2022年6月15日

あのJR松山駅が変わる

初めてJR松山駅に降り立ったときにこう感じた。「これが県庁所在地の駅前なのか」と。路面電車にどう乗り継げばいいのかわかりにくく、駅ビルも老朽化が目立っていた。
JR松山駅周辺はいま再開発計画のまっただ中だ。松山の顔はどう生まれ変わるのか。その一端がこのほど公開された。

(NHK松山放送局 奥野良)

四国最大都市の駅

駅の改札を出て駅舎を振り返ると、木目調の雰囲気がなんともレトロだ。
目の前にはバス停やタクシー乗り場があり、地下通路を通って少し離れた場所に路面電車の停留所がある。

観光客からは「どの公共交通を使えば、市内の中心部に行けるのか分からない」という声をよく聞くという。

松山駅は1927年に開業した。
その後、戦災にあい1953年に改築、2000年のリフレッシュ工事などを経て、現在の姿に至る。
駅の東側には商業施設などがあり西側は住宅街だが、線路によって完全に分断されている。
駅の反対側に行くためには、駅舎を通っては行けないため、かなり離れた場所にある踏切か、大通りのスロープを利用するほかない。

現在進められている再開発では、およそ2.4キロの区間の線路が高架化され、8つある踏み切りが撤廃される。

これが再開発後のイメージだ

6月13日、松山市は有識者や地元住民の代表などを交えた検討会議で住宅街に面した駅西口の新たなイメージ図を公開した。

建物の色は黒が基調で、これは駅の西側にある斎院地区に古くから残る長屋と門が一体となった「長屋門」をイメージしたという。

高架化された線路の下には、テナントのショップが入り、東西を通り抜けられるコンコースが設けられる予定だ。
鉄道の利用者だけでなく住民の利便性も高まりそうだ。

こちらは現時点での、駅周辺全体のイメージ図だ。

現在、ロータリーがある駅東口の駅前広場は、緑豊かな公園のような場所になる。
駅から広場にかけては、ゆるやかなカーブの屋根で景観を作り、雨風をしのげるようになっている。
夏は強い日ざしを遮ってくれ、人との待ち合わせ時間も快適に過ごせそうだ。

そして大きな改善点が路面電車の停留所の場所変更だ。

線路を駅側に引き込むことで、今のように地下通路を渡ることなく、駅を出てすぐに乗り換えることができるようになる。

どういうコンセプトなのか

基本設計のデザインを描いたのが、東京を拠点に活動する建築家の乾久美子さんだ。

画像提供:松山市

駅や学校などの公共建築を多く手がけ、宮崎県延岡駅や広島県宮島口の旅客ターミナルのデザインに携わってきた。

「多様な可能性に開かれている松山駅前広場には、おおらかな屋根を設けることでさまざまな要素をつなぐことを提案した。屋根は周辺の建物や木立ちとともに「成長する景」として、玄関口の景観の骨格を形作るデザインにした」

地元の人の反応は

検討会議では、示されたデザイン案に対してさまざまな意見が出された。

JR松山駅周辺の新玉地区まちづくり協議会 上岡征司 代表
「何年も前から駅を再開発するという話を聞いてきたので楽しみにしている。今までは線路で駅の東西が分断されてきたので、一体感のある駅づくりに期待している。避難所など防災の面でも機能する駅であってほしい」

新玉地区高齢者連合会 徳本睦英 代表
「鉄道が高架になることで、東西の行き来ができるのは大変便利になるのでうれしい。周辺にどのような施設ができるのか地域住民の関心は高い。市民に寄り添った形で駅の再開発に取り組んでほしい」

松山市障がい者団体連絡協議会 髙橋宏憲 代表
「今は駅周辺の歩道に自転車やバイクが置かれていることがあるので改善してほしい。障害者が1人で歩くことができ、車いすでも利用しやすいバリアフリーを意識したまちづくりに期待したい」

駅前にはバスタ計画も

JR松山駅周辺では、新たなバスターミナルの整備も検討されている。
松山市は、国土交通省が進めている事業で鉄道やバスなどがつながる集約型のターミナルを整備する「バスタプロジェクト」の活用を検討しているのだ。
ことし5月には第1回目の検討会が開かれ、具体的な整備方針の策定はこれからだが、プロジェクトが決まれば、四国では初となる。
事業化が決まれば、市が示した駅周辺のイメージ図も大きく変わる可能性がある。

奥野記者の感想

JR松山駅前の風景

松山駅周辺の再開発計画は30年以上前から検討が始まったが、思うように進んでいないのが現状だ。
「さら地が増えたな」というだけの印象を持つ人も多いと思う。
現時点の今後のスケジュールによると、駅舎の工事は今年度中に開始され、来年度中には高架化された線路への切り替えが完了する。
普段取材する中でも、再開発計画に対する県民の関心はとても高いと感じる。
松山市内では、JR松山駅のほか、松山市駅周辺でも新たなまちづくりが行われている。
多額の税金を投入する巨大プロジェクトは計画通りに進められるのか、バリアフリーをはじめ市民の利便性は高まるのか。
松山に住む一市民として注目していきたい。

この記事を書いた人

奥野 良

奥野 良

2019年入局。警察・裁判取材を経て現在、行政取材を担当。趣味はサッカー観戦で、国内だけでなくヨーロッパのスタジアムにも足を運ぶ。