2022年6月3日

工場のやっかいものがキャンプで役立つアレに!?

コロナ禍の今、密を避けて自然を楽しめるということもあってキャンプ人気が高まっています。キャンプで欠かせないのが料理や暖をとるための“たき火”ですが、火起こしに苦労したという方も多いのではないでしょうか。そんな時に役立つアイテムを、意外なものから生み出した会社が今治市にあります。舞台裏をのぞかせてもらいました。

(NHK松山放送局 岩崎温カメラマン)

日本一のタオルの産地

愛媛県今治市

取材に向かったのは瀬戸内海に面する愛媛県今治市。
年間8000トンのタオルを生産する日本一のタオルの産地です。
市内にはタオルを織る工場をはじめ、糸を加工する工場や染色工場など200近い関連工場があります。

こちらの染色会社では創業から70年にわたり、タオルをさまざまな色に染めたり、風合いを出す加工などを行っています。

工場内に舞うほこり

福岡友也さん

商品事業部の福岡友也さんです。
工場では、機械を動かしたり繊維を染めるために、水や電気など、大量のエネルギーがどうしても必要です。省エネを中心に、「環境にやさしい」取り組みを推進してきましたが、その一環で、福岡さんは新たに「持続可能な」商品の開発を目指していました。

やっかいものが新たなチャンスに

そんな時、目に入ったのが工場の片隅で山積みになった「綿ぼこり」でした。
この工場では、染めたタオルを乾燥させる機械を一日使用すると、240リットルの綿ぼこりが出ます。
ほこりが張り付いたフィルターの掃除は、省エネや防火対策のためにも欠かせません。

ただ廃棄されるだけだった綿ぼこりを、再利用できないか。
キャンプが趣味の福岡さんは、たき火に火をつけるために使う“着火剤”として活用することを思いつきました。

「火がつきやすいというのは前からわかってました。どういう燃え方するのかわからなかったので何度も見ました」

福岡さんは、ほこりの量によってどのぐらい燃焼時間が変わるかなど、実験を繰り返しました。

染色会社ならではの“カラフルさ”を売りに

実験で、実用性には確信を持てました。
しかし、ほこりをそのまま商品化するだけでは消費者の目には止まりません。
そこで、着目したのが染色工場ならではの「色」です。
「色なら自由自在に作ることができる」というこの工場にはタオルの色と同じ数の色のほこりがあります。
乾燥機のフィルターに付着したほこりは白、黄、赤、青、緑・・・本当にカラフルなんです!

SNSを意識した商品作り

カラフルなほこりをどう生かすか。
若手従業員と議論を重ねた結果、SNSを意識し、詰める容器を透明にして色が外から見えるようにしました。
どの色を組み合わせて詰めるかは従業員の感性に任せます。

女性従業員
「層になるようにこだわってる」

「おじさんが作るとおじさんの色になっちゃうんで」

完成したほこりの“着火剤”です。およそ5回分のほこりが詰められています(※一般的な使用量)。

アウトドアブームの後押しもあって、狙い通りSNSを中心に人気を呼び、全国から注文が相次いでいるといいます。

この着火剤を販売している松山市内のアウトドアショップに話を聞くと、その注目ぶりを知ることができました。

「注目されている方は多いです。ぱっと見、色合いだったりとか、現代の人の好みにあったテイストで目に入りやすいかなと思います」

ほこりを“誇り”にしたい

「元は“ほこり”ですが、ほこりに終わってはいけない。この地域のタオル産業、これらを含めて未来への光になればなと思います」

ほこりが“誇り”となって、地域を照らしたい―――
福岡さんの願いです。

取材を終えて

これまで廃棄するしかなかった「やっかいもの」を、ちょっと視点を変えるだけで、大きなチャンスにつなげていく・・・今回取材した取り組みには、地域の大切な産業を守り、さらに発展させていくためのヒントがありました。
今後も、愛媛の地場産業の発展を支える魅力的なアイデアを見つけて発信していきたいと思います。

この記事を書いた人

岩崎温

岩崎 温(いわさき あつし)

2020年から愛媛県で勤務。趣味はきれいな自然を見に出かけることとダイビング。愛南町や高知県の柏島などの海でサンゴや熱帯性のカラフルな魚を見ると心が躍ります。