兼題:渦潮


2021年5月15日(土)放送

兼題:渦潮

 

(動画の掲載は、放送日より2か月間です。)

 

▼選句ポイント

現場で体感!

現場に行って季語を体感、よく観察することが俳句上達のコツ。俳句のタネがたくさん見つかり、季語の魅力が生きる俳句ができる。今回は、現場にいるかのような臨場感が伝わる俳句を選んだ。

 

 

▼ギュッと!特選

渦潮と呼ぶに足る渦探しけり        斉藤立夏

[解説]
観潮船に乗っていると「あっ、渦!」と見つけたものの、これは「渦潮」と呼ぶには小さすぎるかな、なんて思って、さらに見回して大きな渦を探す。
観潮船に乗ったことがある人は、同じような経験をしたのではないか。そんな期待感をうまく切り取り、やがて「渦潮と呼ぶに足る」大きな渦を見つけて歓声を上げるに違いないことも想像させる。その先の映像まで見せるところがニクイ作品だ。

 

 

▼入選

渦潮の縁を攻め行(ゆ)く舵捌(かじさば)き      ゆすらご

[解説]
中七の表現がうまい。特に「渦潮の縁」という書き方にリアリティがあり、「攻め行く」という複合動詞にも勢いがある。このような場面を描こうとした句は沢山あったが、この臨場感がまさに観潮船だ。

 

面舵(おもかじ)に華やぐ悲鳴観潮船       あいむ李景

[解説]
「面舵(おもかじ)」とは「船舶の航行で、進行方向の右に舵を転ずる事」。「面舵に」で右に舵(かじ)を切っている状況を述べた後の中七「華やぐ悲鳴」がうまい。「悲鳴」は意味としてはマイナスの語感だが「華やぐ」によって「観潮船」という季語が生きてくる。

観潮船手すりのペンキ剥がれおり          阿波オードリー

[解説]
よく観察している。特に、中七「手すり」と具体的に述べることで読み手はその感触をリアルに受け止める。「ペンキ剥がれおり」の手触りが、ありありとこの手に伝わる。

渦潮は乙姫の息龍(りゅう)の息          れんげ畑

[解説]
「渦潮」に竜宮城を取り合わせたり、「龍」を比喩として使う発想の句も沢山あった。が、これは「乙姫」と「龍」を二つも入れつつバランスがとれている。「乙姫の息」「龍の息」と対句表現で並べることで、結果的に季語「渦潮」が主役となっている。そのテクニックを誉めたい作品。

渦潮に三半規管覚醒す        さと

[解説]
「渦潮」で酔うという句もあったが、「三半規管」が覚醒するという書き方が逆に面白い。

▼夏井いつきの「きょうのユニー句」
観察力がユニーク!>

渦潮の潮の行き場の無くなりぬ      けーい〇(入選)
渦潮となれず解(ほど)ける泡の群  妹のりこ(入選)
渦潮はきだす渦潮だつた渦         世良日守(入選)

[解説]
三句とも渦潮の細部の動きを非常によく観察している。渦潮がどんどん巻いていって、潮の行き場がなくなってしまう。渦になり損ねた泡、渦潮だった潮が渦をなくして吐き出されていく、どの句もまさに映像。「渦潮」の様子だけを描写するタイプの句を「一物仕立て」というが、これらは観察眼を見事に発揮した優秀な句。

 

▼放送でご紹介した俳句

特大の渦潮いつか見てみたい        ひとひら
うずしおの白いたつまき見てみたい  ヒメクグ

[解説]
「いつか見てみたい」で半分近く音数をとってしまう。しかも、見ていないから臨場感がない。同じことを書く人がたくさんいるので凡人。

渦見船渦へ渦へと傾けり           蒸し馬(佳作)

[解説]
「渦見船」という書き方が季語としてどうかと気にはなるが、中七下五「渦へ渦へと傾けり」の描写には臨場感がある。

渦潮や観光船に身を託し      高橋道代(佳作)

[解説]
「渦潮」を「や」で詠嘆し、カット切り替えて「観光船」の甲板に行くのはよいが、下五「身を託し」が説明になっている。ここが工夫のしどころだ。

母の手をきゅっと握った観潮船      KANA(佳作)

[解説]
「身を託し」と比較すると「母の手をきゅっと握った」で映像が描けている。

渦潮や妻の不在は謎のまま        アリマノミコ(佳作)

[解説]
まるでサスペンス劇場。俳句作ってないで、失踪届?を出しなさい。

渦潮や竜宮迄を片道で           ウチノ太郎(佳作)

[解説]
「渦潮」と「竜宮」のネタは沢山あった。後半「~迄を片道で」という展開ではまだオリジナリティが不足している。

 

>>夏井いつきのアドバイス
>>秀作・佳作

 

投稿時間:2021年05月15日 (土) 07時30分


ページの一番上へ▲