兼題:柚子湯(ゆずゆ)


2021年12月11日(土)放送

兼題:柚子湯

▼兼題の季語「柚子湯」の解説
冬至には、かぼちゃを食べたり、柚子(ゆず)を浮かべた湯に入る慣習がある。江戸時代の銭湯ではすでに「柚子湯」が行われていたそうで、万病を防ぐともいわれている。
傍題には「柚子風呂・冬至湯・冬至風呂」などがある。

 

 

▼選句ポイント
柚子湯の豊かさ・心地よさ

 

▼ギュッと!特選

あふるるを許す柚子湯の日なりけり  おきいふ

[解説]
家庭のお風呂なのでしょう。いつもならば、湯をあふれさせるなんてもっての外!ですが今日は特別な「柚子湯の日」、薬効を期待して入る一年に一度の冬至の湯だ。たっぷりと湯を張り、柚子を浮かべ、さあ!と湯に体を沈めると、湯があふれる。もったいないなんて言わないよ、今日は「柚子湯の日」なんだもの。湯と一緒に溢れる柚子の黄も見えてくるよう。
あたたかい湯の感触、柚子の匂い、いかにも柚子湯らしい豊かな一句。

 

 

▼放送でご紹介した「秀作」

潰す派と潰さない派の柚子湯論    堀アンナ

[解説]
こう展開するとちゃんと「柚子湯」が主役になってくる。ちなみに、私は潰さない派。

 

おもさうに子は湯のゆずをしづめては    高尾里甫

[解説]
小さな子どもと一緒に入っている柚子湯かと読んだ。浮力のある柚子を「おもさうに」何度も沈めている様子が描かれている。「湯のゆず」という表現で、季語「柚子湯」を表現した点に工夫がある。

 

ぶよぶよの柚子をつっつく柚子湯かな    猫雪すあま

[解説]
柚子をつつく指のアップ、ぶよぶよの感触など丁寧に描写できている。

 

しくじりしけふのおはりの柚子湯かな    ピアニシモ

[解説]
上五中七の情報がゆっくりと下五「柚子湯かな」の詠嘆へ収斂(しゅうれん)していく。平仮名表記も効果的。

 

 

▼放送でご紹介した「佳作」

一年(ひととせ)の思いが浮かぶ柚子湯かな  なおひとさん

[解説]
冬至という季節の栞(しおり)のような一区切りが、上五中七の思いとなるのでしょう。

 

ライオンの湯口柚子のタップダンス      織部なつめ

[解説]
破調の一句、柚子の擬人化に嫌味がなくて映像が書けている。

 

「サクラサク」ほつこりふはり柚子湯の香   紫菜子

[解説]
「ほっこり」は「サクラサク」=合格の知らせであること。さらに「柚子湯の香」という嗅覚を「ふはり」と表現、具体的な工夫が見える。

 

ふるさとの柚子湯や吾子(あこ)の笑顔満つ  雪たらば

[解説]
「ふるさと」「吾子(あこ)」などの映像が入ってくる、ここが「佳作」のレベルとなる。

 

仕舞(しまい)風呂柚子もほとびぬ午前二時  岡井稀音

[解説]
柚子湯の最後は、「ほとびる=ふやける」状態になってしまう。「午前二時」にリアリティがある。

 

柚子湯より馴染(なじ)みの客の弾む声    岡田まさこ

[解説]
中七「馴染みの客の~」によって、お風呂やさんの視点で書かれていることが分かる。「~より」の使い方もよい。

 

 

▼「秀作への道」

兼題「柚子湯」から「カピバラ」を連想した句がたくさん届きました。冬至のニュースなどで柚子湯に入ったカピバラをみることがあるので、そこからの類想でしょう。

カピバラも目を細めたる柚子湯かな         山村楓

カピバラの眼を細めたる柚子湯かな         そまり

カピバラの閉じさうな目の柚子湯かな       かつたろー。

カピバラも鼻の下まで柚子湯浴む       一寸雄町

カピバラの鼻穴ひろく柚子湯風呂       魚返みりん

カピバラの鼻息荒いゆず湯かな              城内幸江  

[解説]
「目」「鼻」と部位を描写しようとする意図はよいのですが、結局のところ似たよう句になってしまうのがツライところ。

 

カピバラもゆつくり浸(つ)かる柚子湯かな  玉井令子

カピバラも柚子も浮きをる柚子湯かな     井納蒼求

[解説]
カピバラが湯につかっている光景、柚子が浮いている様子を描こうとした二句ですが、工夫次第で、二句分の光景を一気に描くこともできる。
こちらは「秀句」に推した一句。

 

カピバラの潜る柚湯のぽかんぽかん      綾竹あんどれ

[解説]
季語「柚湯」を中七のこの位置に置くことで、前述二句分の光景を描いている。

 

>>夏井いつきのアドバイス
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2021年12月11日 (土) 07時30分


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