2022年9月16日

“3年ぶりのステージ”にかける~Nコン・四国ブロックコンクール~

おととし、去年とコロナの影響で、ステージでは開催されなかったNコン・四国ブロックコンクール。今年は8月27日、28日の2日間、四国4県の小学校、中学校、高等学校の代表24校が愛媛県県民文化会館に集まり、全国コンクール出場を目指し、鍛え上げた歌声を披露しました。3年ぶりにステージで開催された四国ブロックコンクール、四国4県の児童・生徒たちはどのような思いでステージに立ったのか、取材しました。

(NHK松山放送局 矢内原 未緒)

緊張の“初舞台”! 四国ブロックコンクール

四国ブロックコンクールは、おととしはコンクール自体が中止、去年は県コンクールで収録された音源を使って行われましたが、今年は3年ぶりにステージで開催されることになりました。毎年のように四国ブロックに出場して来た強豪校の合唱部員の多くにとっても、Nコン・四国ブロックコンクールとしては“初めての舞台”となります。
今回は希望がある学校については、十分な感染対策を行った上で、客席で見ることも出来ることになりました。合唱部員たちは全国大会につながる大舞台への緊張感、そして人前で歌える喜びとともにステージに立ちました。

香川・坂出高校
「1、2年生はみんな初めてだし、3年生は最初で最後のステージなので、絶対悔いが残らないよう演奏したいです。最近ぐっと良くなったので、いつも通り歌うだけです」

徳島・城西中学
「中学校になって初めての県外での大会なのでワクワクしています。このテンションのまま本番でも練習の成果が出せたらと思います」

愛媛・松山東高校
「県コンクールを突破してから、少しの練習期間しかなかったんですが、今まで頑張ってきたことを、存分に発揮できるようにしたいと思います」

高知・土佐女子高校
「この大会にすべてを注ぎたいので、聞いている人が“いいな”と思ってくれるような歌が歌えたらと思います」

感染拡大 舞台に立てない学校も

四国各県で県コンクールが行われた8月上~中旬にかけて、四国ではコロナの感染者が急増し、過去最多を記録する事態となりました。各学校とも感染対策をこれまで以上に徹底しましたが、部員や指導者が感染するなど、十分な活動が出来ない学校が少なくありません。

高校の部の冒頭、学生や指揮者、伴奏者はステージに上がらず、代わりに指揮台の左右にスピーカーが置かれました。
出場するはずだったのは徳島県立名西(みょうざい)高校。芸術科・音楽コースがある音楽教育が盛んな学校です。音楽コースに在籍している生徒は全員が合唱部にも所属、四国ブロックコンクールにもたびたび出場してきました。

名西高校は8月17日に開催された徳島県コンクールで金賞を獲得しましたが、ブロックコンクール前に体調不良の生徒がいたため、四国ブロックコンクールへの出場をあきらめざるを得ない状況になってしまいました。
会場で歌唱ができない場合は音源審査による審査を認めているため、名西高校は県コンクールの演奏音源による審査をすることになりました。

名西高校(8月17日 Nコン・徳島県コンクール)

徳島・名西高校
「四国ブロック出場を決めて喜んだのも束の間、出場辞退せざるを得なくなりました。
完全に諦めてがっかりしていましたが、録音を会場で聞いて頂けることになり、感謝の言葉しかありません」

それでも、仲間とともに!

中学の部では最少の10人でステージに上がったのは徳島市応神中学校です。
徳島市郊外の田園地帯にある応神中学校は全校生徒89人、各学年1クラスという小規模の学校ですが、以前から合唱が盛んで、四国ブロックコンクールにも度々出場して来ました。

徳島市応神中学校

実は応神中学校の本来の部員数は12人。しかし4人いる3年生のうち2人は、徳島県コンクールで金賞を取った直後、ブロックコンクールに出場できなくなってしまいました。

ブロックコンクールに出場した部長の石津まどかさん(右)と3年生部員

この日、部長の石津まどかさんはあるものを持って、ステージに上がりました。

部長・石津まどかさん
「きょう来られなかった2人と撮ったプリクラです。県コンクールの結果発表の後に撮影しました。おそろいのキーホルダーも3人で買ったものです。徳島から来るバスの中でもプリクラをずっと握っていて、お守りみたいにポケットに入れて、ステージに連れて行きました」

石津まどかさん(中央)

