兼題:鱧(はも)


2021年7月10日(土)放送

兼題:鱧(はも)

▼選句ポイント

経済効率のよい取り合わせ

 

▼ギュッと!特選

鱧の白まずは両家の紹介を    西原みどり

[解説]
「鱧の白」と打ち出したあとの展開がうまい一句。
「まずは両家の紹介を」という台詞(せりふ)のようなフレーズによって、これが結納あるいは婚儀の席であることが分かる。ご両家の親族が並ぶ宴(うたげ)、祝いの席のお膳にはちょっと贅沢な「鱧」の料理、鱧の白には梅肉の赤も添えられているに違いない。
おめでたい席にふさわしい色合いも見えてくる、すがすがしい作品。

 

 

▼放送でご紹介した「秀作」

こほり噛(か)み砕きて鱧の目は丸し   アロイジオ

[解説]
市場の鱧でしょうか、口をよく見て、目をよく見て、描写できている。

 

ぎやりぎやりと鱧の骨切る刃紋(はもん)は銀   坐花酔月

[解説]
オノマトペに工夫あり。「刃紋は銀」とアップの映像にもっていくのも丁寧な観察。

 

鋼(はがね)めく鱧は花へと湯引きされ   木染湧水   

[解説]

「鋼」と比喩しておいて「花へ」と表現、これが観察のお手本。

 

同郷と知って一口鱧フライ                桃猫

割烹のカウンターか、小さな場面をありありと切り取っている。

 

水鱧や父に兄弟十一人                    岩宮鯉城

「水鱧」は、出始めの頃の小ぶりの鱧。取り合わせが玄人。

 

▼放送でご紹介した「佳作」

父つくる鱧フライ厚さに熱っ      青梅爽

[解説]
すごく上手な句というわけではないけど、美味しそう! だから佳作。

ハモの汁高雅(こうが)ふくいく沁(し)み渡る    四季彩

[解説]
「ハモの汁」と具体的に書き、「高雅ふくいく」であると表現しているが、下五は不要。
だから佳作どまり。

 

シャリシャリと鱧の骨引く出刃を研ぎ    恭加

[解説]
骨切りの音としての「シャリシャリ」というオノマトペはありがちだが「鱧の骨」を引くための「出刃」を研ぐ音であるという展開に工夫あり。

 

 

▼夏井いつきの「きょうのユニー句」
取り合わせの秀句をご紹介します。

「取り合わせ」とは、「季語」+「季語とは関係のないフレーズ」を合体させる技法のこと。

<取り合わせがうまい句>

鱧ずしの包みを開く指定席     夏草はむ(秀作)

出張の傘をたたんで鱧落とし    深山むらさき(秀作)

転勤の内示そろそろ鱧の皮     石塚彩楓(秀作)

[解説]

「指定席」、「出張の傘」、「転勤の内示」などの言葉によってどんな場面でどういう人物が鱧を食べようとしているかが分かる。

「指定席」、列車か新幹線か、旅の「鱧ずし」でしょうか。

「出張の傘」、京都あたりへの出張か、梅雨の頃の鱧が一番美味しいと言われている。

「転勤の内示」、この地を去る日が近づいているのか。


革命を企ててゐる鱧は咲く     大黒とむとむ(秀作)

[解説]
「鱧」とはさらに離れた言葉「革命」との取り合わせ。本来の意味での「革命」をたくらんでいるか、あるいは新しいアイデアや技術や困難を打破するために自分を励ましているのか、「革命」の一語を比喩的象徴として読むこともできる。「鱧は咲く」という映像化もすごいですね。

 

>>夏井いつきのアドバイス
>>秀作・佳作

投稿時間:2021年07月10日 (土) 07時30分


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