2022年12月2日

徳島県上勝町 “ごみゼロ”の暮らしが観光資源に?

2003年から「ゼロ・ウェイスト」、ゴミやむだを出さない暮らしに取り組んでいる徳島県上勝町が2年前から新しい観光体験のツアーを立ち上げたところ、外国人観光客に人気になっていると聞きました。

どんなツアーなのか、興味が湧いたので取材しました。

(NHK徳島放送局 藤原哲哉/NHK松山放送局 清水真紀子)

ゼロ・ウェイストに取り組む上勝町

取材で訪ねたのは2022年11月上旬。
そこでシンガポールから上勝町に観光で来ていたオリバー・トゥールズデルジュトラさん夫婦と出会いました。

環境に負担をかけないこの町の暮らしに興味があり、やってきたといいます。

オリバーさんたちがまず立ち寄ったのは町のゴミステーションです。

人口およそ1400人あまりの上勝町は、むだをなくす「ゼロ・ウェイスト」を続けていて、ごみを13種類、合わせて45の区分に分けています。
こうした多岐にわたるごみの分別に住民たちが前向きに取り組んでいることに、オリバーさんたちは驚いた様子でした。

滞在プログラム「INOW(いのう)」

この上勝町で2020年から始まったのが、この町独自の滞在プログラム「INOW(いのう)」です。

「いのう」とは阿波弁で「家に帰ろう」という意味です。
ごみゼロを実践する人々の暮らしを数日間にわたって体験し、その大切さを学んでもらおうというものです。

水際対策が緩和された2022年10月の予定を見てみると、早速ニュージーランド、シンガポール、タイなどからの観光客が参加していました。

INOW運営者 渡戸香奈さん

「京都とか東京に比べたら人数は全然違うので多いとは思っていませんが、INOWのような体験を探している人がいるというのはうれしいですね」

“暮らし”を体験する

INOWプロジェクトに参加したオリバーさん夫妻が案内されたのは、山奥にある農園です。

栽培しているのは、ほぼ徳島県内でしか生産されてない「ゆこう」。

豊かな香りが特徴で、主に果汁が料理などに使われているかんきつ類です。

ゆこう

上勝町では消費できる分だけを栽培しています。

オリバーさんは収穫も体験。
農薬を使っていないことを知ると、皮を食べてみました。

実はオリバーさんはシンガポールで料理人として働いています。

安心安全で食品ロスを出さない料理を学ぼうと、世界中を旅してきました。

オリバーさん(左)シンガポールでの写真

オリバー・トゥールズデルジュトラさん
「本当にクールですね。きちんと整備されている農場が多いですが、ここでは自然で生き生きと栽培しています。それがいいですね。まさに持続化可能な農業だと思います」

“学び”を持ち帰る観光

続いて訪れたのは、ごみや食品ロスの削減に取り組みながら地元の食材を提供するカフェです。

ここでは「ゆこう」を余すことなく使い切る地域ならではの知恵や工夫を教えてくれます。

オリバーさんたちが味わったのは、カレーに添える漬物になった「ゆこう」の皮でした。

オリバー・トゥールズデルジュトラさん
「おいしいですね。ひとつの食材がいろんな調理法で食べ方が広がっていくのは面白いと思いました。シンガポールに帰ったら、ぜひ生かしていきたいですね」

サステイナブルな取り組みを続ける町の“素顔”を体感することで、旅行者も“自己変容”できる。
こうした新たな観光のニーズが広がっています。

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