2022年9月28日

縮小する愛媛 2060年の人口は?

78万人。これは何の数字かわかりますか?
正解は、愛媛県が先日示した2060年の愛媛の推計人口です。
愛媛のいまの人口は約130万人。半数近い55万人も減るというこの結果に、取材した私自身も衝撃を受けました。
2060年、愛媛はどうなっているんだろう・・・

(NHK松山放送局 的場恵理子)

これが2060年の愛媛の姿だ

県が試算した2060年の将来推計人口。実は、この推計を県が出すのは3回目です。

今回の推計で初めて80万人を下回る結果となりました。この推計は、いよぎん地域経済研究センターが直近の5年間の愛媛の年齢別の人口や出生率、それに移動率などを反映させて試算したものです。
県は、推計が過去の公表時より減少した理由については「出生数の減少が影響している」と分析しています。

人口が77%減少の町も

今回、初めて試算が示されたものもあります。
それは愛媛の20の市や町ごとの詳細な人口推計です。

県全体でみると2060年の人口の減少率はおよそ40%ですが、自治体単位の減少率は20%台から最大77%までと、大きな差がみられます。

そして、都市別の人口ランキングも今とはだいぶ変わります。

松山市に次いで今治市、東予の都市、南予の宇和島市までは変わりませんが、その次は中予の都市が続き、南予の人口縮小が目立ちます。

若い人が100人以下の市や町も・・

今回公表されたのは全体の人口だけではありません。
15歳から29歳の若い世代がどれだけいるのか・・・という数字も示されました。
それを見ると、南予の松野町では、若い人の人数がたった55人という先行きがなかなか見通しにくい数字も突きつけられています。

人口が減るとどうなるの?

人口が激減する2060年の愛媛はどうなってしまうのか。
人口減少問題を話し合う愛媛県の会議では、愛媛の厳しい「未来予想図」の一端も示されました。

2060年の県内の年間消費支出は、今より約6000億円減るというのです。
県内の大手スーパーの年間売り上げが約3000億。このスーパー2つ分の消費が減るということなります。県内経済への影響が深刻であることがわかります。

そして、0歳から14歳までの子どもの数も県全体で6万4000人と今より6割ほど減ります。
現在、愛媛では、55ある県立高校を44に再編するという計画が持ち上がり、県内各地で議論となっていますが、2060年になると、小学校・中学校・高校の統合がいっそう進むことが想定されます。
市や町に1つの学校だけ・・・という状況も現実味を帯びます。

これからどうしたらいいの?

今回の試算は、何もしなければこうなる・・・という試算であり、県としては、少子化対策をはじめ今後もさまざまな取り組みを通じて2060年に100万人の人口を維持したいという考えです。

ただし、そもそも人口減少自体は、愛媛だけで起きているわけでなく、日本全体の問題であり、あらがうことはなかなか難しい問題です。

過疎化対策などを研究する 愛媛大学 特任講師の笠松浩樹さんは、人口減少の主な要因である少子化にはさまざまな原因が絡んでいて結婚対策や子育て支援といった、これまでの対策だけでは不十分だと指摘します。

愛媛大学 特任講師 笠松浩樹さん

それでは、どうすればいいのか。笠松さんはすぐにでもできそうなひとつのアイデアを教えてくれました。
それは、愛媛県産の農産物や水産物、それに木材など、この地域が産み出すものを改めて見つめるということです。

笠松さん
「これからは、人口減少に対応する社会をどう作っていくのかということも重要です。食の自給自足をはじめ、エネルギーについても、地域で産み出す仕組みも求められてくるでしょう。自分たちの地域を、自分たちの手で、どう維持していくのか、そうした発想も大切になってきます」

的場の感想

中山間地では、60代や70代の人たちが、地域を支える重要な役割を担っているケースが多くみられますが、これからそうした人たちも少なくなってきます。
自治会や町内会など地域をまとめる組織をどう運営し、誰が担っていくのかという地域の支える仕組み作りも大事なテーマとなってきそうです。
2060年、人口が激減する愛媛。
そこで暮らす人たちが笑顔でいるためには、どんな対策が必要なのか。
数字自体はショッキングですが、それを悲観だけするのではなく、愛媛の未来を考える、きっかけにしていかなければなりません。

この記事を書いた人

的場 恵理子

的場 恵理子

徳島局を経て2019年から松山局勤務。災害・伊方原発の取材を担当。
好きな食べ物は「から揚げ」。かんきつについて日々勉強中。