兼題:鶯(うぐいす)


2021年3月13日(土)放送

兼題:鶯(うぐいす)

▼選句ポイント

・鶯(うぐいす)に遭遇した臨場感

 

▼ギュッと!特選

鶯(うぐいす)や任地の山の地図を買ふ  深山紫

[解説]
「鶯や」と詠嘆した後で「任地」という言葉が出てくるので、新しい任地にて鶯を聞いたとも読めるのですが、私は、まだ現在の任地にいて「鶯」の声を聞いたと読みました。

ひょっとすると辞令が出た時は、あんな山ばっかりの田舎か……と、ちょっとガッカリしたかもしれません。が、山歩きが趣味ということで、赴任すれば新しい山を楽しめるのだなという気づきによって「任地」への思いが膨らんできたのです。これら一連の心の動きを、「任地の山の地図」を購入するという行為によって伝えている所が、この句の味わい。最後の「買ふ」という動詞に、新任地への希望や興味が読み取れます。「鶯」の声には、そんな力があるように思います。

 

 

▼入選

鶯(うぐいす)や仁王の左耳に罅(ひび) あいむ李景

[解説]
上五「鶯や」という詠嘆からカットが切り替わり「仁王」そして「耳」、さらに「罅」とクローズアップの映像が想像できます。木像の仁王の耳にも鶯の声が届いているのではないか、と作者は感じたのでしょう。技術的に巧みな作品です。

 

鶯(うぐいす)の声やハンドル切り返す  伊予吟会 宵嵐

[解説]
上五の季語「鶯」と中七下五によって作者の状況や現場がありありと浮かびます。山の中で何度も何度も「ハンドル」を切り返す運転している人の奮闘を「鶯」は応援しているのか笑っているのか。

 

なほも聞くうぐひす軽き水筒と    藤田ゆきまち

[解説]
「なほも聞く」で何かに聞き入っていることが分かり、中七でそれが「うぐひす」だと合点します。「なほも聞くうぐひす」で意味が切れます。何度も何度も聞いている、という状態からの展開が巧い。ずっと山歩きをして、水筒はすっかり軽くなっているのです。もう下山しないといけない時間なのにそれでも聞き惚れている、それがまさに鶯という鳥の魅力でもあります。

 

 

▼夏井いつきの「はじめの一歩!」

「鶯(うぐいす)」という季語の面白さ

[解説]
「鶯」ほど季節をまたいで愛でられる鳥はありません。季語のバリエーションが面白い!

「笹鳴(ささなき)」…冬の地鳴き。「チャッチャッ」
「初音(はつね)」…2月頃「ホーホケキョ」
※本来は「鶯の初音」が季語だったが、最近の歳時記には「初音」を傍題として載せるものがでてきた。
「鶯の谷渡り(うぐいすのたにわたり)」…3月頃から警戒音「ホーホケキョケキョケキョ」と何度も繰り返す。
「老鶯(ろうおう)」…夏、山地で繁殖するものは山に帰る。
「鶯音を入る(うぐいすねをいる)」…晩夏・繁殖期を過ぎて地鳴きに戻る。

「鶯」の傍題(鶯の初音・初音・鶯の谷渡り・春告鳥・経読鳥・黄粉鳥・歌詠鳥・匂鳥など)が面白い。

「春告鳥(はるつげどり)」…春の訪れを告げるから

「経読鳥(きょうよみどり)」…法華経を読んでいる

「黄粉鳥(きなこどり)」…体が黄緑色なので

 

 

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投稿時間:2021年03月13日 (土) 07時55分


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