新型コロナの感染が広がるなか、ひとりで仕事を続けながら子どもを育てる家庭にも大きな影響が出ています。
生活が困窮するシングルマザーの実情を取材しました。
(NHK松山放送局 橋本ひとみ)
生活に困るひとり親たち
松山市内で2か月に1回開かれる会合。
シングルマザーを支援する団体が呼びかけ、ひとり親たちがコロナ禍の近況を伝え合いました。
ここでは、食料の支援も受けられます。
配られるのは、個人や企業などから寄せられた米やレトルト食品など。
年明けからの感染の急拡大で、学校や保育園が突然の休みになるなか、ひとり親の生活費の負担が増えているといいます。
参加者
「休校で昼ごはんが倍はいるようになりました。家にいる時間も長いので、食費がかさみます」
参加者
「今回、初めて参加しました。こんなにたくさんの物をいただけて、すごくありがたいです。食べ物はどうしても削れないので」
支援求める人は増える一方
支援団体の代表をつとめる野中玲子さん。
自身もひとりで2人の子どもを育ててきました。
同じようなひとり親家庭を支えたいと、新型コロナの感染が広がり始めた2020年から、食料支援を続けています。
現在、食料支援を行っているのは県内の52世帯。
利用者は増える一方で、支援を始めた当初からは4倍近くになっています。
支援は食料にとどまらず、感染対策に欠かせないマスクや消毒液を配ることもあるといいます。
「コロナで家にいる時間が長いと、光熱費や水道代など生活にかかるお金がどうしても増えていきます。仕事を休んで収入は減るのに、出費は増えてしまうという、『負のループ』に陥ってしまうんです」
切実な声が
コロナの影響が長引くなか、野中さんのもとにはひとり親家庭からの訴えが相次いで寄せられています。
食料支援をしている家庭へのアンケートには。
「コロナの影響で養育費が減り、食費を大幅に削減しないといけなくなった」
「シフトが減り収入が減ったが、家にいることが多く食費や光熱費などの出費が増えた」
「在宅時間も多く、物価も上がり、精神的にも金銭的にもしんどい」
特に幼い子どもがいるひとり親家庭では、突然の休校や休園により子どもひとりで留守番させるわけにもいかず、すぐに仕事に影響が出てしまうといいます。
また、元の配偶者からの「養育費」にもコロナの影響が。
元の配偶者の側も生活が厳しくなり、月々の養育費が支払われなくなるというケースも出ているといいます。
こうした金銭的な困窮から、精神面や体調面にまで影響が出ているという声もあがっています。
「コロナ以前から1人親家庭、特に母子家庭の経済的なしんどさっていうのは根本にずっとありましたが、コロナになってそれがより顕著に現れることに。今まではスレスレの低空飛行だったものが、コロナになってからはおなかをつきながらなんとか日々を生きているというのが今の状態だと思います」
少しでも精神的な余裕を
母親たちが追い詰められないよう少しでも精神的な余裕をもってもらいたい。
野中さんはさらに弁当を作って渡す活動も始めました。
「生活がしんどい状態のお母さんたちが、少しでも楽になってくれればいいなという思いでやっています。子どもたちも、少し余裕のできたお母さんの方がうれしいかなと思って」
利用しているのは事前に登録している13世帯で、週に3回、曜日を決めて渡しています。
利用者
「とても助かっています。食費の面だけでなく、心の余裕としても。仕事をしていると、帰ってからやることが多いので、ご飯を作る時間が減るだけで子どもとの時間が増えますし、本当に助かります」
個人的な支援には限界が
新型コロナの感染拡大から2年。
野中さん自身、春には娘が大学に進学し、これまで受給してきた「児童扶養手当」の対象とならなくなることから、生活は決して楽ではないといいます。
野中さんは、「個人単位でできる支援には限界がある」として、行政の支援のあり方を変えてほしいと訴えます。
「いまの支援は結局、目先の対症療法でしかないんです。ちょっと傷ついたところに“ばんそうこう”を貼っている状態でしかないわけです。そこを変えられるのは、やっぱり国や行政の対応になるので、根本のところから変えていく必要があると思います」
コロナの影響は多岐に
取材を進めると、コロナの影響は子どもたちの学習面にも影響を与える懸念もあることがわかりました。
コロナ禍でリモート学習を進める学校が増えるなか、そもそもWi-Fiなどインターネット環境がないという家庭もあるといいます。
また、支援団体の野中さんによりますと、子どもたちに配られるタブレットを家に持ち帰ることができない家庭もあるそうなんです。
仮に自宅で故障したら、保護者が弁償しなければならない場合もあり、その費用が大きな負担になるからです。
野中さんはこれまでに、ひとり親から寄せられる声を集めて、市に財政面での支援の要請を行うなどしてきました。
野中さんは「どんな問題が起きているのか、まずは広く知ってもらうことが大事だ」と話していて、今後も支援のあり方を考えていきたいとしています。
民間の支援だけではなく、行政をはじめ社会全体で、ひとり親家庭への理解と協力を一層深めていくことが求められると思います。