2022年7月14日

アニメ「アオアシ」アシト役 声優・大鈴功起さんに聞く

「アオアシ」第2クールが7月からEテレで始まりました。累計発行部数1300万部を超す人気漫画が原作で、主人公の青井葦人(アシト)は愛媛出身。セリフはもちろん「伊予弁」です。アシト役を演じるのはデビュー2年目の声優、大鈴功起さん(21歳)。先日愛媛に来られた大鈴さんに話を聞きました。

(NHK松山放送局 酒井博司)

大鈴さんはアシト役を演じることが決まったあと、アシトが育った愛媛を深く知りたいと“出身地”である伊予市などを訪ね歩きました。

アシトが15年間生きてきた愛媛という場所に詳しくなりたい、空気感を知りたいなと思って来ました。街を歩いているだけでも、自分が歩くスピードやしゃべるスピードがゆっくりになったのを感じました。アシトが育った伊予市双海町を訪ねると「海の青」「空の青」「自然の緑」と、本当にそれが全てみたいなところで、こんなのびのびした場所で育ってサッカーに出会い、大好きになったらそれは上手くなるよと思いましたね(笑)

アオアシ公式Twitterより

人気サッカーマンガをアニメ化したアオアシ。出演しているのは著名な声優ばかりです。
声優デビューしたばかりの大鈴さんにとっては、プレッシャーとの戦いでもありました。

主役を務めさせていただくので「せっかくチャンスを頂いた」、「どんなことをしても生かそう」と思っています。それが愛媛に来ることやサッカーを学ぶことにつながったのだと思います。とにかく頑張ろうと前向きな気持ちの方が大きかったですね。アシトもそうかもしれませんが、がむしゃらな気持ちが強かったです。

演じる中で苦労したのは「伊予弁」でした。関東出身の大鈴さんにとって、伊予弁でキャラクターを演じるのはなかなか難しいことだったようです。

伊予弁は愛媛出身の声優さんに指導してもらっています。収録前にセリフを吹き込んで送ってもらい、それを聞いて練習してアフレコに臨んでいますが、普段聞き慣れない言葉なので、一回聞いてもパッとすぐには言えません。しかも、アシトはずっと伊予弁を話している訳ではなく、普通言わないような語尾や言葉づかいもあるので、伊予弁ですがアシトとしての方言を話している感じもあります。

大鈴さんが特に印象に残っているというのが、第4話に登場するセレクションのシーンです。声優としてこれまでにない経験ができたと言います。

チームのセレクションで得点を決めるシーンなのですが、アフレコをした際、目の前にあるのがモニターとマイクではなくて、本当にゴールが見えた感じがしたんですね。アシトと気持ちが一緒になれた気がしました。アフレコのとき、僕は演じるキャラクターが見る「視点」を意識しています。今アシトの眼には何が映っているのかを考えながら演じていますが、ゴールを決めた瞬間はアシトの目に映った景色が見えた気がしました。今も忘れられない体験です。

サッカーについてのリアルな描写も人気のアオアシ。役が決まった当初、日本代表の試合を見る程度だった大鈴さんですが、サッカーをより詳しく知ろうと、スタジアムに足を運び、積極的に試合の中継を見るようになりました。

ある日、間違えて最前列の席を取ってしまい、選手に近い視点で試合を見たのですが、「選手が実際に見る景色ってこんな狭いんだ」と知りました。スタンドの上からだと気づきませんでしたが、背の高い選手がいるとその奥の方は見えないことも実感できました。コロナの影響でJリーグでは歓声が出せない時期でもあったので、選手たちが普段試合中に出す声量もわかり試合のシーンを収録する参考になりました。

アニメの中でアシトは強力なライバルたちにもまれ成長していく姿が描かれています。新人の大鈴さんはマイクの前に立つ自らに重ね合わせながら演技を続けています。

僕が現場の中では一番新人で、一番下手なんですよ、ポジティブな意味で(笑)アシトもユースに入り、最初はみんなにボコボコにされてサッカーを一つ一つ学んでいくので、ぼくもこの中でうまくなれるよう頑張ろうと、モチベーションというか前を向く部分につながりました。収録で何回もリテイクになったり、うまく演じられずセリフが変えられたりすると「くそ―!」と思いますし「次こそはこんなことにならないようにしよう」と思いながら演じています。

アオアシのキーワードは「考える葦である」。サッカーで「考える」ことがいかに重要かは、この作品の大きなテーマですが、声優の仕事にも共通する部分が多いと感じています。

サッカーに限らず、何事もがむしゃらにやるだけでなく、考えてやることは本当に必要なことだと感じています。声優の場合も、直感だけで全部できる人も中にはいると思いますが、ほとんどはそうじゃないし、僕ももちろん違います。この時、このキャラクターは何を考えてセリフを言っているのだろう、セリフの裏にはどんな意図があるのだろうとか、全部考えてセリフを発している。考えることの大事さを改めて伝えてくれる作品だと思います。
アニメではマンガの原作から読み取れる表情もあります。僕は収録のためにいつもノート作っていますが「このセリフはこういう思いだ」というのをノートに整理して、改めて台本に書き込み収録に持っていきます。キャラクターの「視点」と、裏の「自分が考えた部分」のどちらも合わせながら、毎回アフレコに臨んでいます。

酒井アナウンサーの感想

純粋さ、向上心、前向きな気持ち、どこを切り取っても、まさに「アオイアシト」と思わせる人柄でした。収録に向けての研究熱心な姿勢は、わたしも見習わなくてはと強く思いました。アシトと共に、大鈴さんの成長する姿も楽しみにしながら、アニメ「アオアシ」を見ていきたいと思います。
「アオアシ」第2クールのオープニングテーマは愛媛出身のSuperflyが歌う「Presence」です。こちらも注目して下さい!

アニメ「アオアシ」 7月2日(土)第2クールがスタート!
【放送】  Eテレ 毎週土曜 午後6時25分
【再放送】 Eテレ 毎週木曜 午後7時20分

この記事を書いた人

酒井博司

酒井博司

スポーツ実況アナウンサー。
サッカーW杯ロシア大会、日本の初戦コロンビア戦でピッチリポーターを務める。
「先制点を挙げた香川選手を中心にできたピッチ上の『歓喜の輪』に一番近くにいた一般日本人」を自負。勝利直後には、西野朗監督・大迫勇也選手への国際映像の代表インタビューを担当した。