り終わった最後の仕上げなんで、うれしくもあります」

撮影しても その場で仕上がりを確認することはできません。
どんな写真ができあがっているか、現像するまでのお楽しみです。

フィルムでの撮影が趣味 森岡亜文さん

「現像された写真を見るのはめちゃくちゃ楽しみです。失敗しているかもしれないですけど、それも込みで。それはそれで思い出なんで楽しみにしたいと思います」

長岡昴冶さんが撮影した写真

現像すると、その画質にはざらりとした粒子感があり、色味もノスタルジック。
フィルムならではの独特な味わいは、若者たちにはとっても‟エモい”んだそうです。

若者たちが集う老舗カメラ店

右:カメラ店店主 渡部直人さん

そんなフィルム好きの若者たちが集うカメラ店が、松山市中心部の銀天街にあります。
店内には中古のフィルムカメラや何種類ものフィルムが並んでいます。

店内は常に若者の姿が。
ここではフィルムの現像もできますが、若者を引きつけているのは店主の渡部直人さんの人柄です。
若者が入ってくるとすぐに声をかけ、持っているカメラや撮ってきた写真を見てフィルムカメラ談義に花を咲かせます。

若者たちは店を救ってくれた恩人

カメラ店店主 渡部直人さん

いつも笑顔でいる渡部さんですが、デジカメが広がり始めた頃は、フィルムカメラを取扱い続けることに限界を感じていました。

そんな時、若者たちが次々と訪れ、フィルムカメラについて尋ねてきたのです。
彼らが熱中する様子を見て、フィルムカメラを取り扱い続けることを決心したそうです。

渡部さん
「いまさらフィルムカメラなんてと思っていたんですけど、若い子が面白がってくれたことで、もういっぺん追いかけてみようと思わせてくれたのは、若い人たちですし、本当にありがたいと思います」

“今風”な楽しみ方も

現像しなければならないフィルムですが、今の時代、写真は紙だけではありません。
デジタルデータで受け取ることもでき、若者たちは作品をSNSなどに上げて楽しんでいます。

皆さんの自宅にも古いフィルムカメラ、眠っていませんか?
引っ張り出してフィルムを装てんすると、広がってくる世界があるかもしれません。

取材後記

指一本で大量の画像を撮影し、保存できる今。
そんななかでも若者たちがドキドキしながらシャッターを切って現像に向かう姿、何気ない一瞬を特別な感情で切り取る彼らを見てハッとさせられました。
私は普段はテレビカメラマンとしてさまざまな現場で映像を収録しているのですが、テレビ放送で使用しているカメラも、昔はフィルムやビデオテープで撮影されていました。
収録時間も今と比べて格段に短く、編集もフィルムを手作業で切ったり貼ったりしていました。
修正はそう何度も許されなかったと先輩から聞いたことがあります。

デジタル世代の私は撮り逃すことが怖くて、目の前の事を記録しようと長々と収録してしまうことがあります。
しかし、どんなに長くカメラを回しても印象に残るのは「撮りたい」という想いが強く込もった1カットなんです。
そんな「撮りたい」という素直な気持ちにあふれる彼らを見て、襟を正す気分になりました。

私もフィルムカメラ、始めてみようかな…。

この記事を書いた人

森野美帆

森野 美帆

2022年8月から松山局勤務。「ひめポン!」での生中継や「もっと四国音楽祭」などで撮影を担当。スマホでカレーとラーメンの写真ばかり撮っています。