出場できなくなった2人の3年生はアルトとメゾソプラノのパートリーダーとして、合唱部を引っ張って来た部員。初めて県外で歌うことになる四国ブロックコンクール出場をとても楽しみにしていました。
石津さんと2人の3年生は小学1年生のころからの同級生。中学では一緒に合唱部に入部し、コロナ禍で思うように活動が出来ない中、互いに励まし合って活動を続けて来ました。石津さんたちはステージに立てない2人への思いとともに、精いっぱい歌を届けました。

応神中学・部長 石津さん
「2人の分までちゃんと歌えてよかったです。ずっと一緒に活動して来たのに、最後の最後に四国ブロックに来られなかったのはすごく残念だけど、“みんなで出た”という気持ちで歌いました」

歌声を届ける喜び

10月8日~10日、NHKホールで開催されるNコン・全国コンクール。
四国ブロックから出場できるのは、小中高それぞれ金賞1校のみの狭き門ですが、緊張感の中でも、合唱部員たちの姿は歌うことの喜びにあふれていました。

高松一高
「コロナ禍、観客がいない中で歌うことが多かったんですが、聞いてくれる人がいるのは本当に嬉しかったです。その方たちに届けたいという気持ちが芽生えたので、これからも心に届くような歌を歌えるよう頑張りたいです」

応神中学 石津さん
「3年間来れないと思っていた四国ブロックで歌えてよかったです。人前で歌うのはとてつもなく緊張するんですけれど、聞いてくれる人がいるだけで歌う意味があると思えるんです」

全国コンクール出場校

小学校の部:新居浜市立高津小学校

「去年に続いて、2年連続の全国コンクール出場が出来たことがすごくうれしい。全国でも頑張りたいです」

中学校の部:愛媛大学教育学部附属中学校

「コロナ禍の中、16年ぶりに全国コンクールに行けるのは本当に嬉しいので、先輩たちの思いも引き継いで、しっかり歌いたいです」

高等学校の部:香川県立坂出高等学校

「課題曲が終わった時点で、“ああ、楽しいなあ”という思いしかなく、今まで一番良かったと思う歌が歌えました。全国大会には細かい部分を修正して臨みたいと思います」

四国ブロックコンクール
放送予定
(四国地方向け)

小学校の部  Eテレ 10月2日(日)
午後2:00~2:54

中学校の部  Eテレ 10月2日(日)
午後2:54~3:54

高等学校の部 Eテレ 10月2日(日)
午後3:54~5:00

※NHKプラスで配信を予定しています

四国ブロックコンクールの結果

小学校の部

金賞

新居浜市立高津小学校

銀賞 西条市立壬生川小学校
銅賞 徳島市佐古小学校
高知大学教育学部附属小学校
奨励賞 土佐市立高岡小学校
徳島市千松小学校
観音寺市立柞田小学校
観音寺市立常磐小学校
中学校の部

金賞

愛媛大学教育学部附属中学校

銀賞 新居浜市立東中学校
銅賞 綾川町立綾川中学校
高知学芸中学校
奨励賞 徳島市城西中学校
高知大学教育学部附属中学校
丸亀市立東中学校
徳島市応神中学校
高等学校の部

金賞

香川県立坂出高等学校

銀賞 愛媛県立西条高等学校
銅賞 高知学芸高等学校
土佐女子高等学校
奨励賞 徳島県立名西高等学校
高松第一高等学校
愛媛県立松山東高等学校
徳島県立城東高等学校

矢内原ディレクターの感想

8月の愛媛県コンクールの頃からコロナの感染が拡大、出場校から感染者が出たという連絡も入るようになりました。四国ブロックコンクールが無事に開催されてほっとしているというのが正直なところです。
今回、参加校の先生や児童・生徒たちから多く耳にしたのは「ステージで歌うことの喜び」でした。Nコンのステージで歌い、他校の演奏を聴くことで、子どもたちはみるみる成長していくのだと言います。特に印象的だったのは「聞いてくれる人たちがいるから歌うことに意味がある」という中学生の言葉。
この3年間、マスク越しでしか歌えなくても、歌声を届けることと向き合い続けた子どもたちの歌をぜひお聞きください!

この記事を書いた人

矢内原 未緒

矢内原 未緒

コロナ前から「Nコン」の愛媛県コンクール、四国ブロックコンクールの番組制作を担当。
毎年、Nコン出場校の先生たちと連絡を取りながら番組の準備をしていますが、学生時代に合唱経験はありません。