2022年9月30日

四国のプロバスケ 愛媛オレンジバイキングスと香川ファイブアローズ 2022-23シーズンの特徴は

四国対決で開幕したプロバスケットボールのBリーグ。NHKの中継で解説をつとめた一色建志さん(聖カタリナ大学女子バスケットボール部ヘッドコーチ)に両チームのキーマンたちについて聞きました。

(NHK松山放送局 中元健介)

選手の特徴を見極める一色建志さんの目

愛媛県松山市出身の一色建志さんは長年、愛媛県の聖カタリナ学園高校で監督をつとめ、全国大会のベスト4以上を通算10回。全国屈指の強豪校へと導きました。

日本代表にも選手を輩出。
U18日本代表のヘッドコーチも務めました。

その後、実業団のヘッドコーチもつとめ、幅広い年代の選手を指導してきた経験と、 バスケットボールの豊富な知識には定評があります。

タイプの違うガード

一色さんがまず挙げたのが、試合を組み立てるポイントガード2人の名前でした。

新加入した愛媛の古野拓巳選手と香川のキャプテン、兒玉貴通選手です。
実はこの2人は同じ福岡県出身の同級生。中学生の頃から顔見知りで、互いに強く意識しているそうです。
同じポイントガードですが、2人のタイプは大きく違います。

周りを生かす愛媛・古野拓巳選手

古野選手(左)

古野選手は視野が広く、見方の長所を引き出すタイプ。
試合の流れも読める、「バスケをよく分かっている」選手だといいます。

一色さん
「ボールカットをした瞬間に、(味方選手の)誰がどこを走っているのか。ディフェンスは何人いるのかを認知しています。そしてその後にどういう選択をすべきか、先が見えているんですね。古野選手はゲームをコントロールできる存在です」

さらに古野選手のリーダーシップにも注目しています。

9月4日に行われたB1新潟とのプレシーズンマッチでの1場面。
速攻でダンクを決めて倒れ込んだ外国人選手を引っ張り起こしたのです。

一色さん
「“早く帰ってディフェンスするぞ”と訴えたかったんでしょうね。監督の考えていることも分かってくれるような選手なのではないでしょうか」

攻撃的なガード 香川・兒玉貴通選手

兒玉選手は身長166センチと、バスケットボール選手としてはかなり小柄ですが、自ら切り込んで得点を奪うアグレッシブな選手です。

9月4日に行ったB1島根とのプレシーズンマッチで印象的なシーンがありました。

ゆっくりドリブルをしながら味方に合図を出してフォーメーションを指示した兒玉選手。

近くの選手に一度パスをした瞬間、すばやい切り込みで相手を交わし、再びボールを受けてシュートを決めたのです。

一色さん
「フォーメーションの指示を出した後に、どういう風に点を取るのかなって思ったら、このチェンジオブペース、クイックネス。やらないふりをしてぱっとスピードの変化で相手を出し抜いて、ボールをもらっても体を寄せて当たり負けをしない強いプレーができる。本当に頼もしい選手です。古野選手との対決が楽しみです」

外国人選手の活躍も目が離せない

そして得点のカギを握るのは体格と身体能力に恵まれた外国人選手たちです。
愛媛のポイントゲッターはアメリカ出身のライアン・クリーナー選手。

身長208センチの高さを生かしてゴールにねじ込むだけでなく、スピードと器用さを兼ね備えているといいます。

一色さん
「身長が高い選手は動きが鈍いイメージを持つかもしれませんが、クリーナー選手はバスケットのIQが高い。とても器用な選手だと思いますね」

香川で注目したのは、こちらの2人。

アンガス・ブラント選手(オーストラリア出身、208センチ)。高さだけでなく、柔らかいタッチでゴール下の決定力があるだけでなく、兒玉選手とともに今シーズンはキャプテンもつとめる、チームの精神的な柱です。

そして、もう1人が新加入のマイルズ・ヘソン選手(イギリス出身、198センチ)。去年B2のスティール王でイギリス代表の主将にも選ばれています。シュートやパスも正確で何でもこなすオールラウンドプレイヤーです。

チームが勝ち抜く決め手は

愛媛は21-22シーズン、1試合平均失点がリーグ14チーム中11位でした。オフシーズンは、その課題のディフェンスの強化に力を入れてきました。

一色さんは身体能力の高い外国人選手をいかに抑えられるかが大きなポイントだと指摘します。
愛媛としては、相手に簡単にシュートを打たせたりパスを出させたりしないように、ポジションを切り替えながら粘り強く守ることが大切だといいます。

一色さん
「愛媛はしつこいディフェンスだなって相手に思われる。1試合通して粘り強くやっていくと、これまで10本中8~9本決められていたのが6~7本になって、ちょっとずつ失点を抑えられるようになってくるとナイスゲームですね。一方の香川は昨シーズンB2のMVPのウッドベリー選手が抜けたことで、これまでの3ポイントに頼る戦略から、外だけでなく“中”のインサイドも使う攻撃の型の変更が必須となります。ポイントガードの兒玉選手から、ゴール下のブラント選手とヴァーグ選手、そして新加入のヘソン選手にパスが繋がれば、インサイドの攻撃が増えて攻撃力がアップし、相手にとってはかなり厄介になると思います。
あとは熱気。観客の後押し、地域の応援があれば、力以上のプレーをしてくれるのではないでしょうか」

※応援メッセージの募集は締め切りました。たくさんの投稿、ありがとうございます※

この記事を書いた人

中元健介

中元健介

スポーツ番組・ドキュメンタリーのディレクターとして、スノーボード・平野歩夢選手、ソフトボール・上野由岐子選手、バスケ・田臥勇太選手などを取材